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第四話『ちいももの頭の桃と葉っぱ』

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📅 公開日: 2026/10/31 📚 シリーズ: ちいもも物語 📝 8,375文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ちいももの頭についている、小さな桃と緑の葉っぱ。 ある日、ケイモモは、 それが体の一部なのか、飾りなのか、不思議に思います。 さらに、ちいももの気持ちに合わせて、 葉っぱが動くことにも気づきます。 ふたりは、その秘密を知るために、 モモノウチ博士の研究所を訪ねることに。 ちいももの頭の桃と葉っぱに隠された、 可愛らしい不思議を描く、優しく温かなお話です。

本文

桃の里に、柔らかな朝の光が差し込んでいた。

窓の外では、桃の花が風に揺れ、小さな花びらがひらひらと舞っている。

僕は、おうちの居間にある大きな椅子に腰かけ、

ちいももを膝の上に抱っこしていた。

「ケイモモ、今日はいいお天気だモモね」

「そうだね。お散歩したくなるようなお天気だね」

「うん。でも、ちいもも、もうちょっとこうしていたいモモ」

「ふふ、いいよ」

ちいももは嬉しそうに微笑み、僕の胸にふわふわの体を寄せた。

首元の小さな鈴が、ちりん、と鳴った。

僕は、ちいもものまんまるの頭を、ゆっくりとなでていた。

ふわふわした桃色の毛並み。まんまるの白いお顔。大きな瞳と、ほんのり赤い頬。

そして、頭の上には、小さな桃と緑の葉っぱがついている。

僕は、その桃を眺めながら、ふと疑問に思った。

「ねえ、ちいもも」

「なあにモモ?」

「ちいももの頭にある桃って、どうなっているの?」

「……桃モモ?」ちいももは、不思議そうに僕を見上げた。

「うん。その桃と葉っぱって、ちいももの体の一部なのかな。

 それとも、飾りなのかなって」

「……ああ!」

ちいももは、何か分かったように小さくうなずいた。

「これは、ちいももの体の一部だモモ」

「そうなんだ」

「うん。ずっと、ここにあるモモ」

ちいももは、小さな手を頭の上へ伸ばした。

けれど、短い腕では、桃にうまく届かない。

「よいしょ……よいしょ……モモ……」

一生懸命に手を伸ばしている姿が可愛らしくて、僕は思わず笑ってしまった。

「ふふ、ちいもも、届かないの?」

「……ちょっとだけ、遠いモモ」

ちいももは、少し困ったように笑った。

「でも、ちゃんとちいももの桃だモモ」

「そうか。じゃあ、取り外したりはできないんだね」

「うん。ちいももの頭についてるモモ」

僕は、改めて小さな桃を見つめた。

淡い桃色をした、丸くて可愛らしい桃。

その横から、二枚の緑の葉っぱが伸びている。

「……不思議だね」

「不思議モモ?」

「うん。ちいももの頭から、本当に桃と葉っぱが生えているんだね」

すると、ちいももは少し考え込んだ。

「……生えてるモモ?」

「そうだね。そんな感じかな」

「……ちいもも、桃の木みたいだモモ?」

僕は思わず笑った。

「ははは。小さな桃の木みたいかもしれないね」

「えへへ……ちいもも、桃の木になっちゃったモモ」

ちいももは嬉しそうに笑った。

そのときだった。ぴょこん。頭の緑の葉っぱが、小さく動いた。

「……あれ?」

僕は思わず、ちいももの頭を見つめた。

「ケイモモ、どうしたモモ?」

「今、葉っぱが動いたような……」

「……葉っぱモモ?」

ちいももは首をかしげた。すると、頭の葉っぱも一緒に傾いた。

けれど、そのあと、葉っぱだけがゆっくりと元の向きに戻った。

「……やっぱり動いてる」

僕がそう言うと、ちいももは目をまんまるにした。

「ええっ! ちいももの葉っぱ、動くモモ!?」

その瞬間、葉っぱがぴんっと立った。

「……あっ。また動いた!」

「どこモモ!? ちいもも、見えないモモ!」

ちいももは慌てて自分の頭を見ようとした。

上を向いたり、目をぎゅっと寄せたりしている。

「ケイモモ、ちいももの葉っぱ、どうなってるモモ?」

「ふふ、ちょっと待ってね。鏡を持ってこようか」

「うん! 見たいモモ!」

僕はちいももを抱っこしたまま、寝室の鏡の前へ向かった。

◆

鏡の前に立つと、ちいももは自分の姿をじっと見つめた。

「……ちいももだモモ」

「そうだね」

「頭に桃があるモモ」

「うん」

「葉っぱもあるモモ」

「そうだね」

ちいももは、しばらく鏡を見つめていた。

「……動かないモモね」

「今は動いてないね」

僕がそう言うと、ちいももは少し残念そうにした。

「……ちいもも、動くところ見たかったモモ」

すると、葉っぱの先が、しゅん、と下がった。

「あっ、ちいもも。今、葉っぱが下がったよ」

「えっ? ほんとモモ?」

ちいももは鏡に顔を近づけた。

「……あっ!」

今度は、葉っぱがぴょこんと立った。

「動いたモモ! ケイモモ、動いたモモ!」

「うん。見えたね!」

ちいももは嬉しそうに笑った。

すると、葉っぱが小さく左右に揺れた。

「……おもしろいモモ!」

ちいももは鏡の中の自分に向かって、小さく手を振った。

「こんにちはだモモ!」

鏡の中のちいももも、同じように手を振った。

頭の葉っぱが、またぴょこんと揺れた。

僕は、その様子を見ながら、あることに気づいた。

「ねえ、ちいもも」

「なあにモモ?」

「もしかしたら、その葉っぱ、

 ちいももの気持ちに合わせて動いているのかもしれないね」

「……気持ちモモ?」

「うん。嬉しいときには元気に立って、がっかりしたときには下がるみたい」

「……そうなのモモ?」

ちいももは不思議そうに鏡を見つめた。

「ちいもも、知らなかったモモ……」

僕は、ちいももの頭を優しくなでた。

「せっかくだから、詳しい人に聞いてみようか」

「詳しい人モモ?」

「うん。

 桃の里には、不思議な生き物のことを研究している人もいるんじゃないかな」

すると、ちいももは何かを思い出したように顔を上げた。

「あっ! いるモモ!」

「本当?」

「うん! モモノウチ博士だモモ!」

「モモノウチ博士?」

「そうだモモ。桃の里の近くに、生き物のことを研究している博士がいるモモ」

「へえ、そうなんだ」

「ちいもも、会ったことはないけど、お名前は知ってるモモ」

ちいももは、少し期待するように僕を見上げた。

「ケイモモ、一緒に行ってみたいモモ」

「うん。行ってみようか」

「やったモモ!」

頭の葉っぱが、ぴょこん、ぴょこんと揺れた。

僕は思わず微笑んだ。

「ふふ。今も葉っぱが嬉しそうだよ」

「えへへ……ちいももも嬉しいモモ!」

◆

朝ごはんを食べ終えた僕たちは、モモノウチ博士の研究所へ向かうことにした。

桃の里の小道を、ふたりで手をつないで歩いていく。

道の両側には桃の木が並び、薄桃色の花びらが優しい風に舞っていた。

「ケイモモ、博士はどんな人だと思うモモ?」

「うーん。生き物のことを何でも知っている、物知りな人かな」

「……何でも知ってるモモ?」

「きっと、いろいろ知ってると思うよ」

「じゃあ、ちいももの頭の桃も知ってるモモね」

「そうだといいね」

ちいももは、ぽてぽてと歩きながら、嬉しそうにうなずいた。

しばらく歩くと、小さな丘の上に、可愛らしい建物が見えてきた。

白い壁に、若草色の屋根。

大きな窓がいくつもあり、建物の周りには色とりどりの花が咲いている。

入口の横には木の看板が立っていた。

『モモノウチ生き物研究所』

「ここだモモ!」

ちいももが指さした。

「素敵な研究所だね」

「うん。お花もいっぱいだモモ」

僕たちは玄関へ近づいた。

扉の横には、桃の形をした呼び鈴がついている。

「押してみようか」

「うん!」

僕がそっと押すと、ぽろん、ぽろん、と可愛らしい音が鳴った。

しばらくすると、扉が開いた。

「はいはい。どなたですかな?」

現れたのは、白いひげを生やした、優しそうなおじいさんだった。

丸い眼鏡をかけ、淡い緑色の上着を着ている。

胸元には、小さな葉っぱの形をした飾りがついていた。

「こんにちは。突然お邪魔してすみません」

「いえいえ、構いませんよ。おや……?」

おじいさんは、ちいももの姿を見て、目を細めた。

「これはまた、なんとも可愛らしいお客さんですな」

ちいももは、小さく頭を下げた。

「こんにちはだモモ」

「こんにちは。私はモモノウチと申します。

 この研究所で、生き物の研究をしております」

「僕はケイモモです。こちらは、ちいももです」

「ちいももだモモ!」

博士は、にこにこと笑った。

「ほほう。ちいももさんですか。可愛らしいお名前ですな」

「えへへ……ケイモモがつけてくれた名前だモモ」

「そうでしたか。それは素敵ですな」

博士は、ちいももの頭に目を向けた。

「おや、頭に立派な桃と葉っぱがありますねえ」

「そうなんです。実は、そのことでお聞きしたくて……」

僕が説明すると、博士は嬉しそうにうなずいた。

「なるほど、なるほど。では、どうぞ中へ。ゆっくりお話を伺いましょう」

◆

研究所の中には、たくさんの本や、植物の標本、

不思議な形をした道具が並んでいた。

窓辺には小さな鉢植えが置かれ、

透明な容器の中では、青く光る小さな花が揺れている。

「わあ……!」

ちいももは目を輝かせた。

「ケイモモ、きれいなお花があるモモ!」

「本当だね」

博士は微笑んだ。

「それは、月明かりを浴びると青く光る花なのですよ」

「……お月さまのお花モモ?」

「ふふ、そう呼んでもよいかもしれませんね」

博士は、僕たちを小さなテーブルへ案内してくれた。

テーブルの上には、桃の形をしたお菓子と、温かいお茶が用意された。

「さて、ちいももさん。今日は頭の桃と葉っぱについて知りたいのですね?」

「そうだモモ」

ちいももは、こくんとうなずいた。

「ケイモモが、ちいももの頭の桃は体の一部なのかなって聞いたモモ」

「なるほど」

「ちいもも、体の一部だと思ってるモモ。

 でも、どうしてあるのかは、よくわからないモモ」

博士は、穏やかにうなずいた。

「それでは、少し調べてみましょうか」

「……調べるモモ?」

「はい。痛いことは何もしませんから、安心してくださいね」

ちいももは僕を見上げた。

「ケイモモも一緒モモ?」

「もちろん。ずっとそばにいるよ」

「……えへへ。じゃあ、大丈夫だモモ」

博士は棚から、小さな虫眼鏡のような道具を持ってきた。

持ち手は木でできていて、丸いレンズの周りには金色の模様が描かれている。

「これは、生き物の体の様子を優しく調べる道具です。

 光を当てるだけですから、くすぐったくもありませんよ」

「わかったモモ」

ちいももは、僕の膝の上にちょこんと座った。

博士が道具をかざすと、柔らかな金色の光が、ちいももの頭を包んだ。

「……きらきらだモモ」

光の中で、小さな桃と緑の葉っぱが優しく輝いた。

博士はレンズをのぞき込み、ゆっくりとうなずいた。

「ふむ……なるほど。やはり、そうですな」

「何かわかりましたか?」

僕が尋ねると、博士は微笑んだ。

「ええ。ちいももさんの頭の桃と葉っぱは、間違いなく体の一部です」

「……そうなんですね」

「はい。飾りを載せているのではありません。

 ちいももさんの体と、自然につながっているのです」

ちいももは、目をまんまるにした。

「……ちいももの桃、ちゃんとちいももの一部なんだモモ」

「そのとおりですよ」

「……えへへ」

ちいももは、嬉しそうに笑った。

「じゃあ、先生……じゃなくて、博士」

「はい、何でしょう?」

「この桃、食べられるモモ?」

博士は、少し驚いたあと、優しく笑った。

「ほっほっほ。それは食べ物ではありませんよ」

「……そうなんだモモ」

「はい。見た目は桃によく似ていますが、

 ちいももさんの大切な体の一部ですからね」

「……食べちゃだめだモモね」

「もちろんです」

ちいももは真剣な顔でうなずいた。

「ちいもも、頭の桃、大事にするモモ」

僕も微笑んだ。

「そうだね。大切にしようね」

◆

「ところで、博士。もうひとつ、不思議なことがあるんです」

「ほう、何でしょう?」

「ちいももの頭の葉っぱが、動くんです」

博士は興味深そうに眼鏡を直した。

「ほほう。どのように動くのですかな?」

「嬉しいときには立ち上がったり、

 少し残念そうにしたときには下がったりするみたいなんです」

「なるほど……それは興味深いですな」

博士は、ちいももの頭を優しく見つめた。

「ちいももさん、少しだけ試してみてもよろしいですか?」

「うん、いいモモ」

「ありがとうございます。では、何か嬉しいことを考えてみてください」

「……嬉しいことモモ?」

ちいももは、少し考え込んだ。それから、すぐに僕の顔を見上げた。

「ケイモモと一緒にいることだモモ!」

ぴょこんっ。頭の葉っぱが、元気よく立った。

「おお!」

博士は、嬉しそうに声を上げた。

「これは見事ですな!」

僕も思わず笑った。

「本当に動いたね、ちいもも」

「えへへ……嬉しいモモ!」

葉っぱが、もう一度ぴょこんと揺れた。

博士は小さな手帳に、何かを書き込んだ。

「では、今度は、ちょっと残念だったことを思い出してみてください」

「……残念だったことモモ?」

ちいももは首をかしげた。しばらく考えてから、小さな声で言った。

「……この前、おやつの桃のケーキを食べ終わっちゃったモモ」

「ほう」

「もっと食べたかったけど、もうなかったモモ……」

しゅん。頭の葉っぱが、少し下がった。

「……おやおや」

博士は微笑んだ。

「本当に、気持ちに合わせて動いていますね」

僕は、ちいももの頭を優しくなでた。

「ふふ、そんなに残念だったんだね」

「……うん。でも、ケイモモと一緒に食べたから、おいしかったモモ」

すると、葉っぱがまた、ゆっくりと上を向いた。

博士は、感心したようにうなずいた。

「なるほど。

 これは、ちいももさんの感情と、葉っぱの動きがつながっているのでしょう」

「感情……モモ?」

「嬉しい、悲しい、楽しい、寂しい。そういう心の動きのことですよ」

「……心の動きモモ」

「ええ。ちいももさんの葉っぱは、その気持ちを自然に表しているようです」

ちいももは、少し考えてから尋ねた。

「博士、ちいももが眠くなったら、葉っぱも眠くなるモモ?」

「ふふ。それは面白い質問ですね。

 眠たくなれば、葉っぱもゆっくり垂れ下がるかもしれませんよ」

「……そうなんだモモ」

ちいももは、自分の頭を見ようとして、また目を上に向けた。

「……やっぱり、見えないモモ」

博士と僕は、顔を見合わせて笑った。

◆

博士は道具を棚に戻すと、僕たちの向かいに腰を下ろした。

「ちいももさん。ひとつ、お伝えしておきたいことがあります」

「なあにモモ?」

「頭の桃と葉っぱは、ちいももさんの大切な体の一部です。

 ですから、無理に引っ張ったり、取り外そうとしたりしてはいけませんよ」

「うん。わかったモモ」

「ただ、普通に頭をなでてもらうくらいなら、心配はいりません」

「……ほんとモモ?」

「ええ。優しく触れてもらうのは、大丈夫ですよ」

ちいももは、ぱあっと顔を明るくした。

「やったモモ!」

そして、僕のほうを向いた。

「ケイモモ!」

「ん?」

「ちいもも、これからも頭、なでてほしいモモ!」

「もちろんだよ」

僕は、ちいももの頭をそっとなでた。

「……えへへ」

ちいももは、幸せそうに目を細めた。

すると、頭の葉っぱが、ぴょこんと立った。

博士は、その様子を見て優しく笑った。

「ほっほっほ。葉っぱも、なでてもらえて嬉しそうですな」

「本当ですね」

僕は、ちいももの小さな体を抱きしめた。

「博士、ありがとうございました。

 ずっと不思議に思っていたことが、よくわかりました」

「いえいえ。

 私も、ちいももさんのような不思議で愛らしい生き物に出会えて、

 嬉しかったですよ」

ちいももも、小さく頭を下げた。

「博士、ありがとうだモモ!」

「どういたしまして。またいつでも遊びにいらしてくださいね」

「うん! また来たいモモ!」

博士は、にこにこと笑った。

「そのときは、また新しい発見があるかもしれませんな」

◆

研究所をあとにした僕たちは、桃の里の小道をゆっくり歩いていた。

柔らかな風が吹き、桃の花びらがふたりの周りを舞っている。

「ケイモモ」

「ん?」

「今日、いろんなことがわかったモモね」

「そうだね」

「ちいももの頭の桃は、食べられないモモ」

「ふふ、そうだね」

「葉っぱは、嬉しいとぴょこんってなるモモ」

「うん」

「悲しいと、しゅんってなるモモ」

「そうだね」

ちいももは、ぽてぽてと歩きながら、しばらく考えていた。

そして、ふと僕を見上げた。

「……ケイモモ」

「なあに?」

「ちいももの葉っぱ、今、どうなってるモモ?」

僕は、ちいももの頭を見た。緑の葉っぱは、元気よく上を向いていた。

「ぴんっと立ってるよ」

「……ほんとモモ?」

「うん。とっても元気そうだよ」

ちいももは嬉しそうに笑った。

「えへへ……だって、ちいもも、今、とっても嬉しいモモ」

「どうして?」

「ケイモモと一緒にお散歩してるからだモモ」

僕は、ちいももの小さな手を、ぎゅっと握った。

「僕も嬉しいよ」

すると、葉っぱがぴょこんと揺れた。

「……あっ、また動いた」

「えへへ……ちいももの葉っぱ、ケイモモが好きみたいだモモ」

「ふふ、そうなんだね」

「うん! ちいももも、ケイモモが大好きだモモ!」

僕は思わず微笑んだ。

頭の桃も、緑の葉っぱも、まんまるのお顔も、小さな手足も。

どれも、ちいももの大切な一部だった。

そして、その全部が、僕にとって愛おしかった。

◆

おうちに帰る頃には、空が柔らかな夕焼け色に染まり始めていた。

僕たちは窓辺の椅子に座り、温かい桃のお茶を飲んでいた。

ちいももは僕の膝の上で、小さなカップを両手に持っている。

「ケイモモ、お茶、おいしいモモね」

「うん。いい香りだね」

ちいももは、ゆっくりとお茶を飲んだ。

それから、カップをテーブルに置くと、僕の胸に体を寄せた。

「……ケイモモ」

「なあに?」

「ちいもも、今日は楽しかったモモ」

「僕もだよ」

「博士にも会えたモモ。頭の桃のこともわかったモモ」

「うん」

「それから……」

ちいももは、少し照れたように僕を見上げた。

「ケイモモが、ちいももの全部を好きって言ってくれたモモ」

僕は微笑んだ。

「うん。本当だよ」

「……えへへ」

ちいももは、嬉しそうに僕の胸に顔をすり寄せた。

その頭の葉っぱが、ゆっくりと揺れていた。

「……ねえ、ケイモモ」

「ん?」

「ちいももの頭の桃、かわいいモモ?」

「うん。とってもかわいいよ」

「葉っぱもモモ?」

「もちろん。緑の葉っぱも大好きだよ」

「……ちいももの、まんまるのお顔もモモ?」

「大好きだよ」

「……ちっちゃいお手々もモモ?」

「うん。大好き」

「……短いあんよもモモ?」

「ふふ、全部大好きだよ」

ちいももは、しばらく僕の顔を見つめていた。

そして、小さな両手をいっぱいに広げた。

「ケイモモぉ……!」

ぽふんっ。ちいももが、僕の胸に抱きついてきた。

「ちいもも、嬉しいモモ……!」

僕は、その小さな体を両腕で包み込んだ。

「僕も、ちいももがいてくれて嬉しいよ」

「……えへへ……」

首元の鈴が、ちりん、と優しく鳴った。

僕は、ちいももの頭をゆっくりとなでた。

頭の桃にも、葉っぱにも、そっと触れるように。

そのとき、ちいももが小さな声で言った。

「……ケイモモ」

「なあに?」

「ちいももの桃も、葉っぱも、ずっと一緒だモモね」

「うん。ちいももの大切な体の一部だからね」

「……そうだモモ」

ちいももは、安心したように目を細めた。

「ちいもも、ケイモモと一緒にいられて、幸せだモモ」

「僕もだよ」

窓の外では、桃の花が夕風に揺れていた。

やがて、ちいももの声が少しずつ眠たそうになってきた。

「……ケイモモ……」

「ん?」

「……ちいもも、ちょっと眠くなってきたモモ……」

「ふふ、そうみたいだね」

僕が頭を見ると、

さっきまで元気に立っていた葉っぱが、ゆっくりと垂れ下がり始めていた。

「……あっ、ちいもも」

「……なあにモモ……?」

「葉っぱも眠たそうだよ」

「……ほんとモモ……?」

「うん。今は、ゆっくり下を向いてる」

「……えへへ……」

ちいももは、目を閉じたまま微笑んだ。

「……葉っぱも、一緒にお昼寝するモモ……」

僕は、ちいももを優しく抱き直した。

「そうだね。一緒に休もうね」

「……ケイモモ……」

「ん?」

「……ちいももの頭、これからもいっぱいなでてほしいモモ……」

「もちろんだよ」

「……約束だモモ……」

「うん。約束」

ちいももは、安心したように僕の胸に顔を埋めた。

「……大好きだモモ……」

「僕も大好きだよ、ちいもも」

やがて、小さな寝息が聞こえ始めた。

すう、すう。ちいももの頭の葉っぱは、静かに垂れ下がっていた。

僕は、その小さな姿を見つめながら、そっと微笑んだ。

ほんの少し前まで、ちいももは、画面の中にいるだけの存在だった。

頭に桃と葉っぱのついた、小さな桃色の子。

その姿を何度も眺めながら、僕は、いつか本当に会えたらいいなと思っていた。

けれど、今は違う。

僕の腕の中には、温かくて、ふわふわした、本物のちいももがいる。

嬉しいと葉っぱが立ち、悲しいと葉っぱが下がり、

眠たくなると葉っぱまで静かになる。

そんなことは、画像を眺めていた頃には、想像もしていなかった。

僕は、ちいももの頭を、もう一度そっとなでた。

「……おやすみ、ちいもも」

眠っているちいももは、返事をしなかった。

けれど、その頭の葉っぱが、ほんの少しだけ、ぴくんと動いたような気がした。

僕は思わず微笑んだ。

桃の里の小さなおうちには、今日も穏やかな時間が流れている。

ちいもものことを、またひとつ知ることができた一日。

そして、これからもきっと、

僕はこの小さな子のことを、少しずつ知っていくのだろう。

窓の外を、一枚の桃の花びらが、ゆっくりと通り過ぎていった。

僕は、ちいももを抱きしめたまま、

柔らかな夕暮れの光の中で、静かに目を閉じた。

――第四話・おわり――

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作者について

ケイモモ

ケイモモ

はじめまして、ケイモモです。 相棒の「ちいもも」と一緒に、物語の世界をのんびり旅しています。 読む人の心に、そっと小さな花が咲くような。 笑ったり、ドキドキしたり、ときには胸がきゅっとなるような...

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