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第五話『ちいももと、なでなで小町』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/1 📚 シリーズ: ちいもも物語 📝 6,282文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある日、ケイモモとちいももは、 桃の里の町で「なでなで小町」というASMR屋さんを、 見つけます。 心地よい音や、優しいなでなでを楽しめる不思議なお店。 スタッフのフワリーナさんとユルリオさんに案内され、 ふたりは初めてのASMRを体験することに。 ささやき声や耳かき、ブラッシングなど、 さまざまな癒やしを楽しむふたりの、 心地よく温かなひとときを描きます。

本文

桃の里に、穏やかな朝が訪れていた。

窓の外では桃の花が風に揺れ、柔らかな日差しが部屋いっぱいに広がっている。

僕は、ちいももと一緒に朝ごはんを食べ終えたところだった。

「ケイモモ、今日は何をするモモ?」

ちいももが、椅子の上から僕を見上げた。

頭の緑の葉っぱが、ぴょこんと立っている。

「そうだね。今日は町をお散歩してみようか」

「お散歩モモ! 行くモモ!」

ちいももは嬉しそうに両手を上げた。

僕が椅子から抱き下ろしてあげると、

ちいももは玄関へ向かって、ぽてぽてと歩き始めた。

「ケイモモ、早く行くモモ〜!」

「ふふ、ちょっと待ってね」

僕は戸締まりを確かめ、ちいももと手をつないで家を出た。

桃の里の小道には、今日も優しい風が吹いていた。

◆

しばらく歩いて町の商店街に入ると、ちいももが突然足を止めた。

「ケイモモ、あれは何モモ?」

ちいももが指さした先には、桃色の屋根をした小さなお店があった。

入り口には、ふわふわした雲の形をした看板がかかっている。

そこには、『ASMR屋さん なでなで小町』と書かれていた。

「ASMR屋さんか……」

「えーえすえむあーる? 何のお店モモ?」

ちいももは、不思議そうに首をかしげた。

「心地よい音を聴いたり、優しく撫でてもらったりして、

 リラックスするお店だよ」

「なでなでしてもらえるモモ?」

「うん。頭を撫でてもらったり、耳かきをしてもらったりするみたいだね」

すると、ちいももの大きな瞳が、きらきらと輝き始めた。

「ちいもも、なでなで大好きモモ!」

「知ってるよ。いつも僕にお願いするもんね」

「えへへ……だって、ケイモモになでなでしてもらうと、とっても幸せモモ」

ちいももは、僕の手をぎゅっと握った。

「ねえ、ケイモモ。ここ、入ってみたいモモ!」

「いいよ。僕もちょっと興味があるな」

「やったモモ〜!」

僕たちは、木でできた可愛らしい扉を開けた。

ちりん、と小さなベルが鳴った。

◆

お店の中には、ほのかに甘い花の香りが漂っていた。

壁は淡い桃色で、窓辺には小さな花が飾られている。

どこからか、静かな水の流れる音が聞こえてきた。

「いらっしゃいませ」

奥から、穏やかな声が聞こえた。

現れたのは、優しい笑顔を浮かべた女性だった。

「ようこそ、なでなで小町へ。私はフワリーナと申します」

続いて、落ち着いた雰囲気の男性も姿を見せた。

「私はユルリオと申します。本日は、どのような癒やしをご希望でしょうか?」

僕は、ちいももを見下ろした。

「初めてなので、いろいろ体験してみたいんですが」

「もちろんです。

 当店では、ささやき声や心地よい音のほか、

 なでなで、ブラッシング、耳かきなどもお楽しみいただけます」

フワリーナさんが、にっこりと微笑んだ。

「おふたりで一緒に施術を受けることもできますよ」

「ほんとモモ!?」

ちいももが嬉しそうに声を上げた。

「はい。私は、こちらの可愛らしいお客さまを担当させていただきますね」

フワリーナさんは、ちいももの目線に合わせて、そっとしゃがんだ。

「お名前を教えていただけますか?」

「ちいももだモモ!」

「まあ、可愛らしいお名前ですね」

「えへへ……ケイモモがつけてくれた、大切な名前モモ!」

ちいももは得意そうに胸を張った。

「それでは、ちいももちゃん。今日はよろしくお願いしますね」

「よろしくお願いしますだモモ!」

ユルリオさんが、僕に向かって微笑んだ。

「ケイモモさまは、私が担当いたします。どうぞ、ゆっくりおくつろぎください」

こうして、僕たちは初めてのASMR体験をすることになった。

◆

案内された部屋には、柔らかなリクライニングチェアが二つ並んでいた。

片方は人間用の大きな椅子。

もう片方は、ちいももの体にぴったりの、小さな桃色の椅子だった。

「わああっ! ちいももの椅子、ちっちゃいモモ!」

ちいももは嬉しそうに駆け寄った。

「ちいももさまのお体に合わせて、調整させていただきました」と、

ユルリオさん。

「すごいモモ! ちいもも専用みたいだモモ!」

僕がちいももを抱き上げ、椅子に座らせると、

小さな体がふんわりとクッションに沈んだ。

「ふわぁ……これだけでも気持ちいいモモ……」

ちいももは、すでに幸せそうな顔をしている。

僕も隣の椅子に腰を下ろした。

背もたれがゆっくり倒れ、体が優しく包み込まれる。

「それでは、始める前にひとつだけ。

 苦手な音や、触れられたくない場所がありましたら、

 遠慮なくおっしゃってくださいね」

フワリーナさんが優しく説明した。

「ちいももちゃん、頭を撫でてもよろしいですか?」

「もちろんモモ! いっぱいなでなでしてほしいモモ!」

「ふふ。それでは、始めましょうね」

フワリーナさんは、ちいももの頭にそっと手を置いた。

そして、ふわふわの毛並みに沿って、ゆっくりと撫で始めた。

なで、なで。なで、なで。

「……ふにゃぁ」

ちいももの口から、小さな声が漏れた。

「いかがですか?」

「き、気持ちいいモモぉ……」

ちいももの大きな瞳が、とろんと細くなっていく。

頭の緑の葉っぱも、気持ちよさそうにゆらゆら揺れていた。

「ちいもも、気持ちよさそうだね」

僕が声をかけると、ちいももはゆっくり顔を向けた。

「ケイモモぉ……すごいモモ……なでなでの達人さんだモモぉ……」

その言い方が可愛らしくて、僕は思わず笑ってしまった。

◆

一方、僕のところでは、ユルリオさんが施術の準備を始めていた。

「まずは、耳元で心地よい音をお楽しみいただきます」

ユルリオさんは、小さな木の箱を取り出した。

その中には、さまざまな道具が並んでいた。

柔らかな筆、小さな鈴、木製のブラシ、薄い紙。

最初に、筆で布をゆっくり撫でる音を聴かせてくれた。

さら、さら、さら……。静かな部屋に、細かな音が響く。

不思議なことに、耳の奥から頭全体へ、心地よい感覚が広がっていくようだった。

「……気持ちいいですね」

「ありがとうございます。では、次はこちらを」

今度は、薄い紙をゆっくりめくる音だった。ぱらり。ぱらり。

小さな音なのに、すぐ近くで聴くと、ずいぶん繊細に感じられる。

「ケイモモ〜……」

隣から、ちいももの声がした。

「ん?」

「ケイモモも、気持ちいいモモ?」

「うん。とっても気持ちいいよ」

「よかったモモぉ……」

ちいももは安心したように微笑んだ。

フワリーナさんは、今度は小さなブラシを手に取っていた。

「ちいももちゃん、今度はブラッシングしてみましょうか」

「ぶらっしんぐモモ?」

「はい。ふわふわの毛並みを、優しく整えていきますね」

フワリーナさんが柔らかなブラシを動かすと、

ちいももの桃色の体から、かすかな音がした。さわ、さわ。さら、さら。

「ふにゃああぁ……!」

ちいももは両手を胸の前で合わせ、幸せそうに目を閉じた。

「ケイモモぉ……ちいもも、もっとふわふわになっちゃうモモぉ……」

「ふふ、もともとふわふわなのにね」

「もっともっと、ふわふわになるモモぉ……」

僕は笑いながら、その様子を眺めていた。

◆

しばらくすると、ユルリオさんが僕に尋ねた。

「続いて、耳かきを体験されますか?」

「はい。お願いします」

僕は椅子の背もたれを倒し、横向きになった。

ユルリオさんは、明かりで耳の中を確かめてから、

柔らかな道具を使って、ごく浅いところを優しく整えてくれた。

こしょ、こしょ……。耳元に響く小さな音が、不思議と心地よい。

「痛くありませんか?」

「はい。大丈夫です」

ゆっくりした動きに、僕も次第に眠くなってきた。

そのころ、ちいももはフワリーナさんに、頭の周りを優しく撫でてもらっていた。

「ちいももちゃん、この頭の桃も、とても可愛らしいですね」

「えへへ……これは、ちいももの体の一部だモモ」

「まあ、そうなんですね」

「葉っぱも、ちいももの大切な葉っぱモモ!」

ちいももは、ちょっぴり誇らしげだった。

「それでは、桃と葉っぱには触れないように、周りを優しく撫でますね」

「ありがとうだモモ!」

フワリーナさんは小さな桃を避けながら、頭の柔らかな部分をゆっくり撫でた。

「ふわぁ……」

ちいももの葉っぱが、だんだん下がってきた。

僕は、その様子を見て微笑んだ。

以前、モモノウチ博士から教えてもらったことを思い出したのだ。

ちいももの葉っぱは、感情に合わせて動く。

眠くなると、柔らかく垂れてくるのだった。

「ちいもも、眠くなってきた?」

「……うん……ちょっとだけモモ……」

そう答えながら、ちいももは小さなあくびをした。

「ふあぁぁ……モモぉ……」

フワリーナさんが、くすっと笑った。

「無理に起きていなくても大丈夫ですよ」

「でも……ちいもも……まだ……いっぱい、なでなでしてほしいモモ……」

「はい。眠ってしまっても、優しく続けますね」

「えへへ……嬉しいモモ……」

ちいももは再び目を閉じた。

◆

次に、フワリーナさんは、ちいももの耳元で小さくささやき始めた。

「ちいももちゃん。今日も、とってもいい子ですね」

「……えへへ……」

「ふわふわで、可愛らしいですね」

「……嬉しいモモ……」

柔らかな声が、ちいももの耳元に優しく届く。

「大好きなケイモモさんと一緒に来られて、よかったですね」

その言葉を聞くと、ちいももはうっすら目を開けた。

「……うん……ケイモモと一緒だから……もっと幸せモモ……」

僕は、その声を聞いて胸が温かくなった。

ユルリオさんも、僕の頭をゆっくりとマッサージし始めていた。

指先で優しく圧をかけられるたび、頭から肩へと力が抜けていく。

「いかがでしょうか?」

「……すごく気持ちいいです」

僕が答えると、ユルリオさんは穏やかに微笑んだ。

「ありがとうございます。

 こちらのお店では、何かを頑張る必要はありません。

 ただ、心地よいと感じる時間をお楽しみください」

僕は、ゆっくり目を閉じた。

静かな音。優しい手の温もり。隣から聞こえる、ちいももの小さな寝息。

こんなふうに、何もしないで過ごす時間もいいものだと思った。

◆

どれくらい時間がたったのだろう。

僕が目を開けると、部屋の中には柔らかな光が満ちていた。

施術は、そろそろ終わりのようだった。

隣を見ると、ちいももが小さな椅子の上ですやすや眠っていた。

両手をおなかの上に置き、頭の葉っぱは、すっかり下がっている。

首元の鈴も静かだった。

「……ちいもも」

僕は小さな声で呼んだ。

「……んにゃ……モモ……」

ちいももは寝ぼけたように口を動かした。

フワリーナさんが微笑む。

「とても気持ちよさそうに眠っていらっしゃいますね」

「ええ。こんなに幸せそうな顔をしていると、起こすのがもったいないですね」

すると、ちいももの瞳がゆっくり開いた。

「……ケイモモ……?」

「おはよう、ちいもも」

「……あれ……? ちいもも、寝ちゃったモモ?」

「うん。ぐっすり寝てたよ」

ちいももは、ちょっぴり恥ずかしそうに頬を赤くした。

「えへへ……あんまり気持ちよくて……寝ちゃったモモ……」

そして、フワリーナさんを見上げた。

「フワリーナさん、ありがとうだモモ! ちいもも、とっても幸せだったモモ!」

「こちらこそ、ありがとうございます。またいつでもいらしてくださいね」

ユルリオさんも、僕に丁寧に頭を下げた。

「本日はありがとうございました」

「こちらこそ。とても気持ちよかったです」

僕は椅子から立ち上がり、ちいももをそっと抱き上げた。

「ケイモモぉ……」

ちいももは、すぐに僕の胸に顔をすり寄せた。

「ふふ、まだ眠い?」

「……ちょっとだけモモ……」

僕は、ふわふわの頭を優しく撫でた。

「それじゃあ、抱っこして帰ろうか」

「……うん。お願いするモモ……」

◆

お店を出ると、町には穏やかな午後の日差しが降り注いでいた。

ちいももは僕の腕の中で、気持ちよさそうに体を丸めている。

「ちいもも、今日は楽しかったね」

「うん! とっても楽しかったモモ!」

少し元気を取り戻したちいももが、顔を上げた。

「フワリーナさん、なでなでがとっても上手だったモモ!」

「そうだね。ユルリオさんも、すごく上手だったよ」

「ケイモモも、また行きたいモモ?」

「うん。また一緒に行こうね」

「やったモモ〜!」

ちいももの葉っぱが、ぴょこんと立った。

それから、ちいももは少し考えるように首をかしげた。

「でもね、ケイモモ」

「ん?」

「ちいもも、ひとつ気づいたことがあるモモ」

「どんなこと?」

「フワリーナさんのなでなでも、すっごく気持ちよかったモモ。だけど……」

ちいももは、小さな両手で僕の服をぎゅっとつかんだ。

「ケイモモに抱っこしてもらうと、もっともっと安心するモモ」

僕は、思わず微笑んだ。

「そうなの?」

「うん。だって、ケイモモのおてては、ちいももがいちばん大好きなおててだモモ」

そう言って、ちいももは僕の手に小さな頬を寄せた。

「ちいももが嬉しいときも、眠いときも、ちょっと寂しいときも……

 いつも優しくなでなでしてくれるモモ」

僕は立ち止まり、ちいももを抱き直した。

「……ありがとう、ちいもも」

「えへへ……」

僕は、ちいももの頭をゆっくり撫でた。なで、なで。なで、なで。

「ふにゃぁ……やっぱり、これが大好きモモぉ……」

ちいももは、とろけるような笑顔を浮かべた。

「僕も、ちいももを撫でていると幸せになるよ」

「ほんとモモ?」

「うん。ちいももが気持ちよさそうにしてくれると、僕も嬉しくなるんだ」

「えへへ……じゃあ、ふたりとも幸せモモ!」

僕たちは顔を見合わせて笑った。

◆

やがて、桃の木々の向こうに、見慣れた桃色の屋根が見えてきた。

『ケイモモとちいもものおうち』だった。

「ケイモモ、おうちが見えたモモ!」

「うん。ただいまだね」

「ただいまモモ〜!」

玄関を開けると、いつもの温かな空気が僕たちを迎えてくれた。

僕はちいももを抱っこしたまま、居間のソファに腰を下ろした。

「ちいもも、少しお昼寝する?」

「うん……でも、ケイモモも一緒がいいモモ」

「もちろん」

僕はソファにゆったりともたれ、ちいももを膝の上に乗せた。

小さな体を両腕で包み込み、頭を優しく撫でる。

「ケイモモ……」

「なあに?」

「今日のお店、すごかったモモ……」

「うん」

「でもね……ちいもも、今もASMRしてもらってるみたいだモモ」

「えっ? 僕、何か音を出してる?」

「ううん……ケイモモの声と、なでなでと……それから……」

ちいももは、僕の胸に小さな耳を寄せた。

「とくん、とくんっていう音が聞こえるモモ……」

「ああ、心臓の音だね」

「うん……この音、好きだモモ……」

ちいももは、幸せそうに目を閉じた。

「ケイモモが、ここにいるってわかる音だモモ……」

僕は何も言わず、ちいももをそっと抱きしめた。

窓の外では、桃の花びらが静かに舞っている。

やがて、ちいももの口から、小さな寝息が聞こえ始めた。

「……すぅ……すぅ……モモ……」

僕は、その寝顔を見つめながら、ゆっくりと頭を撫で続けた。

今日、僕たちはASMR屋さんで、たくさんの心地よい音や優しいふれあいを体験した。

けれど、こうしておうちでちいももを抱きしめている時間も、

僕にとっては何より心地よいものだった。

小さな寝息。柔らかな桃色の毛並み。ときどき、ちりんと鳴る首元の鈴。

そして、腕の中に確かに感じる、ちいももの温もり。

僕は、小さな声でつぶやいた。

「……おやすみ、ちいもも」

すると、眠っているはずのちいももが、ほんの少しだけ微笑んだ。

「……おやすみ……ケイモモ……大好きモモ……」

僕も微笑み、もう一度その小さな体を抱きしめた。

桃の里の午後は、ゆっくりと流れていく。

なでなで小町で過ごした、優しくて心地よい時間。

そして、ふたりのおうちで過ごす、何でもない幸せなひととき。

今日もまた、僕たちの大切な思い出がひとつ増えたのだった。

――第五話・おわり――

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作者について

ケイモモ

ケイモモ

はじめまして、ケイモモです。 相棒の「ちいもも」と一緒に、物語の世界をのんびり旅しています。 読む人の心に、そっと小さな花が咲くような。 笑ったり、ドキドキしたり、ときには胸がきゅっとなるような...

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