第七話 『ちいももと、特技おひろめ会』
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
桃の里をお散歩中のケイモモとちいももは、 五つの特技おひろめ会という小さな催しに出会います。 ところが、出場者が一人足りず、 スタッフさんは困っている様子。 お菓子がもらえると聞いて、 思わず手を挙げたちいももですが、 披露できる特技がありません。 そこで、ちいももが挑戦することになったのは、 なんと、おまんじゅうを食べること! 小さなちいももの、ちょっと変わった特技の、 おひろめが始まります。
本文
桃の里の空は、今日も気持ちよく晴れていた。
白い雲がゆっくりと流れ、道の両側には色とりどりの花が咲いている。
ケイモモとちいももは、花鈴町の商店通りをのんびり歩いていた。
「ケイモモ、きょうは、どこまでいくモモ?」
「特に決めていないよ。気の向くままに歩いてみようか」
「それがいいモモ〜!」
ちいももは短い足を一生懸命動かしながら、ケイモモの隣を歩いている。
ふわふわの桃色の体に、まんまるの白い顔。
頭には小さな桃と緑の葉っぱがあり、
歩くたびに首元の鈴がちりん、ちりんと鳴った。
やがて、ふたりは小さなおまんじゅう屋さんの前で足を止めた。
店先には、蒸したてのおまんじゅうが並んでいる。
「わあっ! おまんじゅうモモ〜!」
ちいももの目が、きらきらと輝いた。
店主のおばあさんが、にっこり笑う。
「いらっしゃい。今日は桃あんのおまんじゅうがおすすめですよ」
「桃あんって、どんな味なんですか?」
ケイモモが尋ねると、おばあさんは一つ手に取って見せてくれた。
「白あんに桃の果汁を練り込んであるんです。
ほんのり甘くて、いい香りがしますよ」
「おいしそうだね。ちいもも、三つずついただいて、おうちで食べようか」
「さんこ! ちいもも、さんこたべられるモモ!」
おばあさんは、おまんじゅうを三個ずつ、二つの紙袋に分けて入れてくれた。
袋には桃の花の小さな絵が描かれている。
「こちらがケイモモさんの分、こちらがちいももちゃんの分ね」
「ありがとうモモ〜!」
ちいももは自分の袋を両手で大事そうに抱えた。
ケイモモもお礼を言って、店をあとにした。
「おうちに帰ったら、お茶をいれて食べようね」
「うんっ! ちいもも、お茶も好きモモ!」
ふたりはおまんじゅうの袋を持って、再び歩き始めた。
◆
商店通りを抜けると、花に囲まれた小さな広場に出た。
広場の中央には木造の舞台があり、その周囲には色とりどりの旗が飾られている。
舞台の前には椅子が並べられ、大勢の人たちが楽しそうに集まっていた。
「ケイモモ、なにかやってるモモ!」
ちいももが舞台を指さした。
入口に立てられた看板には、
大きな文字で『五つの特技おひろめ会』と書かれている。
「特技のおひろめ会だって。ちょっと見ていこうか」
「みるモモ〜!」
ふたりが客席に近づくと、
花の飾りを胸につけた女性が、何やら困った様子で辺りを見回していた。
女性はケイモモたちに気づくと、ぱっと表情を明るくした。
「こんにちは! 私はスタッフのハナノと申します。
よろしければ、少しお話を聞いていただけませんか?」
「こんにちは。どうしたんですか?」
ハナノさんは、舞台のほうをちらりと見た。
「実は、今日のおひろめ会の出場者が、一人足りなくなってしまったんです」
「一人ですか?」
「はい。このおひろめ会は、昔から必ず五人が特技を披露する決まりなんです。
五つの特技がそろって、初めて一つのおひろめ会になる。
それが、この町に長く伝わる伝統なんですよ」
ハナノさんは少し肩を落とした。
「ところが、出場予定だった方が急に来られなくなってしまって。
四人の方はもう準備を終えているのですが、
どうしても五人目が見つからなくて……」
それから、思い出したように付け加えた。
「飛び入りで参加してくださる方には、
お礼にお菓子の詰め合わせを差し上げることになっているんです」
「おかし!」
ちいももの頭の葉っぱが、ぴんっと立った。
「はいっ、モモ!」
ちいももは片手を高く挙げた。
もう片方の手には、おまんじゅうの袋をしっかり抱えている。
「まあ! 参加してくださるんですか?」
ハナノさんがうれしそうにしゃがみ込む。
「ちいもも、でるモモ!」
「ちいもも、本当にいいの?」
ケイモモが驚いて尋ねた。
「おかし、もらえるモモ!」
「そうだけど、特技を披露するんだよ。何かできそう?」
「……とくぎ?」
ちいももは首をかしげた。
しばらく考えてから、ケイモモを見上げる。
「ケイモモ、ちいもも、とくぎがないモモ……」
すると、ハナノさんが優しく言った。
「大丈夫ですよ。司会のハナマルさんが、一緒に考えてくれますから。
何か一つでも、好きなことがあればいいんです」
ちいももは少し安心したように葉っぱを揺らした。
「それに、ちいももちゃんが出てくれたら、五人そろうんです。
本当に助かります」
「ちいもも、やくにたつモモ?」
「ええ、とっても!」
ちいももは、ぱあっと笑顔になった。
「じゃあ、ちいもも、がんばるモモ〜!」
ハナノさんは何度もお礼を言い、ちいももを舞台の近くへ案内してくれた。
ケイモモは客席の前のほうに座り、ちいももが見える場所で待つことにした。
◆
しばらくすると、舞台に一人の男性が現れた。丸い眼鏡に、桃色の蝶ネクタイ。
ふっくらとした体つきで、見るからに人のよさそうな笑顔を浮かべている。
「皆さま、お待たせいたしました!
本日も、五つの特技おひろめ会を始めたいと思います!」
司会のハナマルさんだった。会場から温かい拍手が起こる。
「このおひろめ会では、
毎回五人の皆さんに、ご自慢の特技を披露していただきます。
そして最後には、特に素晴らしかった方に優勝の記念品をお贈りします。
もちろん、上手にできても、ちょっと失敗しても、
皆さんで楽しく見守りましょう!」
ハナマルさんが手を広げると、舞台の横から最初の出場者が登場した。
ジャグリングが得意な青年、クルリオさんである。
クルリオさんは五つの色鮮やかな玉を取り出すと、次々に空中へ投げ始めた。
赤、青、黄色、緑、桃色。
玉はまるで虹のかけらのように、空中で美しい輪を描く。
途中で玉を背中の後ろに回したり、片足で立ったりしても、一つも落とさない。
最後に五つの玉を一度に高く投げ、見事に両手と帽子で受け止めると、
会場から大きな拍手が起こった。
「すごいねえ!」
ケイモモも思わず拍手をした。
舞台の横で見ていたちいももは、目をまんまるにしている。
「たまが、いっぱいとんでるモモ……!」
二人目は、手品師のマジリーナさんだった。
紫色の帽子をかぶった女性で、空っぽの箱から花束を取り出したり、
赤いハンカチを青い小鳥の形に変えたりして、観客を驚かせた。
三人目は、楽器演奏が得意なネイロさん。
小さな木琴のような楽器を使い、
花の間を風が通り抜けるような、澄んだ美しい旋律を奏でた。
会場は静まり返り、最後の音が消えると、惜しみない拍手が送られた。
四人目は、ものまね名人のマネスケさん。
鳥のさえずり、川のせせらぎ、花風トロッコの汽笛まで、
声だけでそっくりに再現する。
特に、トロッコが坂道を上るときの音は本物そっくりで、観客たちは大笑いした。
四人の特技が終わると、ハナマルさんが舞台の中央へ戻ってきた。
「さて、いよいよ最後の出場者です。
本日は急きょ参加してくださった、とっても小さなお友達をご紹介します!」
ちいももはハナノさんに促され、短い足でとことこと舞台に上がった。
首元の鈴が、ちりん、と鳴る。
「お名前を教えていただけますか?」
「ちいももモモ!」
元気いっぱいの返事に、客席から笑みがこぼれた。
「ちいももちゃんですね。よろしくお願いします!」
「よろしくモモ〜!」
ハナマルさんは、ちいももの目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「さて、ちいももちゃん。今日はどんな特技を見せてくれるのかな?」
「……とくぎ、まだきまってないモモ」
「おや、そうでしたか。では、一緒に考えてみましょう。
何をするのが好きですか?」
「ケイモモに、だっこしてもらうのがすきモモ!」
「ほほう、抱っこですか。それは気持ちよさそうですね。
でも、今日はちいももちゃんの特技を見せてもらう会ですからねえ」
ハナマルさんは顎に手を当てた。
「ほかには何かありますか?」
「えっと……おひるねもすきモモ!」
「お昼寝! それもいいですねえ。
ただ、眠ってしまうと、おひろめ会が終わっても起きられないかもしれませんね」
観客たちがくすくす笑った。
そのとき、ハナマルさんが、ちいももの抱えている紙袋に気づいた。
「ところで、ちいももちゃん。その袋には何が入っているんですか?」
「おまんじゅうモモ!」
「おまんじゅう? それはおいしそうですね」
「とってもおいしそうモモ! おうちで、ケイモモとたべるモモ!」
「なるほど。では、おまんじゅうを食べるのは好きですか?」
「だいすきモモ〜!」
ちいももの頭の葉っぱが、うれしそうにぴこぴこ動いた。
ハナマルさんは、にっこり笑った。
「それなら、ちいももちゃん。
おまんじゅうを食べるところを、皆さんに見せてくれませんか?」
「たべるところを、みせるモモ?」
「そうです。おいしそうに食べるのも、立派なおひろめですよ」
「それなら、ちいもも、できるモモ!」
こうして、五人目の特技は、おまんじゅうを食べることに決まった。
◆
舞台の中央に、小さな椅子とテーブルが用意された。
ちいももは椅子にちょこんと座り、テーブルの上に紙袋を置いた。
「それでは皆さま、
最後の出場者、ちいももちゃんによる、おまんじゅうのおひろめです!」
ハナマルさんの紹介に、客席から拍手が起こる。
「ちいももちゃん、準備はいいですか?」
「いいモモ〜!」
ちいももは袋を開け、中から一つ目のおまんじゅうを取り出した。
白くて丸い、ふっくらとしたおまんじゅうである。
ちいももは両手で持ち、しばらくじっと見つめた。
それから、ぱくり、と小さな口でかじった。
「……おいしいモモ〜!」
まんまるの白い顔が、幸せそうにほころんだ。
ちいももは、もぐもぐと口を動かす。
桃あんの甘い香りが口いっぱいに広がり、頭の葉っぱがゆらゆらと揺れた。
観客たちは、何となく静かに見守っている。
ジャグリングでも手品でもない。
ただ、小さな桃色の子がおまんじゅうを食べているだけなのだ。
最初は不思議そうな顔をしていた人も、
ちいももの満足そうな表情を見るうちに、自然と笑顔になっていった
。一つ目を食べ終えると、ちいももは小さく息をついた。
「おいしかったモモ!」
そして、二つ目を取り出す。
「まだあるモモ〜!」
客席のあちこちから、くすくすと笑い声が聞こえた。
二つ目のおまんじゅうには、桃あんがたっぷり入っていた。
ちいももは一口かじると、あんこが少しだけ口元についてしまった。
「あらあら、ほっぺについているよ」
客席のおばあさんが、思わず声をかけた。
ちいももは首をかしげる。
「どこモモ?」
右の頬をこすったが、あんこは左側についている。
「反対だよ」と、今度は子どもが教えてくれた。
「こっちモモ?」
ちいももが左の頬を拭くと、ようやくきれいになった。
「とれたモモ〜! ありがとうモモ!」
客席から小さな拍手が起こった。
ケイモモも笑いながら、ちいももを見守っていた。
二つ目を食べ終えたちいももは、最後の一つを袋から取り出した。
「あと、ひとつモモ!」
ハナマルさんが、そっと声をかける。
「ちいももちゃん、おなかは大丈夫ですか?」
「だいじょうぶモモ! ちいもものおまんじゅう、さいごまでたべるモモ!」
ちいももは三つ目のおまんじゅうを、ゆっくりと味わい始めた。
急いで食べるわけでも、特別な食べ方をするわけでもない。
小さな両手で大事そうに持ち、一口ずつ、おいしそうに食べる。
ときどき目を細め、口いっぱいに広がる甘さを楽しんでいる。
観客たちも、いつの間にか、その様子を穏やかな気持ちで眺めていた。
やがて最後の一口を飲み込むと、ちいももは空になった袋をのぞき込んだ。
「……なくなったモモ!」
それから両手をおなかに当て、満足そうに言った。
「ごちそうさまモモ〜!」
その瞬間、会場いっぱいに拍手が広がった。
ハナマルさんも、ぱちぱちと手をたたいている。
「ありがとうございました! ちいももちゃん、とってもおいしそうでしたね!」
ちいももは驚いたように観客を見回した。
「みんな、ぱちぱちしてるモモ……!」
客席からケイモモが手を振ると、ちいももも両手を振り返した。
「ケイモモ〜! ぜんぶたべたモモ〜!」
その声に、会場はまた温かい笑いに包まれた。
◆
五人のおひろめが終わり、いよいよ結果発表となった。
出場者たちは舞台に並び、ハナマルさんの言葉を待っている。
ちいももも一番端に立っていたが、ほかの四人よりずっと背が低いので、
ハナノさんが小さな踏み台を用意してくれた。
「さて、本日の優勝者を発表いたします!」
ハナマルさんが、少し間を置いた。
「優勝は……見事なジャグリングを披露してくださった、クルリオさんです!」
大きな拍手が起こり、クルリオさんはうれしそうに頭を下げた。
記念品として、桃の花をかたどった美しい飾りが贈られる。
ちいももも、ぱちぱちと一生懸命拍手をした。
「たまのひと、すごかったモモ〜!」
クルリオさんは、ちいももに向かってにっこり笑った。
続いてハナマルさんが、もう一度マイクを持った。
「そして本日は、特別な賞を一つ、ご用意しました」
「とくべつな、しょうモモ?」
ちいももが首をかしげる。
「その名も、『ほのぼの賞』です!」
観客たちは顔を見合わせた。初めて聞く賞の名前だった。
「この賞は、見ている皆さんの心を温かくしてくださった方にお贈りします。
受賞者は……ちいももちゃんです!」
ちいももは、目をまんまるにした。
「……ちいももモモ?」
「はい! おめでとうございます!」
ハナマルさんは、桃色の小さなリボンがついた賞状を差し出した。
「ちいももちゃんは、おまんじゅうを三つ、とても幸せそうに食べてくれました。
その姿を見て、会場の皆さんも自然と笑顔になりました。
そこで、ほのぼの賞を贈ります!」
ちいももは賞状を両手で受け取った。
「ちいもも、ゆうしょうしたモモ?」
「優勝ではありませんが、特別な賞ですよ」
「とくべつ……モモ!」
ちいももはうれしそうに賞状を見つめた。
「ちいもも、おまんじゅう食べただけモモ!」
「そうですね。でも、みんなを笑顔にしてくれましたから」
ハナマルさんの言葉に、ちいももの頭の葉っぱが、ぴょこんと跳ねた。
「みんな、にこにこしたモモ?」
「ええ、とっても」
ちいももは客席を見回した。そこには、笑顔で拍手を送る人たちがいた。
「ちいもも、うれしいモモ〜!」
最後に五人全員へ、参加のお礼としてお菓子の詰め合わせが配られた。
ちいももは自分の分を受け取り、ハナノさんにもお礼を言った。
「ありがとうモモ! ちいもも、おかしもらえたモモ!」
「こちらこそ、参加してくれてありがとう。五人そろって、本当によかったです」
ハナノさんが微笑むと、ちいもももにっこり笑った。
「ちいもも、お役に立てて、よかったモモ〜!」
◆
おひろめ会が終わるころには、広場に午後の柔らかな日差しが差し込んでいた。
観客たちは楽しそうに感想を語り合いながら、それぞれの道へ散っていく。
ケイモモは舞台を降りてきたちいももを迎えた。
「ちいもも、お疲れさま。とっても上手だったよ」
「ケイモモ、みてたモモ?」
「もちろん。最初から最後まで見ていたよ」
「ちいもも、おまんじゅう、さんこぜんぶたべたモモ!」
「うん。とってもおいしそうだったね」
ちいももは、ほのぼの賞の賞状とお菓子の包みを誇らしそうに見せた。
「これ、もらったモモ〜!」
「よかったね。大切にしようね」
「うんっ、モモ!」
ふたりは広場の端まで歩いた。
花壇には小さな蝶が舞い、遠くから花風トロッコの汽笛が聞こえてくる。
「ちいもも、そろそろおうちに帰ろうか?」
ケイモモが尋ねると、ちいももは立ち止まった。
「ケイモモ……」
「なあに?」
「だっこしてほしいモモ〜」
「おや、疲れちゃった?」
「おまんじゅう、3個食べたから、おなかがぽんぽこりんモモ〜!」
ちいももは両手でおなかをさすった。
ケイモモは笑いながら、ちいももをそっと抱き上げた。
「はい、どうぞ」
「わあ〜! ありがとうモモ〜!」
ちいももはケイモモの胸にぴったりとくっついた。
首元の鈴が、ちりんと優しく鳴る。
「ケイモモのおまんじゅうは、まだあるモモ?」
「うん。僕の袋には、三つとも残っているよ」
「よかったモモ〜! ケイモモも、おうちでたべられるモモ!」
「そうだね。帰ったらお茶をいれようか」
「うんっ! ちいももも、お茶のむモモ!」
「おまんじゅうは、もういらない?」
「いまは、おなかいっぱいモモ〜!」
ケイモモが笑うと、ちいももも楽しそうに笑った。
ふと、ちいももは抱えていた賞状を見つめた。
「ケイモモ、ちいもも、またおひろめ会に出たいモモ!」
「そうなんだ。次は何を披露するの?」
「えっと……」
ちいももは少し考えたあと、ぱっと顔を輝かせた。
「こんどは、ケイモモにだっこしてもらうモモ!」
「それだと、僕も出場することになるね」
「じゃあ、ふたりででるモモ〜!」
「でも、五つの特技おひろめ会は、一人ずつ出るんじゃないかなあ」
「……そうモモ?」
ちいももは、ちょっとだけ考え込んだ。
それから、ケイモモの首にぎゅっと抱きついた。
「じゃあ、だっこは、おひろめしなくていいモモ!」
「どうして?」
「だって、ケイモモにだっこしてもらうのは、ちいももの、大事な時間モモ〜!」
ケイモモは微笑んで、腕の中の小さなちいももを抱き直した。
ちいももは満足そうに目を細めると、ケイモモの胸に頬を寄せた。
今日は初めて舞台に立ち、大勢の人たちの前でおまんじゅうを三つも食べたのだ。
小さな体には、少し疲れる一日だったのかもしれない。
やがて、ちいもものまぶたがゆっくりと閉じていった。
頭の葉っぱも静かに垂れ下がり、すうすうと穏やかな寝息が聞こえ始める。
ケイモモは、ちいももを起こさないように、そっと歩き始めた。
ちいももの小さな手には、ほのぼの賞の賞状が大切そうに握られている。
広場を抜けるころ、柔らかな風が吹き抜け、
道端の桃の花びらがひらひらと舞い上がった。
ケイモモの腕の中で、ちいももの首元の鈴が、ちりん、と小さく鳴った。
第七話おわり