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アルト・ランゲートの苦難

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/5 📚 シリーズ: アルト・ランゲートの苦難 📝 5,943文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

西の大陸の平和を守るため、港町エル・ドラドを後にしたSSS級パーティ『真実の天秤』。 次なる目的地である不夜の鉱山都市【ゴルゴン・グラン】を目指し、彼らは険しい山岳地帯へと足を踏み入れる。 ​しかし、そこは「一筋縄ではいかないトラブル」のオンパレードだった! 道中で待ち受ける難解な関所の検問(?)や、己の体幹を鍛えるために挑んだ霊峰の滝行で早くも炸裂する、お約束の大惨事――。 ​シリアスな世界観と、容赦ないギャグの嵐がハイテンションで交錯する! 大罪の影が忍び寄る緊迫の道中でありながら、今日も今日とてリーダー・アルトの胃袋は限界突破のサイレンを鳴らし続ける。 ​果たして彼らは、無事に鉱山都市へとたどり着くことができるのか? ポンコツで愛すべき最強パーティが織りなす、爆笑必至の異世界ファンタジー第3章、いざ開幕!

本文

第4話 無事に(?)帰還! 冒険者ギルドは今日も大惨事

重厚なオーク材の扉を開けた瞬間、生温かい熱気と安っぽい麦酒の酸臭が鼻腔を穿った。

ひび割れた石畳を踏みしめる度に、冒険者たちが上げる野卑な笑い声と、重厚なジョッキが打ち合わされる乾いた音が鼓膜を震わせる。ダンジョン最深部を覆っていた冷たく湿った静寂とは正反対の、泥臭くも圧倒的な生命の生起——王都下町に拠点を置く冒険者ギルド『赤き黄金亭』の日常が、そこには広がっていた。

「はあ……帰ってきたな……」

俺——アルト・ランゲートは、肩から脱力するように深く、重い吐息を吐き出した。 身につけた軽甲冑の隙間からは、死線をくぐり抜けた後に漂う煤(すす)と乾燥した血の匂い、そして仲間たちの巻き起こした狂乱の残香がまだ抜けきっていない。体感時間が三倍に跳ね上がる時空魔法『クロノ・ブースト』の乱用による神経の磨耗と、あの奇天烈なポンコツたちを抑え込み続けたことによる精神疲労が、ずっしりと鉛のように両脚へ伸しかかっていた。

俺の背後では、巨大な斧を担いだバルダーが「ガハハ!」と地鳴りのような高笑いを上げ、その後ろでは東方組のカゲツとリンが、先ほどの「岡山弁と猫語尾」の大自爆を思い出したのか、互いに明後日の方向を向いたまま耳まで真っ赤にして俯いている。

「無事で何よりでしたわ、アルト様……! 私、生きて日光を浴びられたことだけで神に感謝したいですぅ……」

背中に背負われ続けて三半規管をズタズタにされた聖女ミゼラが、生まれたての小鹿のように膝をガクガクと震わせながら、俺の袖を掴んできた。彼女の薄桃色の髪には、いまだにダンジョンの天井から落ちてきた埃と、謎の粘液がこびりついている。

「ああ、生きて帰れたこと『だけ』は神に感謝しよう。……問題は、この後の『清算』だがな」

俺は額に浮き出た冷や汗を拭いながら、ギルドの中央奥に鎮座する一番の難所に視線を向けた。

滑らかに磨き上げられたカウンターの向こう側。 そこには、純白のブラウスに濃紺のベストをきっちりと着こなした受付嬢、セリアが立っていた。

艶やかな栗色の髪を後ろで綺麗に束ね、完璧な角度の微笑みを浮かべた彼女は、まさにギルドの良心であり、同時に全冒険者がもっとも恐れる「歩く計算機」でもあった。

「おかえりなさいませ、アルトさん! それに皆様も……無事に仮攻略を達成されたようですね」

セリアの鈴を転がすような美しい声が響く。彼女は手元の大きな台帳に羽根ペンで優雅に何かを書き込みながら、ちらりと俺たちの装備の損耗具合へ視線を滑らせた。

「ええ、まあなんとか……中ボス『古代の番人』を撃破し、初層および中層の安全確保とマッピングは完了しました。これが獲得したコアの破片と、ダンジョン仮攻略の報告書です」

俺は腰のポーチから、青く光る魔導石の破片と羊皮紙の書面をカウンターへと差し出した。

セリアは「まあ、流石ですね」と目を細め、細く白い指先で鮮やかに破片を検分していく。その手つきは手慣れたもので、即座にギルドの買取基準と照らし合わされているようだった。

「基本報酬、および中ボス討伐の特別手当、さらに貴重な古代金属の回収ボーナス……合計で【金貨八十枚】となります。新人パーティーの初攻略としては、異例の破格な金額ですよ」

「は……八十枚……!?」

ミゼラが感極まったように両手を胸の前で組んだ。

「すごいですアルト様! 金貨八十枚なんて、私が修道院で一年間に使うパンの代金よりはるかに多いですぅ! これでおいしいご飯が食べられますね!」

「ああ……これで新しい防具のメンテナンスもできるし、予備のポーションも買える……」

俺の胸に、久しく忘れていた安堵の波が押し寄せてきた。 死ぬ思いをしてポンコツたちの手綱を引き締め続けた甲斐があったのだ。この報酬があれば、しばらくは人間らしい暮らしができる。胃の痛みを忘れ、俺が温かいスープとふかふかのベッドを妄想して目尻を下げた——その瞬間だった。

「——あ、そうそう」

セリアの完璧な笑顔のまま、声のトーンがわずかに半音ほど下がった。 カウンターの空気が、まるで真冬の吹雪のように急速に凍りついていく。

「報告書と一緒に、ダンジョン管理協会からの『被害状況現地調査シート』も届いておりましてね? ちょっと内容の確認をさせていただいてもよろしいでしょうか、アルトさん?」

「ひっ……!?」

俺の背筋に、氷の針を刺されたような激痛が走った。 嫌な予感しかしない。俺は引きつった首をゆっくりと横へ向け、隣に立つ大男を見上げた。

バルダーは豪快に鼻をほじりながら、悪びれる様子もなく胸を張っていた。

「ガハハ! 何だセリアちゃん! 俺の八烈斧の威力を褒めてくれるのか? あのダンジョンの古くさい石扉も、頑丈そうな宝箱も、俺が一撃で粉砕してやったのだ! 探索の時間を大幅に短縮できたろう!」

「……バルダーさん」

セリアが羽根ペンをコトンと置いた。 その笑顔は変わらない。変わらないのだが、彼女の背後に、黒く渦巻く不吉なオーラのようなものがはっきりと揺らめいていた。

「ダンジョンの『古代遺構の扉』は、解錠魔法を使って開けるべき歴史的価値のある文化財です。それを『鍵開けが面倒だから』という理由で砕いたそうですね?」

「おう! 粉々にしてやったぞ!」

「さらに……設置されていた『古代の宝箱』ですが。罠の解除手順を踏まず、開け閉めの蝶番ごと斧で破壊し、中の調度品ごと叩き割ったと伺っておりますが?」

「ガハハ! なに、宝箱など外側の箱などどうでもいいだろう! 中身さえ回収できれば……む? アルト、なぜそんな青い顔をしておるのだ?」

「黙れ……! 頼むから今すぐその口を縫い合わせてくれバルダー……!」

俺は膝から崩れ落ちそうになるのを、カウンターにしがみつくことで必死に耐えた。

セリアは手元の「請求書」と書かれた分厚い羊皮紙を一枚めくり、さらさらと羽ペンを走らせた。そのカリカリという音が、俺には死刑宣告のカウントダウンに聞こえた。

「えー、歴史的構造物の破壊に対する損害賠償金……ダンジョン資材の補修費用……解錠専門家への緊急手配費用……さらに、破壊された宝箱に収められていた希少な『古代ガラスの小瓶』の弁済金……」

セリアはぱちんと指を鳴らすと、計算結果を記載した紙を俺の目の前へ滑らせた。

「差し引きまして……今回の報酬から【金貨七十五枚と銀貨八枚】を引き落としさせていただきますね(圧)」

「な…………っ!?」

俺の視界が真っ白に染まった。

金貨八十枚あったはずの輝かしい報酬。 俺の手に残されたのは、ぽつんと置かれた【金貨四枚と銀貨二枚】の、悲しくなるほど軽い金属片だけだった。

「ちょっと待ってくださいセリアさん!! なんですかこの引き落とし額は!? 九割以上持っていかれてるじゃないですか!!」

「これでも『冒険者ギルド特別割引』を適用して差し上げた結果ですよ、アルトさん?」

セリアは両手を頬に当て、首をちょこんと傾げた。その瞳の奥には、一切の妥協を許さない絶対零度の光が宿っている。

「もしこれ以上不服をおっしゃるようでしたら、バルダーさんを協会に引き渡して、向こう一ヶ月間の強制労働に就いていただくことになりますが……いかがいたしますか?」

「ガハハ! 俺を監獄に入れる気か! 望むところだ、鉄格子ごと叩き割ってやるわ!」 「黙ってろバルダーぁぁぁぁっ!!」

俺は叫びながらバルダーの脛(すね)を全力で蹴り飛ばした。 痛そうにすらしないバルダーの横で、俺はガタガタと震える手で、残された金貨四枚を拾い集めた。

「う……うう……俺たちの……俺の血と汗と、削られた胃の対価が……たったこれだけ……」

「アルト様……泣かないでくださいぃ……。私、明日から野草を食べて生きていきますからぁ……」

ミゼラがもらい泣きをしながら俺の肩を撫でてくる。 カゲツとリンは、申し訳なさそうに視線を泳がせながら、小さな声で「〜にゃ……」「すまんじゃけぇ……」と呟いていた。もう語尾が完全に癖になっている。

「……セリアさん」 「はい、なんでしょうアルトさん?」 「胃薬代の領収書、ギルドの経費で落ちたりしませんかね……?」 「落ちるわけがないでしょう(笑顔)」

俺は絶望の淵に突き落とされ、力なくギルドの重い扉を押し開けて外へと逃げ出したのだった。

◇

ギルドを出て、賑やかな大通りを一本外れた裏路地へ足を進める。 夕暮れ時の赤銅色の光が、古びた石造りの建物群を妖しく染め上げていた。

乾いた風が吹き抜け、路地裏特有のハーブと湿った土、そして薬草を煮詰める濃厚な香りが漂ってくる。

俺がふらふらとした足取りで辿り着いたのは、木製の古い看板に『トリア薬局』と刻まれた、小さく静かな店だった。軒先には乾燥させた謎の植物や、トカゲの尾と思われるものが吊るされており、怪しげな雰囲気を醸し出している。

カランコロン、とドアベルが乾いた音を立てた。

「いらっしゃい……なんだい、またその死にそうな顔かい、アルト」

店の奥、積み上げられた古い魔導書と無数の薬瓶に囲まれたカウンターから、ダミ声が飛んできた。

そこに腰掛けていたのは、煙草の煙を燻らせる一人の老婦人——マダム・トリアだった。 年齢は六十を越えているはずだが、背筋はピンと伸び、鋭い眼光と深いシワが刻まれた顔立ちには、かつて高位の薬師として名を馳せた圧倒的な貫禄が漂っている。

「トリアさん……頼む……いつものやつを……くれ……」

俺はカウンターにすがりつき、ポケットに残った貴重な銀貨を数枚叩きつけた。

トリアは深く煙草を吸い込み、紫煙を天井へと吐き出しながら、呆れたように眉をひそめた。

「ハッ、顔を見ればわかるさ。またあのポンコツどもの手綱引きで、胃に穴が開きそうなんだろ? ギルドのセリアの奴に、報酬を根こそぎ持っていかれた顔をしているよ」

「……当たりすぎてて笑えねぇよ。バルダーの奴がダンジョンの扉も宝箱も全部砕きやがって……俺の報酬が……俺の努力が……」

俺がカウンターに突っ伏して泣き言を漏らすと、トリアはガサゴソと棚の奥から、黒くて禍々しいガラス瓶をいくつも取り出してきた。

瓶の中には、まるで沼の泥をそのまま凝縮したかのような、赤黒くドロリとした液体が満たされている。

「ほらよ。『マダム特製・竜の胆汁入り超極苦胃薬』だ。飲むたびに寿命が三年縮まるような苦味だが、潰れかけた胃の粘膜を一瞬で修復する効果だけは本物さ」

「……ありがたく、いただくよ……」

俺は震える手で瓶の栓を抜き、意を決して一気に煽った。

「ゴブッ……!? ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

舌に乗った瞬間、まるで脳みそに直接劇薬を叩き込まれたかのような、凄まじい衝撃が駆け抜けた。 苦い。苦いという概念を超えて、もはや「暴力」だった。口内から食道、そして胃袋に至るまで、全神経が「これは毒だ!」と叫び声を上げている。

「ぶはぁぁぁっ!! 苦ぇぇぇっ! 味覚が死ぬ! 味覚が死ぬぞトリアさん!!」

「ガタガタぬかすんじゃないよ! 苦いから効くんだろうが! ほら、胃の痛みは引いたかい?」

俺は涙と鼻水を流しながら、己の腹部に手を当てた。 ……驚いたことに、つい先ほどまで激痛を訴えていた胃の裏側が、嘘のようにスッキリと熱を取り戻している。苦味の暴力によって、神経が強制的に麻痺させられたのかもしれないが、確実に楽になっていた。

「……ふぅ。助かった……生き返ったよ……」

俺が力なく息をつくと、トリアはフッと目元を和らげ、新しい煙草に火をつけた。

「たく、アンタも好き物だねぇ。あんな歩く災害みたいな連中、さっさとパーティー解消して、腕の立つソロ冒険者としてやっていけばいいものを」

「……まあ、そう言われるのは百回目だけどさ」

俺は苦い口内を水でゆすぎながら、店の外の夕空を見上げた。

「あいつら、ポンコツで、常識がなくて、指示は聞かないし、金は飛ばすけど……土壇場の連携と、仲間を想う気持ちだけは本物なんだよ。さっきだって、カゲツとリンが命がけで(恥を忍んで)弱点を叫んでくれなきゃ、俺たちはあのゴーレムに踏みつぶされてた」

「……フン。甘いねぇ。だからいつまでも損貧乏なんだよ」

トリアは口悪く捨て台詞を吐いたが、その手は棚から小さな包みを取り出し、俺の目の前へポンと置いた。

「持って行きな。精神安定効果のあるハーブティーの葉だ。サービスだよ」

「……ありがとう、トリアさん」

「また明日も来な。どうせあの連中のことだ、明日にはまた新しい問題を起こして、アンタの胃を破壊しに来るに決まってるんだからね」

「笑えないからやめてくれ……」

俺はハーブティーの包みと余った胃薬の瓶を抱え、トリア薬局を後にした。

◇

宿屋『月光亭』の二階。 俺たちが借り切っている大部屋のドアを開けると、そこにはすでにすっかり寛ぎきったポンコツたちの姿があった。

「あ、アルト! おかえりなさい! 胃薬は買えましたか?」

ミゼラが心配そうに駆け寄ってくる。彼女は顔を綺麗に洗い、泥を落としてさっぱりとした表情をしていた。

「おうアルト! 遅かったじゃないか! ギルドから減額された分の補填として、俺が街の外で巨大イノシシを狩ってきたぞ! 今夜はボタン鍋だ!」

バルダーが誇らしげに、床に転がされた巨大な魔獣の死体を指差した。宿屋の床が血で汚れている気がするが、もう突っ込む気力もない。

部屋の隅では、カゲツとリンが並んで正座し、縮こまりながら熱いお茶をすすっていた。

「……アルト殿。本日は……拙者の不徳により、多大な損害を掛け……かたじけない……」 「……私も、パントマイムを勘違いして……すみませんでした……じゃけぇ……」

まだ語尾が抜けきっていないリンが、真っ赤になって頭を下げる。

「はぁ……もういいよ。怪我なく帰ってこられただけで良しとするさ」

俺は畳の上に腰を下ろし、深く息を吐いた。

確かに散々な一日だった。 報酬は消え飛び、胃は激痛に苛まれ、命の危険に何度も晒された。 けれど——温かい鍋の湯気が部屋に満ち、全員が無事な顔をして笑い合っているこの光景を見ていると、不思議と「まあ、悪くはないか」と思えてしまうのだから、俺も相当毒されているのだろう。

「よし! 今夜はもう何も考えずに食って寝るぞ! 明日は丸一日、体を休める休業日だ!」

「「おーっ!!」」

バルダーとミゼラが歓声を上げる。

この時の俺は、心から安らいでいたのだ。 明日は平和な一日になるのだと、疑いもなく信じ切っていた。

——しかし。 このポンコツたちが、たった一日の「平和な休日」を静かに過ごせるはずがないという残酷な現実を、俺はまだ知る由もなかったのである。

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作者について

天霧 セナ

天霧 セナ

広島在住。AI生成を使用し小説とイラストをやってます。 ファンタジー・SF・恋愛など色々書いてますが、 一番大事にしてるのは感情の動き。AIで感情表現は何処までできるかをテーマにしてます。 今年...

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