黒魔女さんからお手紙ついた【23話】

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/11/25 📚 シリーズ: 黒魔女さんからお手紙ついた 📝 4,510文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

魔法学校入学のために金貨3億枚の借金を背負ったヴェロア

本文

【二十三】

 礼拝堂の地下室で繰り広げられた副校長たちとの壮絶な戦いから、数日が過ぎた。

 重傷と言わざるをえないほどあちこちに傷を負ったヴェロア。そして魂が戻るまで十年にも及ぶ歳月を要したアリエス。その回復を待ってから、一同がアリエスの店に介することになった。

 二日間も意識が戻らないほどの深手となったヴェロアの傷は、完治したとまではいえなかった。

 ヴェロアの傷は魔法医の回復魔法を施しても、治りはなかなかかんばしくなかったからだ。後に聞いた話では、攻撃魔法には邪な力を乗せることで、その威力や効果を飛躍的に高める手段が存在するとのことで、あまり公に知られてはいないが、それは『邪術』と呼ばれる魔法なのだとアリエスは言った。

 今回のそれも、傷の治りを阻害したりする効果が付与されていたのだろうと、憎々しげな表情をしていたのを思いだす。

 それでもその後に言った「それだけキミの能力を警戒していたんだよ?」と、なぜか自分のことのように誇らしげな笑顔をしたのが、非常に印象に残っている。

 副校長の魔法がまさにそれであったのだろうというのが、アリエスとアイリーシェの見解だった。

 備え付けのベルを鳴らして、わずかに開けられたドアの隙間からひょいと顔を覗かせたのはミエリ。

「こんにちは……」

 肩まである金色の髪をふわりとなびかせながら、大きな瞳でこちらをうかがっている。

「ああ、いらっしゃい。入って入って」

 アリエスに促されると「失礼します」と礼儀よく挨拶をして入ってくる。

 ミエリも特別指導という名の洗脳を受けてはいたが、こちらは発見が早かったために、一度受けただけで済んだらしい。そのためか回復は、いたって早いものだった。

「ミエリちゃんだったっけね 調子の方はどうかな?」

「はい、おかげさまで、もうすっかりよくなりました」

 姿勢をただし笑顔でそう答えるミエリと、足の届かない椅子に腰掛けるアリエス。どう見ても年下としか思えないアリエスと落ち着いたミエリのやり取りが、とても可笑しくてたまらなかった。

 まるで妹が、無理矢理お姉さん役を奪い取ってしているままごとを見ている様に感じたから。

 ヴェロアがほんのわずかに漏らした笑みをめざとく見つけたアリエスは、照れを含んだ睨みをきかす。

「笑ったな。ヴェロア」

「え? そんなことないよ。ミエリも良くなって、安心しただけだよ」

 苦し紛れの言い訳だったが、しばらくじっと視線を飛ばしたアリエスからのお咎めはなかった。

 最近気づいたことだが、このアリエスは普段は『キミ』と呼ぶが、感情に変化がある時だけは言葉にもそれが乗り、呼び方が『ヴェロア』といった風に名前にかわる。それを知ってから、少しだけアリエスの心が掴めるようになった気がするのだった。

「学校もまだ休みのままだしね。じっくり身体と心を休めるといいよ」

 言うとこちらにも、穏やかな視線を向けたアリエス。少しばかり言葉に力がなくなり、ゴニョゴニョとした口調で言葉をよこす。

「ああっと…… その…… ヴェロアもしっかり身体を休めるんだよ。ご飯くらいなら食べさせゅぉぁぃ……」

 最後はほとんど聞き取ることも、理解することも出来ないほどにうつ向いてしまったアリエス。

 アリエスの言うように、学校は一時的に閉鎖されていて、その調査は今でも続いている。あれからの学校内は騒然としたものだった。なにせ教育を行うはずの機関が、人身売買と洗脳という前代未聞の事件を起こしていたのだから当然である。

 これから先、学校がどうなってしまうのかは、まだ結論がでないままだった。

「まあ、立ち話もなんだし、座ってよ」

「あ、はい。それじゃ遠慮なく」

 促されるままミエリも空いた席につく。

 初めて店を訪れたミエリは、店内を興味津々と言った様子であれこれ眺めては、あれがカワイイとかそれがオシャレだ。などと楽しそう。

 その辺りはやはり女の子なんだなとついつい思ってしまうが、この店にかわいくて、かつおしゃれな物があっただろうかと、少し首を捻るのだった。

「ミエリちゃん、飲み物はなにがいい?」

「えっと、じゃあ紅茶で」

「だってさ」

 そう言って視線をよこすアリエスに、首をかしげながら訊き返す。

「え? 僕が入れるの?」

「なに言ってんの、当たり前でしょ。お客さんなんだから」

 客人扱いなのはミエリだけなのかという、いささか納得のいかなさを感じつつも、素直にお茶の準備に取りかかる。

「ごめんね。ヴェロアも怪我が完全に治ってないのに……」

 少しばかし恐縮するミエリに対して、言葉を返したのは他でもないアリエス。

「いいの、いいの。気にしないで。男の子なんだから、これくらいの怪我は日常茶飯事よね」

「それって、僕が言う台詞じゃないの? というか、瀕死の重症を日常的に負いたくないんだけど……」

 聞き入れられないとわかっていながらも、そう漏らすヴェロア。

 時刻は昼も間近ということもあって、店のテーブルには所狭しと料理が並べられていた。あれ以来アリエスの店は休業状態となっているが、どうせ客など来やしないと、アイリーシェは笑っていったのだった。

 再びドアベルが鳴ると、新たな料理が届けられる。

「お待たせしましたー。お料理お届けに参りましたー」

「ご苦労様、そっちに運んでちょうだい」

 アリエスはずっと席についたままで、あちこちの店から運ばれてくる料理を、テーブルのどこに並べるかをいちいち指示していたのだった。そしてヴェロアはその都度支払いに追われる。

 傷のことを散々心配してくれたアリエスだったが、自身も日常生活を不備なくこなせるほどには、まだ魂と身体が融合していないのだとアイリーシェから聞いていた。

 なので決してそれをおくびにも出さないアリエスに、ちょっぴり胸が痛む。

「お待たせしました。ご注文の紅茶です」

 少々の皮肉をのせて紅茶を差しだすが、

「ありがとう、貴方はもうさがっていいわよ」

 到底キャラではないはずの高飛車なお嬢様風の絶妙な返しを見せたミエリ。アリエスも加わって「フフン」と笑い合う姿に、これは敵わないなという感想をいだく。

 事件の関係者の一同が介したといっても、関わりがあったのは四人しかいない。なのでそれはちょっとした快気祝いといった感じのもの。

 だがそれにしては、並べられた料理の量は尋常ではないのだった。

「ところでアリエス、こんなにたくさんの料理、いったい誰が食べるの?」

「そんなのキミに決まってるじゃない。男の子なんだからそれくらい食べないと、好きな娘を守れなくなっちゃうぞ。今回みたいに、その都度ボロボロになってたんじゃ、目も当てられないからね」

「え、それじゃなに? 僕がアリエスを守ることは、もう決定事項なの?」

「なに言ってんのよ、そんなの当たり前じゃない。契約印で結ばれた仲なんだから……」

 アリエスとの黒魔女の契約を交わしてしまったのは間違いないが、果たしてその契約書に、アリエスを守るというナイト的な役割が含まれていたがどうかはいまいち記憶にない。ある意味明確な上下関係ができてしまった以上、それは当然ながらやぶさかではない。元より相手が女性で、しかも本来の姿が自分よりも小さな少女となればなおのことだ。

 それには納得はいくが、ヴェロアにはもう一点引っ掛かるところがあった。

「当たり前なんだ…… じゃあさ、僕の好きな娘がアリエスっていうのも決定事項なの?」

「え?」

 弾かれたように驚きの視線を向けるミエリ。方や、まるで全身の血が沸き立ったかのように紅潮させるアリエス。

「な、な、なにを言っているのだヴェロア。そん…… なことがある……わけわけ」

 椅子から転げ落ちそうなほど取り乱してわたわたとするアリエスの言葉は、もはやその収拾がつかなかった。

「まあ、いいけどね。確かに僕は、全てにおいて実力不足だし、それでも誰かを守れる力は欲しいと思うから。それは今回のことで改めて身にしみたよ」

「ヴェロア……」

「それにさ、今回僕がアリエスやミエリを助けることができたのだって、たまたまでしかないんだから」

 ミエリ以外にも洗脳を受けていた生徒はたくさんいたが、それぞれがまた別の場所に監禁されていたようで、あの日あの地下室で見つけたのがミエリだったのは、単なる偶然でしかなかった。

 もっとも、副校長はアリエスの洗脳に関してはを自らの手で行うことが多かったようで、あの地下室を見つけることができたのも、そこにアリエスが監禁されていたことも、そちらに関しては偶然ではなかった。

 ミエリや特別指導を受けていた他の生徒たちが行方不明になっていることは知っていたが、だがそれが特別指導と称した洗脳だったこと、それを行っていたのが副校長一派の仕業だったことは、自分だけでは到底気づくことなどできなかった。

 アリエスたちがいなければミエリを助けることが出来なかったのは、揺るぎのない事実。

 そしてヴェロア自身も、未だ基礎魔法すらままならないただの落ちこぼれだというのも、悲しいかな事実なのだ。

 パンと手を一叩きしたアリエスが、重くなった空気を払うべく努めて陽気に振る舞った。

「さ、時間も良い頃合いだし、始めましょうか」

 テーブルに乗り切らないほどの料理が一通り揃っているが、メンバーはというと若干一名足りない。

「ちょっと待ってよ、アイリーシェは?」

「あんな時間を守らないフクロウなんか、待つ必要はないわよ」

「そうはいかないよ。仲間はずれにしたら、絶対に怒って暴れるでしょ」

 暴れるアイリーシェの姿というよりは、そのとばっちりをくう己の姿が鮮明に想像できたヴェロアは、どうにかアリエスをなだめすかしてアイリーシェの戻りを待つ。

 開け放たれた高窓に目を向けると、ぼんやりと青い空を眺める。

 あの日人生のどん底というくらいに落ち込んで、思い足取りのままここまでやって来た。そして悲痛にくれるなかアリエスに声をかけられた。それがもうずいぶんと昔のことのように思い出される。

「あれからまだ二週間しか経ってないんだよね」

「ああ、あの日から?」

「うん、僕の運命が大きく変わった日だからね……」

 感慨に浸るヴェロアの言葉に、同じくらいのトーンでアリエスは爆弾発言を重ねた。

「そうね…… ワタシとヴェロアが結ばれた日だからね」

 突然ミエリがむせると、ガシャンとティーカップを倒してしまう。

「ああ…… ご、ごめんなさい」

「ほら、アリエスがおかしなこと言うから……」

 片付けに追われるヴェロアはやんわりと発言をたしなめるが、原因を作った本人は、足をぶらぶらとさせ、反省どころか手伝う素振りも見せはしない。

「なによ、おかしくないでしょ? 手を取り合って結ばれのは事実なんだから」

 むせ続けながらも驚いたような視線を送るミエリに、首を振って誤解だと示す。

「わざわざ意味深な言い方して、妙なポイントだけを抜粋しないでよ」

 言っても無駄なのはわかっていたが、そうしないことには、それが事実だと証明してしまうことになる。ため息を吐きながら顔をあげると、高窓の外に、こちらめがけて飛来する物体があることに気づいた。

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作者について

九十九沢 美勇

九十九沢 美勇

AIを利用して小説作品を作っています。 カクヨムにも投稿しています。

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