黒魔女さんからお手紙ついた【罪】10話

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/12/13 📚 シリーズ: 黒魔女さんからお手紙ついた 📝 4,336文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

魔法学校入学のために金貨3億枚の借金を背負ったヴェロア

本文

【10】

「うーん……」

 腕組みをしたまま宙を見つめ、盛大なうなり声を上げるヴェロア。教室では数人の生徒が、グループ毎に朝一の授業が始まるまでの、他愛のない会話を楽しんでいた。

 ヴェロアは学校では、朝のこの時間の空気が一番好きだった。授業が始まる前であれば、意外とみんなが声をかけてくれるから。露骨に蔑んで接してくるのは、ほぼ一グループまで減っていた。

 実際のところは朝一も放課後も、他の生徒の心に変化があるわけでもなく、問題はむしろそう思っているヴェロアの方にこそあった。

 授業をこなす毎に鬱屈した感情に飲み込まれ、周りを遮断して机に突っ伏していては、そもそも声などかけてもらえるはずもない。

 しかし当の本人は、そこまでのことには気がついてはいないのだった。

「おはよう、ヴェロア。どうかしたの? なんだか盲腸に苦しむ狼のようなうなり声出していたけど」

「え? ああ、おはよう」

 声のした方を向いてその主を見やると、すぐ隣に立ったミエリが覗き込むようにして笑顔を見せていた。そんな仕草と表情を見せられれば、大抵の男子生徒は頬を赤くして表情をほころばせ、世界がまるで薔薇色であるかのように感じるだろう。そしてその日が人生最高の日だと感じてしまうところだが、今のヴェロアはそれでも難しい表情がほぐれることはなかった。

 それほどまでに、現在抱えた問題が厄介だということの現れでもあった。眉間に深いシワを刻んだまま、ヴェロアは一つ気になった質問をミエリにぶつけた。

「ねえ、ミエリ。盲腸の狼って見たことあるの?」

「ないよ。ないけど、そんな感じだったよ」

 会話の内容をいっさい疑う様子もなく、ミエリはそう言った。

「どんなんだよ。それ……」

「それで? 狼さんは、なにをそんなに考え込んでいたの?」

 ミエリはその席の生徒がまだ登校していないことを確認すると、ヴェロアの隣に腰を下ろした。

 肩肘をついて視線を送るその姿は、本人は別段意識してやっているわけではないのだが、実はそれが他の男子生徒が持つヴェロアへの反感に少なからず繋がっていることには、いっさい気づいていない。

「それが実はさ、アリエスから新しい依頼を受けたんだよ」

「へえ、今度はどんな内容なの?」

「うん、それが……」

 ヴェロアは一瞬言い淀むと考えを巡らせる。依頼内容をおいそれと他人に漏らしていいのかという疑問が生じたのだった。しかしそれに関してはアリエス本人からなにか注意を受けているわけでもないので、できる限り声をひそめてミエリに伝えた。それでも「ナイショにして」と念を押すのは忘れない。

「実はね、例の幽霊を捕獲しなくちゃならないんだよ」

「ええ? どうしてまたそんな事を?」

 小声で話すべくいっそう顔を近づけたミエリ。それによってヴェロアに対する反感がまた高まったことに、二人はまったく気づいてはいない。

「うん、どうやら幽霊を捕獲すると賞金が出るらしいんだ。金貨五千枚の」

「ええ? 五千枚?」

 驚きのあまり、声が大きくなりそうになるのをすんでの所でかろうじて堪えることのできたミエリ。

 少しだけ顔を寄せて小声に変える。

「それがそっくりそのまま、借金の返済になるのね」

 ヴェロアはこくんとうなづいて見せた。

「なるほどね、五千枚かぁ。それじゃあ頑張らないとだね。そうだ、私もできる限りお手伝いするからね」

 思いがけず飛び出したミエリの申し出に、ヴェロアの表情もわずかにほころぶ。それはたった一人で捕獲に挑まなくてはならないという難題に、わずかばかりの希望がわいたということと、得たいの知れない相手に一人で立ち向かうという不安から解消された、その二つの要因からだった。

 ヴェロアは思わず「いいの?」と聞き返してしまう。そこには情けないとか男なのにといった考えは、すでに微塵もありはしない。

「もちろんよ。私もヴェロアに助けられた一人なんだからね」

 そう囁いてはにかみを見せる姿に、ヴェロアは胸が締め付けられるようで、思わず顔を伏せた。ミエリには何度も正直に、あの時地下室にいたのは本当に偶然なのだと話しをしたが、それでも感謝の気持ちを消すことはなかった。

 ミエリに感謝されるほどのことは、実はしていないのだという気持ちが、ヴェロアの中には常に存在するのだ。

 しかしその胸の内を事ある毎に示すのもまた、ミエリに失礼になってしまうのではないか。そう考えながら、ヴェロアが視線を上げる。

 すると徐々に増え出したクラスの中に、いつもの朝とは違う雰囲気が漂っていることに気がついたのだった。

 それはミエリも同様で、二人は互いを見やると小首を傾げる。

「なんだろう?」

「なんだろうね?」

 二人が同時に口にすると、ミエリは近くの女友達にその理由を尋ねた。

「ねぇ、レリッカ何かあったの?」

「あ、おはよミエリ。それがね、どうやら新しい生徒が入ってくるらしいのよ」

「新しいって、試験はもうとっくに終わってるよ?」

 思わずヴェロアが口を挟んでしまう。しかしレリッカは、そんなことにはいっさい気に留める様子もなく、得意気に続きを話す。

「それがね、なんでも校長の知り合いらしくてね、今回特別に試験を行ったらしいのよ」

「特別試験?」

「そう。もちろん内容は私たちがやったのと、なんら変わらないらしいけどね」

 ヴェロアの中に、負の感情と悪い記憶がよみがえる。

 入学のための試験が終わった後に、学校と貴族たちの間に昔から存在する、悪しき関係を知って打ちひしがれた、苦い記憶。

 それでも前回の事件後にアリエスがふと口にした「少しは貴族優遇がなくなるかもね」という言葉を聞いて多少なりとも喜んだ。

 それからは確かに、優遇の度合いというものはいくらか減りはした。しかしながら長年に渡って続けられてきたものが、簡単に根絶するところまでは、都合よく進みはしなかった。

 それはもう、どうすることもできない世の中の仕組みなのだ。などと悟ったふりして、変に大人ぶって納得するなんていう器用なことは、ヴェロアにはできないのだった。

「でね、その新入生は、試験を全て満点でクリアしたんだって」

「すごい。満点だなんて……」

 ヴェロアは、自身の試験の時の苦い経験を思い出し、複雑な思いに胸が支配される。

「なんだよそれ。満点だったら、そもそも学校に入る必要ないじゃないか」

「そんなこと、私に言われたって……」

 少しばかりきつくなったヴェロアの一言に、レリッカは泣き出さんばかりに語気を弱めて口にした。

「ああ、ごめん。そうだよね。試験はあくまで基礎だけだもんね。満点でも学ぶことはたくさんあるか……」

「まあ、ヴェロアがそう言いたい気持ちも、わからないでもないでさ」

 チクリと胸に刺さる一言を笑顔でぶつけたレリッカは、どうやら端からヴェロアの言葉など、なんとも思っていなかったらしかった。その発端は自分の一言なのだからそれは自業自得なのだが、恐縮しつつも愚痴をこぼさずにはいられない。

「ひどい言われ方だ」

「へへん、仕返しだよ」

 両手を腰にあてて舌を出して挑発するように言葉を投げてくる。そんなやり取りを、クスクスとした笑い声を漏らして見入るミエリ。

 こうしていじられることも、最近では以前よりは苦痛ではなくなったヴェロア。

 召喚憑依魔法というものを実際に自分で扱えると知ったことで、心に巣食っていた負の意識がわずかながらに変わったその効果。

 そうなると自然と、周りの反応も少しずつ気にならなくなってきて、クラスメイトの対応もまたそれにつれて変化した。

 だがそれも、少数での対応に限られる。授業中などの大勢から投げられる蔑みに対しては、やはり慣れることなどできず、そこは以前となんら変わりはなかった。

「確かに、満点ならばどうして下位クラスなんだろうね」

 ヴェロアも抱いた疑問を口にしたミエリ。下位クラスなど、基礎魔法ですらやっとのレベルの集団である。貴族ならばそもそも英才教育を受けているので、基礎魔法程度で困ることなどありはしない。

 その結果、必然的に下位クラス=貴族以外という図式にこそなっているが、実力さえあれば、上位クラスに貴族以外の生徒が入ることも当然あるのだ。

 基礎魔法とはいえ、満点で試験を突破したとなれば、その資格は十二分にあると言える。その疑問が出るのも必然なのだった。

「なんでもその新入生は、自分は貴族じゃないから下位クラスにしてくれって、自分から願い出たらしいよ」

「なんて物好きなんだ。相当の変わり者だね、きっと」

 ヴェロアがそんな失礼千万な言葉を吐いた直後、ガラリと教室の扉が開かれ教官が姿を現した。いつのまにか生徒たちはみな登校していたようで、クラス内の喧騒が一変すると、瞬時に空気に緊張の度合いが濃くなってゆく。

 もうすでにクラス中に行き渡っている話題の主を、生徒一同が固唾を飲んで待ち望んでいる。

 その後に続くであろう人物に対し、入り口に全視線が注がれていた。

「さあ、入りなさい」

 教官の言葉に誘われて、ついぞその姿を現した新入生。その姿が一同の前に晒されると、クラス中がドッと震えるほどわいたのだった。

 歓喜するクラス内で、ヴェロアとミエリだけはその仲間に入ることができず、驚きの表情で互いを見やる。

 ヴェロアたち下位クラス一同の前に姿を現し、その注目を一身に浴びる新入生は、およそ一四○センチほどの身長に、赤み成分の強い茶髪を二つに束ねている。それは身長と同じくらいの長さを持っていた。大きく潤んだ瞳は、髪よりもさらに赤い。

 一言で形容するならば『少女』である。そう、ヴェロアたちの前に現れたのは、紛れもない黒魔女ことアリエスその人だった。

「今日から一緒に魔法を勉強することになった。さあ、自己紹介して」

「エルターナ・アリエス・ベルトーラです。アリエスと呼んでください。まだまだ魔法は未熟者ですが、どうかよろしくお願いします」

 そう言ってペコリと頭を垂れるアリエスに、クラス中の、特に男子生徒は狂喜乱舞。お祭り騒ぎの様相を呈していた。

 そんな中ヴェロアは、ボソリと悪態をつく。

「魔法は未熟者って言った? 魔法はって。それじゃ魔法以外は未熟者じゃないみたいじゃないか」

 それはもちろん、自分にしかわからないほどのぼやきだった。アリエスの姿を見ながら口にしたことで、そこに深い意味はもちろんある。

 そうしたところで、目の前の状況はなにも変わることはないのだが、それでも口にせずにはいられない気分が勝っていた。

 不意にアリエスと目が合うと、それまで笑顔を通していたアリエスの目が、一瞬キッとヴェロアを睨み付けた。ぼやきがバレていることを、ヴェロアは瞬時に理解するのだった。

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作者について

九十九沢 美勇

九十九沢 美勇

AIを利用して小説作品を作っています。 カクヨムにも投稿しています。

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