第12話:密約の影と決死の攻防 -3
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あらすじ
王宮のミステリウム~ヴァンパイアメイドと王宮の魔女~ - 第12話:密約の影と決死の攻防 -3
本文
第一王子エドワードは、深夜にもかかわらず、自身の私室にレティシアとセシリアの二人の妹が、ミレーヌとヴァネッサという『疑惑の人物』を伴って現れたことに、驚きと戸惑いを隠せないでいた。
エドワードは警戒心を露わにし、二人の妹を睨むように問い詰めた。
「レティシア、セシリア……お前たち二人が結託し、しかも王宮を騒がせているメイドと人ならざる者を連れてくるとは、どういうつもりだ? レティシア、まさか父上の件に続き、今度は私を陥れようとしているのか?」
セシリアは、兄の疑念を遮るように、声を張り上げた。
「エドワード兄様! いい加減にして!私たちの王位継承争いなんて、全てリチャードの陽動だったのよ! 兄様がレティシア姉様を疑うように仕向けたのも、全てリチャードの策略よ!」
レティシアは、セシリアの激情を抑え、静かな威厳をもって前に進み出た。
「兄様。セシリアの言う通りです。王宮内の貴族たちの対立、そして、これまでの不審な事件の数々。全てがリチャードの計算によるものでした。もはや、我々の間の私的な対立を議論している場合ではありません」
レティシアはミレーヌに視線を送った。その視線は、発言を促すものだった。
「ミレーヌ殿。兄様に、貴女が命懸けで持ち帰った真実をお見せなさい」
ミレーヌは、二人の王女と第一王子に囲まれた極度の緊張で顔を青くした。彼女はどもり、証拠の包みを落としそうになりながら、か細い声で
「あ、あの……エドワード、さま。わ、私……が、お、お持ちし……ま、した……」
と絞り出した。
ヴァネッサは即座にミレーヌの隣に立ち、手を添えて支える。
リリアは前に出て、エドワードに証拠の包みを差し出した。
リリアは怒りを滲ませるように訴えた。
「ミレーヌさんは、あなたが信じられない真実を、命懸けで持ち帰ったんです。これが、国王陛下の呪いと、リチャード王子の王国売却の企みの証拠です!」
ミレーヌは、ヴァネッサにそっと背中を押されながら、必死に言葉を絞り出した。
「そ、そう……で、す……! こ、これは、ええと……『盟約の証』。こ、国王さま、の……呪いの、し、真実、と……」
顔面蒼白になり、ヴァネッサに助けを求めるように視線を送る。
ヴァネッサが感情を排した声で冷静に補足した。
「そして、こちらがガリオン帝国大使ゼラス・ガルディアと交わされた『密約文書』の写しです。リチャード王子は、王国を帝国に実質的に売り渡そうとしています。これが、この国全てを滅ぼす、彼の一番の目的です」
エドワードは、ミレーヌが差し出した文書を受け取ると、その内容を読み込んだ。
リチャードの署名、ガリオン帝国との具体的な取り決め。彼の顔から、怒りを通り越した絶望の色が浮かび上がった。
エドワードは低く呻いた。
「……これが……リチャードの……! 信じられん……! 王国の財政権を譲渡し……国境付近に帝国軍の駐屯を許すだと……!? あいつは、王国を……この国全てを、ガリオン帝国に売り渡すつもりか……!」
レティシアは鋭く言い放った。
「王国の軍を指揮する立場にある兄様が、リチャードの暴挙を止められる唯一の存在です。私たち三兄妹が今、王族として団結しなければ、リチャードの策略は成功し、我々の祖国は滅びます」
セシリアは涙ながらに訴えた。
「エドワード兄様! 私たちの対立なんて、くだらない! どうか、王国の未来のために……!私たちはもう、リチャードという公の敵と戦うしかないのよ!」
エドワードは、激しい怒りと焦燥に駆られながらも、王族としての責任を思い出す。彼は、目の前の三人の顔をしっかりと見据え、深く息を吸った。
エドワードは決意を込めて言った。
「……わかった。……ミレーヌ殿。そして、レティシア、セシリア。私の、そして王家の名にかけて、あなたたちと手を組もう。王家の存続、そして王国の未来のために……!リチャードの悪事を、必ず白日の下に晒す!」
ここに、ミレーヌたちと、三王族による三者の共闘体制が、極秘裏に築かれた。
◇◆◇◆◇
ガリオン帝国大使ゼラス・ガルディアの私室。
リチャードとガリオン帝国の密約が表面化し始め、帝国は王国の内政の混乱を理由に国境付近で軍事的な圧力を強めていた。
ガリオン帝国の将校が報告した。
「ゼラス様。国境での軍事演習が順調に進んでおります。アルカディア王国の軍は、未だ動きを見せません。このままでは、我々の介入を黙認するしかなくなるでしょう」
ゼラス・ガルディアは、静かに微笑んだ。
「よろしい。愚かな隣人たちよ……内政を顧みず、自らの権力闘争に明け暮れるがいい。その間に、我々は、この国を掌中に収めるのだ……!」
◇◆◇◆◇
ふたたび、王都の安全な隠れ家(ミレーヌたちのアジト)。
ガリオン帝国の動きを察知したミレーヌは、王国の危機を回避するために、外交的な戦略を練り始めていた。
コミュ障ながらも、彼女はヴァネッサやメロディを動かし、王宮内の情報を集め、リチャードとバルドゥールの次の動きを予測する。彼女は、もはや一介の魔術師ではなく、王国の未来を背負う者として、成長を見せていた。
ミレーヌは、ヴァネッサとメロディに指示を出した。
「ヴァネッサ、王宮内の貴族たちの動向をもう少し探ってほしい。リチャードが誰に接触したか……そして、メロディさん。あなたの情報網で、バルドゥールの商館に不審な動きがないか探ってください。私たちが動ける時間は、もうあまりないわ」
ヴァネッサは深々と一礼した。
「承知いたしました、ミレーヌ様。闇の中の影を見つけるのは、お手の物です」
メロディは、力強く答えた。
「私の歌声が、王宮の秘密を暴きます。お任せください」
◇◆◇◆◇
レティシア王女の執務室。
レティシアは、エドワードとの協力体制の報を受け、ミレーヌたちの成功に安堵しつつも、王宮内に潜む裏切り者の存在に警戒を強める。アリア、エレナ、サラが、それぞれが得た情報を持ち寄った。
レティシアは言った。
「エドワード兄様も協力してくれることになったと聞いて、本当に安心したわ。これで、リチャードの悪事を暴く準備が整ったわね。でも……アリア、王宮内にはまだ、リチャードに加担している者がいるはずよ。私たちは、その裏切り者を見つけ出さなければならない」
アリアは指摘した。
「おっしゃる通りです、王女様。私も数名の貴族や使用人の動きを不審に思っております。彼らは、リチャード王子に情報を流している可能性があります」
エレナは情報を提供した。
「王女様、この前、とある伯爵がリチャード王子と密会しているのを見かけましたわ」
サラも情報を付け加えた。
「私も、最近、妙な噂を耳にいたしました。王宮内の魔術師の一人が、リチャード王子に寝返った、と……」
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