第9節「三人目の夜――揺れはじめる距離感」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第9節「三人目の夜――揺れはじめる距離感」――
救出劇を終え、街へ戻ったのはすっかり夜だった。
石畳の道を照らす灯火は温かく、海風に似た涼しい風が肌を撫でる。
みのりも砂月も、顔には疲れがにじんでいた。
「今日は宿をとろう。三人用の部屋があるか聞いてみる」
「三人部屋……?」
みのりと砂月が同時に振り向く。
みのりは――純粋に嬉しそうに。
砂月は――どこか意味深に。
「えっと! そ、それって……一緒に寝るってことですか……?」
みのりの声は緊張と期待が混ざっていた。
「いや、寝床は別だろうが……まあ同じ部屋だ。安全のためにもな」
「そういうことなら賛成」
砂月は口元に指を添え、くすりと笑う。
「この世界で一人で寝るなんて無理。蒼真がそばなら安心できるわ」
みのりが慌てて手をぶんぶん振る。
「ちょ、ちょっと砂月さん! 近いです! 言い方がずるいです!」
「本当のことを言っただけよ?」
砂月の落ち着きと、みのりの焦り。
二人の温度差が、蒼真の少し後ろで揺れていた。
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## ◆ ● 宿の一室にて
宿は清潔で広めの部屋を用意してくれた。
ベッドが三台、間隔を空けて並べられている。
「わぁ……! いい部屋ですねっ」
みのりがベッドをぽんぽんと押して弾力を確かめる。
「悪くないわね。まあ、撮影用の控室よりぜんぜんまとも」
砂月はソファに腰を下ろし、長い脚を組む。
蒼真は窓を開け、外を確認した。
(夜の街は静かだ……だが、敵意ある視線は昼間あった。油断はできない)
「今日はもう休め。明日から本格的に依頼をこなす」
「はい!」
みのりは満面の笑み。
「……ねえ、蒼真」
砂月が少し低めの声で呼んだ。
「あなたって、寝ているときも強いの?」
「どういう意味だ」
「ほら、夜襲とか。油断できないでしょ?
だから……隣で寝ても安心できるかなって」
「な、なっ……!?」
みのりの顔が真っ赤になる。
「さ、砂月さん大胆すぎますっ!?」
「ふふ。冗談よ。
でも、冗談に聞こえなかったら……嬉しいわ」
(……この人、本当に女優だな。距離を詰めるのが上手い)
しかし、みのりは負けじと蒼真の前に立つ。
「で、でも……私だって、蒼真さんと……その、そばで……」
「そばで?」
「……寝てたい、です」
最後の部分は蚊の鳴くような声だったが、気持ちは伝わった。
砂月がにやりと笑う。
「可愛い。
蒼真、あなた本当にモテるのね?」
「俺はただ、お前たちを守ってるだけだ」
「それがモテる理由よ?」
二人のやりとりを聞きながら、蒼真は内心思う。
(……まだ始まったばかりだが、この世界の“仲間集め”はこういう形で進んでいくんだろうな)
女神の意図はともかく、
彼の周りにはすでに二人の美しい日本人女性がいる。
そして――
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## ◆ ● 深夜、砂月の“気づき”
全員が寝静まった深夜。
砂月だけが静かに目を開けた。
(……また、感じた)
胸の奥でざわめく“予知”の感覚。
未来の断片のようなものが、うっすらと視界に流れ込む。
意味はわからない。
だが――悪意が近づいている気配だけは確かだ。
砂月はそっと蒼真の寝顔を見る。
(私……この人に助けられた命だもの。
守られるだけじゃ嫌。
この力……ちゃんと使えるようにならなきゃ)
静かに目を閉じる砂月。
そのまま、蒼真の寝息と同じリズムで眠りについた。
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