第10節「波乱の朝――新たな依頼と三人の距離」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第10節「波乱の朝――新たな依頼と三人の距離」――
翌朝。
柔らかな陽光が宿の窓辺から差し込み、薄いカーテン越しに部屋を金色へ染めた。
蒼真が目を覚ますと――
視界の端に、栗色の髪が見えた。
「ん……すぅ……すぅ……」
みのりが、自分のベッドからいつの間にか移動し、蒼真のすぐそばの床に丸くなって寝ていた。
(なんでここに……)
微笑んでしまうほど無防備で、可愛い寝顔だった。
手にはいつの間にか握ってしまったらしい布切れ――蒼真のマントの端。
(……安心して寝たかったのか)
と、そのさらに向こう――。
「……スゥ……ん……」
砂月も、ベッドではなくソファで眠っていた。
夜中に考え事をしていたのだろう。
長い髪が揺れ、吐息に合わせて胸元の薄布がわずかに上下する。
(なんなんだこの状況は……)
蒼真は静かに立ち上がり、二人を起こさないように身支度を整えた。
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## ◆ ● 朝の小さな事件
「ふわぁ……おはようござ……んんっ!?」
みのりが目をこすりながら起き、
自分の寝ていた場所に気づいた瞬間――固まった。
「えっ……あ、あの……蒼真さんの……近くで寝て……た? 私……」
「落ち着け。危なかったわけじゃないなら問題ない」
「は、はいっ……! す、すみませんっ!」
みのりは顔を真っ赤にして両手をばたばたさせた。
そこへ、砂月もゆっくりと起きる。
「……ん。朝? ……あら、みのり。顔赤い」
「い、いえ!? なんでもないですっ!」
「蒼真の近くにいたのね」
「なぜわかるんですかっ!?」
砂月は優雅に髪を払ってから、さらりと言った。
「だってあなた、安心しきった顔して寝てたもの」
「ひぃぃ……っ」
蒼真は咳払いし、話題を切り替えた。
「今日から依頼を受ける。ギルドに向かうぞ」
「は、はいっ! 行きます!」
「了解。私も準備できてるわ」
二人がほぼ同時に立ち上がり、近くにいた蒼真の左右へ自然と並ぶ。
――その姿は、まるで暗黙のポジション争いのようだった。
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## ◆ ● ギルドでの新たな依頼
ギルドに到着すると、朝早いのに冒険者で賑わっている。
受付嬢が蒼真を見るなり、ぱっと笑顔を向けた。
「おはようございます、蒼真さん。本日はどのような依頼を?」
「初心者向けだけど、少し長距離のものがいい。二人の経験も積ませたい」
「承知しました。ちょうど良い依頼がありますよ」
受付嬢が差し出した依頼書には――
**『街道沿いの村・リュミエへ護衛兼調査』**
「ここ最近、街道の先で“正体不明の魔物”が現れるらしくて……。村人の不安が高まっています。危険度は中程度ですが、熟練の冒険者が減ってしまって……」
「なるほど。俺たちで受けよう」
受付嬢は安心したように胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。蒼真さんたちならきっと……」
と、その時――
ギルドの奥から、あからさまにこちらを睨む若い男の視線を感じた。
黒髪。
鋭い目つき。
服装も他の冒険者とは違い、どこか“異質な雰囲気”。
(……日本人か?)
蒼真がじっと見返すと、その男は舌打ちし、視線を逸らして去っていった。
みのりが心配そうに蒼真の袖を引っ張る。
「蒼真さん……今の人……」
「わからん。ただ――気配が悪かった」
砂月は腕を組みながら目を細める。
「……感じたわ。あれ、普通の敵意じゃない。違和感がある」
「砂月の“勘”か」
「ええ。多分、また関わることになる」
(やはり……日本人の男も、この世界にはいるらしい)
蒼真は静かに気を引き締めた。
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## ◆ ● 旅立ちの支度
「蒼真さん。今日出発ですか?」
みのりはリュックを抱えながら、楽しそうに笑う。
「そのつもりだ。砂月は?」
「準備できてる。
……ただし一つだけ言っておくわ」
「なんだ」
「今のギルドの男――彼、ただの敵じゃ終わらない気がするわ。
空気が濁ってた。……嫌な感じ」
「予知か?」
「断片的なやつ。でも、私の勘はよく当たるの。女優って役の感情読み取るのが仕事だから」
みのりが少し怯えた顔になる。
「こ、怖い人なんでしょうか……?」
「大丈夫だ」
蒼真はみのりの頭を軽く撫でる。
「俺が守る。砂月もいる。心配するな」
「……うんっ!」
砂月も口元だけ笑い、静かに言った。
「安心しなさい。みのりのことは私も気に入ってるから」
「え!? そ、そうなんですか!?」
「ふふ。可愛い後輩って感じでね」
そんな三人のやり取りを包み込みながら――
新しい一日が始まっていく。
これが、蒼真たちが異世界で初めて挑む“本格的な旅”の始まりとなる。
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