第11節「旅路の始まり――温暖な街道と三人の距離」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第11節「旅路の始まり――温暖な街道と三人の距離」――
リュミエ村へ向かう街道は、海沿いの緩やかな丘陵に沿って伸びていた。
温暖な気候のせいか、空はやわらかく青く、吹き抜ける風も暖かい。
木々の葉は薄く光を弾き、遠くには白い海鳥の姿も見えた。
「うわぁ……気持ちいいです、この道……!」
みのりが胸いっぱいに風を吸い込む。
動きやすい軽装に替えた彼女の姿は、昨日までの緊張が嘘のように明るく、
陽の光を受けて柔らかい栗色の髪が揺れていた。
「ふふ、ロケ地みたいね」
砂月が隣で微笑む。
「カメラがあれば、外れなしの一枚が撮れそう」
「砂月さん、女優モードですね!」
「こういう景色を見ると、ついね。……あなたも似合うわよ、風景」
「え、えっ? そ、そんな……!」
みのりが慌てる横で、蒼真は先頭を歩きながら周囲に気を配っていた。
(この道……妙に静かだな)
人影も、動物の気配すら薄い。
異様なくらい静まり返っている。
「蒼真さん?」
みのりが不安そうに覗き込む。
「警戒しておけ。依頼書にあった“正体不明の魔物”の件が気になる」
砂月も歩調を合わせながら言う。
「見た目に反して、危険な地域ってことね」
蒼真は頷く。
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## ◆ ● 三人の距離感
しばらく歩くうち、自然と三人の歩く位置が決まっていった。
蒼真が前。
みのりはそのすぐ横。
砂月は一歩後ろ――しかし時折、蒼真の背中をじっと見るような視線を送ってくる。
(……護衛か? 気遣いか?)
蒼真が振り返ると、砂月は少し微笑む。
「何かあったら言って。後ろは任せて」
「頼もしいな」
「まあね。……それに」
「?」
「蒼真が前を歩くと、なんだか落ち着くのよ」
「そ、砂月さん……またそんな……」
「みのり。真っ赤よ?」
「うぅ……もうっ……」
和やかなやり取りの裏で、
砂月はほんの一瞬だけ真剣な目をしていた。
(……嫌な気配は、やっぱり近づいてる)
だがみのりはまったく気づかず、純粋に旅を楽しんでいた。
「蒼真さん、あの花綺麗ですねっ」
「本当だ。……触るなよ。毒草の可能性もある」
「は、はいっ!」
「素直でいい子ね、ほんとに」
砂月が肩をすくめる。
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## ◆ ● 初めての“共同戦闘”の気配
昼下がり。
丘陵を越えたあたりで――
「……止まれ」
蒼真が小さく告げた。
空気が、唐突に変わった。
温暖だった風が、急に重く冷たくなる。
沈黙が、ひりつくほど鋭くなる。
「蒼真さん……?」
「魔物の気配がする。距離はまだあるが……質が悪い」
みのりは息を呑んだ。
砂月は静かに瞳を細める。
「やっと来たわね。……この違和感、昨夜からずっとあった」
(砂月の感覚は予知に近い。頼りになる)
蒼真はゆっくりと剣を抜き、構えた。
「いいか、二人とも。
これは俺たち三人の最初の“本格的な戦闘”だ。
俺が前衛。砂月は中距離。みのりは後方で俺の補助に集中しろ」
「はい!」
「了解。……任せて」
風の向こうから、ざり……ざり……と何かが這うような音が近づく。
魔物の正体はまだ見えない。
だが、普通ではない“何か”が、確実に近づいている。
(実力を見せる時か――)
蒼真は背後の二人を一度振り返り、短く叫んだ。
「――行くぞ!」
三人の冒険は、
ついに初めての“本物の戦場”へと足を踏み入れた。
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