第12節「正体不明の魔物――初陣」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第12節「正体不明の魔物――初陣」――
草原の向こう――
ざり、ざり、と地面を擦るような音が徐々に近づいてくる。
風が止み、鳥の声も消えた。
まるで空気そのものが怯えているようだった。
「……蒼真さん。な、なんか……寒い……」
みのりが蒼真の背中の布をぎゅっとつかむ。
「大丈夫だ。後ろにいろ」
蒼真は剣を正面に構え、ほんのわずかに魔力を解き放つ。
蒼い光が刃を包み込んだ。
「……来るわよ」
砂月が低く告げる。
その瞬間――
草むらを裂いて、 *そいつ* が姿を現した。
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## ◆ ● 異様な“影虫”の群れ
「な……に、あれ……?」
みのりが震えながら呟く。
現れたのは巨大な虫――だが、ただの魔物ではない。
身体は黒い靄に覆われ、輪郭が揺らぎ、
赤い眼だけがぎらついている。
「影を喰ってる……?」
砂月が驚愕の声を漏らす。
「こんな魔物、聞いたことないわ。
普通の魔力生物とは違う……もっと“濁ってる”」
虫は二体。
異様なカサカサ音を響かせ、蒼真たちに向かってゆっくり迫ってくる。
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## ◆ ● 蒼真の一撃
「二体だけなら問題ない」
蒼真は一歩踏み出した。
瞬間、足元の大地が爆ぜる。
「蒼技――《蒼牙閃(そうがせん)!》」
蒼い斬撃が弧を描き、影虫の一体を真っ二つに裂いた。
黒い霧がしゅうっと蒸発する。
「すご……っ!」
みのりが思わず声を上げる。
だが、もう一体が奇妙な声をあげて突進してきた。
「くっ……素早いっ!」
「みのり、下がって!」
「ひゃっ!」
砂月がみのりを抱き寄せ、瞬時に後退する。
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## ◆ ● 砂月、能力の片鱗を見せる
「蒼真! 一瞬だけ止める!」
砂月が右手を掲げた瞬間――
彼女の周囲で薄い光の膜が揺れた。
(これ……魔法じゃない。もっと感覚的な……?)
蒼真が目を見開く。
「……っはぁぁぁッ!!」
砂月が息を吐くと同時に、
影虫の動きがほんの一瞬――止まった。
(これは……精神干渉?)
その刹那、蒼真は跳躍した。
「――終わりだっ!」
「蒼技――《蒼天断(そうてんだん)!》」
蒼い光の縦閃が走り、
影虫はまっすぐに斬り裂かれて霧散した。
辺りは再び静寂を取り戻す。
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## ◆ ● 初陣の余韻
「……お、おわった?」
みのりがおそるおそる顔を出す。
「ああ、もう大丈夫だ」
蒼真が剣を収めると、みのりはほっとして胸に手を当てた。
「た、戦い……こんなに怖いなんて……」
「最初は誰だってそうだ。慣れれば恐怖の扱い方も学べる」
「うん……頑張ります……!」
その様子に、砂月も微笑む。
「でもみのり、逃げずに指示に従えたわ。上出来よ」
「砂月さん……ありがとうございます!」
しかし、蒼真は影虫の残骸を見ながら眉をひそめた。
(……あの黒い濁り。
普通の魔物じゃない。何かに“汚染された”魔力……)
と、その時。
影虫の体の一部が、煙のように空へ昇っていく。
そして、遠く――
丘陵の彼方へ吸い込まれるように消えた。
「今の……見た?」
砂月が不安げに言う。
「ああ。まるで“誰か”に戻っていったみたいだった」
「え、えっ……怖いです……」
みのりが蒼真の袖にしがみつく。
蒼真はそっと頭を撫でた。
「安心しろ。必ず原因を突き止める」
砂月も横目に蒼真を見る。
(……やっぱりこの男、只者じゃないわ)
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## ◆ ● 三人の絆の一歩
「とりあえず、先に進もう」
蒼真が歩き出す。
「はいっ」
「ええ」
三人の歩く距離は、先ほどより自然に近くなった。
恐怖を共有し、背中を預けたことで――
確かな絆が生まれ始めていた。
しかし。
風の向こうで、何者かがそれを見ていた。
ギルドにいた、あの黒髪の日本人の男だ。
「……やっぱりか。
“蒼の勇者”……ね。面白くなってきたじゃねぇか」
男は薄く笑い、影の中へ消えていった。
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