第13節「彼らの後を追う影――黒髪の青年の狙い」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第13節「彼らの後を追う影――黒髪の青年の狙い」――
蒼真たちがリュミエ村へ向かって歩き続ける一方――
丘陵の陰では別の足音が響いていた。
草を踏み締める軽い音。
しかし、その歩みは獣のように静かだった。
黒髪の青年がひとり、蒼真たちの後を追っている。
「……へぇ。やっぱり強ぇな、あの蒼ってやつ」
青年は、口元にいやらしい笑みを浮かべた。
ギルドで蒼真を睨んでいたあの男。
名前は――**如月 翔(きさらぎ しょう)**。
日本から来た転移者にして、己の力に異常な執着を持つ男だった。
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## ◆ ● 如月翔という男
「しかし……あの虫どもすら瞬殺かよ。
さすが“蒼の勇者”って噂は伊達じゃねぇらしい」
翔は影虫の残骸が溶けた痕跡に指を滑らせる。
「けど、お前がどれだけ強かろうが……
俺の邪魔をするなら容赦はしねぇよ」
指先に黒い火花が散る。
翔はこの世界に来てから、
“普通ではない魔力”を手に入れていた。
それは蒼真の蒼い魔力とは正反対の、
濁り、絡みつくような黒い魔力。
……影虫を生み出したものと似た色。
「しかし驚いたぜ。
お前だけじゃなく、あの二人の女……」
翔の口元がいやらしく歪む。
「蒼の勇者の仲間ってわりに、どっちも可愛い顔してんなぁ。
とくに美容師の子……あいつ、守ってやりてぇタイプだろ?」
ぺろりと唇を舐める。
「そういうのが、一番泣くんだよなぁ」
言葉の内容も、瞳に宿る感情も、
完全に“歪んで”いた。
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## ◆ ● 情報屋との接触
翔は丘を越え、岩陰に潜む小柄な男へ向かった。
「おい、情報はどうなった」
「へ、へい……旦那。
あの虫ども、こっちには近づかねえんですよ。
闇の魔力が濃すぎて、村の連中には扱いきれなくて……」
「はっきり言え。原因は?」
「……どこかの“黒い泉”から湧いてくるみたいで……
誰も近づけねぇとか」
「黒い泉……ね」
翔は細めた目に興味の色を宿す。
「面白ぇじゃん。そこを押さえりゃ、俺の力はもっと増える」
「だ、だんな……あんまり深入りしすぎると……!」
「黙れよ」
バチッと黒い雷が情報屋の目の前に走る。
「俺の言うこと聞いてりゃ生きられる。
逆らったら……影虫と同じように“素材”にしてやる」
「ひっ……! わ、分かりましたぁ!」
情報屋は四つん這いで逃げるように去っていく。
翔はつまらなそうにため息をついた。
「雑魚ばっかりだな……。
やっぱりこの世界で相手になるのは――」
彼は遠く、蒼真が歩いている方向を見る。
「蒼の勇者。
それと……あの女たちだ」
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## ◆ ● ゆっくりと迫る破滅の影
翔は街道に視線を戻し、
気配を殺して歩き出した。
「まずは村で様子見だ。
蒼の勇者が何をするのか……全部見せてもらうぜ」
黒い魔力の霧が、翔の足元にたなびく。
「……それに、お前の仲間もな。
大事にしてるみてぇだし――奪ったら面白ぇよな?」
快楽的な笑みを浮かべながら、
翔はそのまま街道の影へ溶けていった。
蒼真たちの知らぬところで、
歪んだ敵意が静かに膨れ上がっていく。
やがて、この世界を揺るがす対立となるとも知らずに――。
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