番外短編「白の巫女、火照る夜」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
## ◆ 番外短編
### ――「白の巫女、火照る夜」――
焚き火の音が、ぱちりと静かに弾けた。
遺跡を離れ、野営地に戻った夜。
星は多く、空気は穏やかで、温暖なこの世界の夜風はどこか肌に優しい。
「……蒼真さん」
「どうした?」
毛布に包まれたみのりは、少しだけ身体を寄せてきた。
戦いの疲れが抜けきらないのか、頬はまだ火照っている。
「……さっきから……
なんだか、身体が……熱くて……」
蒼真は、ぎくりとする。
「魔力の反動か?」
「……多分……
でも……」
みのりは言葉を濁し、蒼真の袖をつまんだ。
「……近くに……来てもらえると……
落ち着く、気がして……」
(……反則だろ、それ)
蒼真はため息をつきつつ、
彼女の隣に腰を下ろす。
距離は、自然と肩が触れるほど。
◆ ◆ ◆
みのりの体温は、想像以上に高かった。
薄手の衣装越しに伝わる柔らかさと、
ほんのりと甘い香り。
「……蒼真さん……
手……大きいですね……」
彼女は、蒼真の手を両手で包み込み、
自分の胸元へ引き寄せる。
「……おい」
「……あ……ごめんなさい……
無意識で……」
そう言いながらも、
みのりは手を離さなかった。
むしろ、指先がきゅっと絡む。
「……嫌、ですか……?」
潤んだ瞳で、見上げてくる。
「……嫌なわけ、あるか」
蒼真の声は、少し低くなっていた。
彼は、そっとみのりの肩に手を回す。
抱き寄せるほど強くはない。
だが、確実に“守る距離”。
「……こうしてると……
日本にいた頃みたいで……」
みのりが、小さく笑う。
「お店で失敗して……
先輩に怒られて……
でも……誰かがそばにいると……
不思議と、頑張れたんです」
「……今も?」
「……今は……
蒼真さん、です」
◆ ◆ ◆
一瞬、言葉が消えた。
焚き火の音と、
互いの呼吸だけが残る。
蒼真は、みのりの額に――
そっと、自分の額を重ねた。
「……なら……
そばにいる」
それ以上は、しない。
だが、その距離は――
十分すぎるほど、近い。
みのりは、安心したように目を閉じ、
蒼真の胸に頬を預けた。
「……おやすみなさい……
蒼真さん……」
「ああ……
おやすみ、みのり」
彼女の寝息が、すぐに聞こえ始める。
蒼真は、毛布を掛け直し、
その温もりを逃さないように、そっと腕を回した。
(……ハーレムとか、どうとか……)
そんな先の話よりも――
今は、この温度が大切だった。
白の巫女は、
剣士の腕の中で、静かに眠り続ける。
――次の夜は、
もう少し、踏み込んでしまうかもしれないと、
蒼真は思いながら。
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