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1節 豊洲、夜の水辺

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/4 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,452文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【1節 豊洲、夜の水辺】

 東京湾から吹き上げる夜風は、生ぬるく、潮の匂いを含んでいた。

 豊洲の再開発地区。整えられた歩道と無機質な高層ビル群は、深夜にもかかわらず、どこか人工的な明るさを保っている。その光が、今夜はやけに現実感を欠いて見えた。

 小坂 凌は、規制線の内側に立ち、運河沿いの遊歩道を見下ろしていた。

 街灯に照らされた水面が、わずかに揺れている。そのすぐ脇で、男が一人、仰向けに倒れている。すでにブルーシートは掛けられていたが、輪郭だけで十分だった。死体という存在は、いつも周囲の空気を変える。

「争った形跡は、ほぼありません」

 鑑識の声が背後から届く。

 小坂は短く頷いた。

「刃物は?」

「まだ見つかっていません。ただ、切り口はきれいです。ためらいがない」

 プロの仕事だな、と誰かが小さく呟いた。

 小坂はその言葉を聞き流し、視線を足元へ落とした。被害者の胸元、ブルーシートの端から、白い紙片が覗いている。

「……あれは?」

 鑑識が一瞬、言葉を詰まらせたあと、ピンセットで紙を引き抜いた。

 折り畳まれたコピー用紙。そこに、黒のインクで短い一文が印字されている。

『これは罰ではない。調整だ』

 小坂は、その文字を黙って見つめた。

 挑発でも、愉快犯の悪戯でもない。そう直感的に感じた。言葉の選び方が、あまりにも冷静すぎる。

「メッセージ、ですかね……」

 若い鑑識が不安そうに言う。

 小坂は答えず、周囲を見渡した。防犯カメラ。街灯。人通りの少ない時間帯。だが、完全な死角は存在しないはずだった。

 ――にもかかわらず、犯人の痕跡は、ほとんど残っていない。

「無差別……ですか?」

 今度は別の声。

 振り返ると、少し離れた場所に、朝霧 葵が立っていた。新品のスーツに身を包み、規制線の向こうを落ち着きなく見つめている。現場に立つのは、これでまだ数えるほどだ。

「まだ分からない」

 小坂は静かに答えた。

 朝霧は、その言葉にわずかに肩を強張らせた。

「でも、被害者は会社役員ですよね。金銭トラブルも、恨みも、今のところ……」

「“今のところ”だ」

 遮るように言うと、朝霧は口を閉ざした。

 小坂は、再び運河へ視線を戻す。夜景に溶け込むように、ここはあまりにも整いすぎている。人が死ぬ場所としては、出来すぎている。

 胸の奥に、微かな違和感が残っていた。

 理由は説明できない。ただ、これを「通り魔」で片づけていいとは、どうしても思えなかった。

 正義だの、悪だの。

 そういう言葉以前に、もっと乾いた意図が、この現場には漂っている。

 小坂は、紙片の言葉を、もう一度だけ思い返した。

――調整。

 その意味を、まだ誰も理解していない。

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冥界焔つむぎ

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