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2節 連鎖の兆し

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/7 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,425文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【2節 連鎖の兆し】

 午前九時。

 東京はすでに、何事もなかったかのような顔で動き始めていた。満員電車、交差点を埋め尽くす人波、カフェのガラス越しに見える日常。昨夜、豊洲の水辺で一人の男が死んだことを、この街はまだ知らない。

 小坂凌は警視庁捜査一課のフロアを歩きながら、その“温度差”を肌で感じていた。事件は起きた瞬間から被害者にとっては終わりだが、社会にとっては、ほんの一つのノイズに過ぎない。だからこそ、刑事は声を拾わなければならない。

「おはようございます」

 朝霧が小走りで追いついてくる。スーツはまだ身体に馴染んでおらず、肩のあたりに硬さが残っている。それでも背筋は伸び、目だけは妙に真剣だった。

「お前、睡眠、取ってないだろ」

「小坂さんもですよね」

 互いに苦笑し、並んで歩く。

 昨夜から続く緊張が、二人の距離をわずかに縮めていた。

 捜査会議室では、既にホワイトボードが更新されていた。被害者・**相馬 健二**。勤務先、家族構成、交友関係。どれも平凡だ。平凡すぎる。

「被害者の会社関係、洗いました」

 若手刑事が報告する。

「内部不正、ハラスメント、リストラ関係……特筆すべきトラブルは見当たりません」

 その言葉に、空気が少し緩む。

 “やはり無差別か”という安堵が、無意識に広がる。

 小坂は、その流れを断ち切るように口を開いた。

「相馬は、半年前に社内でコンプライアンス委員を務めていたな」

「はい。形式的な役職ですが」

「形式的でも、判を押す立場だ」

 視線が集まる。

 上司が小坂を見た。

「何が言いたい」

「まだ仮説ですが……誰かの人生を“是正”する側にいた可能性があります」

 一瞬の沈黙。

 だが、上司は首を横に振った。

「こじつけだ。裏が取れない話を広げるな」

 会議はそのまま、無差別殺人線で進んだ。

 小坂は、それ以上食い下がらなかった。今は時期が悪い。

 会議後、朝霧が声を潜める。

「……納得してない顔ですね」

「顔に出てたか」

「かなり」

 小坂は小さく息を吐いた。

「朝霧、被害者の家族対応、行けるか」

「え、私が?」

「遺族から話を聞く。警察が公式に動く前に、温度を知りたい」

 一瞬、逡巡。

 だが、朝霧はすぐに頷いた。

「行きます」

 その即答に、小坂は一抹の不安を覚えた。

 正義感が強すぎる。被害者側に感情移入しすぎる危険がある。

 それでも、止めなかった。

 今は、その“熱”が必要だと判断した。

 昼過ぎ。

 朝霧は一人で、相馬の自宅マンションを訪れていた。中層階、ファミリー向け。インターホン越しに応答したのは、若い女性の声だった。

「……はい」

「警視庁の者です。お時間、少しいただけますか」

 沈黙の後、ドアが開いた。

 現れたのは、二十代後半ほどの女性。目の下に隈があり、昨夜から泣き続けたことが一目で分かる。

「娘さんですか」

「……はい」

 朝霧は一瞬、言葉に詰まった。

 被害者のプロフィールには、“妹”と記載されていた。

 小さな違和感。

 だが、その場では、まだ意味を持たない。

 その頃、小坂の携帯が震えた。

 秘匿性の高い通信アプリ。

 登録名は――“調整者”。

 胸騒ぎを覚えながら、通話ボタンを押す。

「何者だ」

『――次は、もう少し分かりやすくしようと思います』

 低く、感情の起伏を感じさせない声。

 一瞬で、背筋が凍った。

「お前は、誰だ」

 返答はなかった。

 通話は、切れていた。

 無差別ではない。

 それを、犯人自らが証明しに来た。

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冥界焔つむぎ

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