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2節 連鎖の兆し(続)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/8 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,434文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【2節 連鎖の兆し(続)】

 通話が切れた後も、小坂凌はしばらく携帯を耳元に当てたまま動かなかった。周囲の喧騒が、妙に遠く感じられる。捜査一課のフロアでは、キーボードを叩く音や電話の呼び出し音が絶えず鳴っているというのに、そのすべてが一枚の膜を隔てた向こう側にあるようだった。

『次は、もう少し分かりやすくしようと思います』

 脅迫ではない。

 挑発でもない。

 ――予告だ。

 犯人は、自分たちが「理解できていない」ことを、正確に把握している。その上で、理解させる気でいる。小坂は、そこに強烈な違和感を覚えた。支配欲とは少し違う。もっと、冷たく整理された意志。

 小坂はすぐに内線を取り、通話記録の保存と発信元追跡を指示した。しかし、結果は予想通りだった。特定には至らない。

「……やっぱり、ですね」

 朝霧からの連絡を受け、短く返す。

 彼女の声は、どこか強張っていた。

「遺族対応、どうだ」

『……正直、想像以上です』

 間。

 その沈黙に、現場の重さが滲んでいた。

『被害者の娘……相馬佳乃さん。プロフィールと食い違いがありました』

「どういうことだ」

『妹として登録されていましたが、実際は戸籍上も“娘”です。どうしてそんなミスが起きたのか……』

 小坂は眉を寄せた。

 警察のデータベースは、基本的に自治体情報と連動している。単純な誤登録は考えにくい。

『それと……彼女、言ってました』

「何を」

『父は……半年前から、眠れない、と言っていました』

 眠れない。

 その理由を、朝霧は続けた。

『仕事で“判断を迫られる立場”になってから、と』

 小坂は、捜査会議での自分の発言を思い出す。

 コンプライアンス委員。形式的な役職だと切り捨てられた、それ。

「何か、具体的な話は?」

『……詳しくは語りませんでした。でも、言葉を選んでいました。まるで、誰かに聞かれるのを恐れているみたいに』

 その表現に、小坂は確信を深める。

 被害者は、何かを知っていた。

 そして、何かを“選んだ”。

 電話を切った後、小坂はすぐに資料を洗い直した。相馬が関わった案件を時系列で並べる。社内不正の内部調査。匿名通報。処分保留。形式的な是正措置。

 法的には、問題なし。

 だが、人は救われただろうか。

「……調整」

 再び、あの言葉が浮かぶ。

 夕方、小坂は朝霧を呼び戻した。庁舎内の会議室。二人きりだ。

「勝手な判断をしたな」

 あえて、厳しい口調を選ぶ。

「……すみません」

 朝霧は俯いた。だが、その声に後悔だけはない。

「でも、行かなきゃいけない気がしたんです。被害者の“人”の部分を、誰かが見ないと」

 小坂は、少しだけ目を伏せた。

「それで、何を感じた」

「……怒りです」

 即答だった。

「父を誇りに思っていた。でも同時に、父が誰かを切り捨てたかもしれないことも、分かっていた。だから、泣くことすら、許されない顔をしてました」

 朝霧の拳が、震えている。

「正しい判断をした人が、殺されるんですか?」

 その問いに、小坂は答えなかった。

 答えられなかった。

 その夜、第二の事件が起きた。

 場所は、**新宿・歌舞伎町**。

 雑居ビルの非常階段で、男性の遺体が発見された。

 第一発見者の証言。

 死因。

 そして――遺体の胸元に置かれていた、一枚の紙。

『調整完了』

 同じ文言。

 同じ、無機質な文字。

 だが今回は、下に小さく追記があった。

『理解は、進んだか』

 小坂は、その紙を見つめ、静かに言った。

「……始まったな」

 連鎖が。

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冥界焔つむぎ

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