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2節 歪んだ共犯関係(続)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/19 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,365文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第2章 捜査と疑念】

### 【2節 歪んだ共犯関係(続)】

 小坂は、女性——被害者の妹・**杉本菜月**を、規制線の外れに設けられた簡易テントへ案内した。鑑識や制服警官の視線が背中に刺さる。彼女は終始、スマートフォンを胸に抱え、指先を白くするほど強く握りしめていた。

「落ち着いてください。順番に話を聞きます」

 低く、抑えた声。刑事としての声音だ。だが内心では、あの文面が脳裏から離れなかった。

 ——裁かれなかった罪は、誰が償う?

「兄は……昔、問題を起こしたことがありました」

 菜月はぽつりと切り出した。

「十年前です。大学のサークルで……一人、人生を壊した人がいた。兄は直接手を出したわけじゃない。でも、止めなかった。見て見ぬふりをした」

 小坂は黙って頷いた。朝霧は少し離れた位置で立ち、メモを取っている。

「その件、警察沙汰には?」

「なってません。被害者の人、途中で大学を辞めて、地方に引っ越したって聞きました。兄は……ずっと後悔してました。でも、何もできなかった」

 ——後悔していたから、許されるのか?

 犯人の声が、また重なる。小坂は眉間に力を込めた。

「そのメッセージは、いつ届きましたか」

「一週間前です。兄のスマホに。『あなたは、まだ間に合う』って……。兄、笑ってました。変な冗談だって。でも、その三日後——」

 言葉が途切れ、嗚咽が漏れた。朝霧が一歩近づき、ハンカチを差し出す。

「……ありがとうございます。辛い中、協力していただいて」

 朝霧の声は、感情が先走っていた。正義感が強いがゆえに、被害者側へ寄り添いすぎる。小坂はその背中を見ながら、危うさを感じていた。

 テントを出ると、夜風が湿った空気を運んできた。小坂は深く息を吸い、吐いた。

「先輩……」

 朝霧が小声で呼びかける。

「犯人の言ってること、少しだけ……分かる気がしました。何も裁かれずに、のうのうと生きてる人がいる。そういう人を、誰かが止めなきゃ——」

「それ以上、言うな」

 小坂は即座に遮った。視線を鋭くする。

「それは、犯人の思考だ。理解しようとした瞬間、飲み込まれる」

 朝霧は反論しかけて、唇を噛んだ。

「……でも先輩。もし、兄の件が明るみに出てたら、今回の事件は——」

「仮定の話をするな」

 冷たく言い放った。だが、小坂自身も分かっていた。彼女の疑問は、決して的外れではない。

 その時、ポケットの携帯が震えた。

 嫌な予感が、背骨を伝って這い上がる。

「……“調整者”」

 朝霧が言う前に、小坂は通話ボタンを押していた。

『こんばんは、小坂刑事』

 あの声だ。落ち着き払った、確信に満ちた声。

『妹さん、優しい人ですね。兄のことを、最後まで信じていた』

 小坂は無言で拳を握り締めた。

「どこで見ている」

『見ている? 違う。あなたが“見ようとし始めた”だけです』

 一瞬の沈黙。

『彼は、裁かれなかった。でも、後悔はしていた。さて……それでも、償いは不要だと思いますか?』

 通話は、そこで切れた。

 夜の闇が、急に濃くなった気がした。

 朝霧は、青ざめた顔で小坂を見つめている。

「……先輩。今の、犯人ですよね」

「ああ」

 小坂は携帯を見下ろし、静かに言った。

「そして、俺たちは今——

 **奴の“議論”のテーブルに、座らされた**」

 歪んだ共犯関係は、さらに一歩、深く踏み込んでいた。

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冥界焔つむぎ

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