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3節 選別される正義(続)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/22 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,324文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第2章 捜査と疑念】

### 【3節 選別される正義(続)】

 事情聴取用に設けられたマンション管理室は、朝の光が差し込み始めていた。だが室内の空気は重く、時間が止まったようだった。詩織は、紙コップの水に口をつけることもなく、両手で膝を抱えて座っている。

「婚約者として、気づいたことはありませんか」

 小坂の声は静かだった。問い詰める調子ではない。だが逃げ道も与えない。

「最近の様子とか、悩みとか」

 詩織はしばらく黙っていたが、やがて小さく首を振った。

「……忙しそうでした。でも、それはいつものことです。

 ただ……」

「ただ?」

「正義って、何なんだろうって。たまに、独り言みたいに言ってました」

 朝霧が顔を上げる。

「どういう意味ですか」

「ある事件のことを、ずっと引きずってたみたいです。

 自分は間違ってなかったのか、って」

 小坂の脳裏に、未解決案件のリストが浮かぶ。

 裁かれなかった関与。

 警察官という立場で、見逃した“灰色”。

「具体的な事件名は?」

「聞いても、教えてくれませんでした。ただ……」

 詩織は震える声で続けた。

「“あの時、俺が踏み込んでたら、誰かの人生は違ってたかもしれない”って」

 室内に、沈黙が落ちた。

 朝霧は歯を食いしばっている。

 彼女の正義は単純だ。悪は悪、守るべき人は被害者。

 だが、この事件は、その境界線を曖昧にしてくる。

「……それでも」

 朝霧が言葉を絞り出す。

「それでも、殺される理由にはならない」

 小坂は、ゆっくりと頷いた。

「その通りだ」

 だが、犯人は“理由”を作っている。

 自分なりの裁定を下し、それを使命と呼んでいる。

 聴取を終え、廊下に出た瞬間、携帯が鳴った。

 捜査一課の上司からだ。

『……上が、相当ピリついてる』

 低く、抑えた声。

『警察官殺しだ。マスコミも動く。

 この事件、表向きは“無差別型連続殺人”のままで行く』

「……本気ですか」

『混乱を防ぐためだ。

 内部不祥事の可能性は、公式には一切触れない』

 小坂は一瞬、目を閉じた。

「犯人は、そこを突いてきます」

『分かってる。だが、組織は理想論では動かない』

 通話が切れた。

 朝霧は、会話の断片だけで察したのだろう。

 険しい表情で小坂を見る。

「……隠すんですか」

「“今は”な」

「それは、正義ですか?」

 真っ直ぐな問い。

 小坂は、すぐに答えられなかった。

 その時、捜査室のモニターに速報が流れる。

 《警察官刺殺事件 都内で発生》

 コメント欄には、早くも憎悪と疑念が渦巻いていた。

 ——警察も信用できない。

 ——何か隠してる。

 ——犯人の言うこと、分かる気がする。

 朝霧が、画面を見つめながら呟く。

「……世論が、犯人に寄っていってる」

 小坂は拳を握った。

「だからこそ、線を引く」

「でも、線を引く場所を間違えたら——」

「その時は」

 小坂は、低く言った。

「俺が責任を取る」

 朝霧は驚いたように目を見開いた。

 その覚悟が、彼女の中の何かを揺らした。

 その夜、小坂の携帯に、再びメッセージが届く。

 ——あなたは、守るべき線を、守れますか?

 画面の文字が、静かに光っていた。

 選別される正義は、

 もはや犯人だけのものではない。

 **警察自身が、選ばれる側に立たされていた。**

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冥界焔つむぎ

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