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4節 越えてはならない線(終)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/26 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,120文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第2章 捜査と疑念】

### 【4節 越えてはならない線(終)】

 救急車のサイレンが、夕闇の千代田区を切り裂いていた。

 川瀬正樹は、ビル裏の非常階段で発見された。首に深い圧迫痕。だが、奇跡的に心拍は残っている。担架に乗せられ、酸素マスク越しに荒い呼吸を繰り返していた。

「意識レベルは?」

「低下していますが、反応はあります!」

 小坂は並走しながら、川瀬の顔を見た。

 四十代後半。警察幹部候補。

 内部処分止まりになった案件を、二件抱えている男。

 ——守られるはずだった人間。

 ——切り捨てられる可能性があった人間。

 救急車の扉が閉まる。

 小坂は、その赤色灯を見送りながら、拳を握り締めた。

「……間に合った」

 だが、その言葉に確信はなかった。

 朝霧は、少し離れた場所で立ち尽くしていた。

 自分が選び、守ろうとした人物が、血に塗れて運ばれていく光景を、ただ見ている。

「……私のせいです」

 声が、震えた。

「私が、動かなければ……」

「違う」

 小坂は、きっぱりと言った。

「犯人が選んだ。

 君は、引き金を引かされただけだ」

 朝霧は首を振る。

「でも……私、越えました」

「……ああ」

 否定しなかった。

「越えた。

 だから、もう元には戻れない」

 その瞬間、川瀬のポケットから回収された私物が、小坂の視界に入った。

 小さなボイスレコーダー。

「これ……」

 鑑識が再生ボタンを押す。

 ノイズ混じりの音声。

 そして、聞き覚えのある、落ち着いた声。

『あなたは、守られている。

 だが、それは“正しい”からではない』

 一同が息を呑む。

『警察は、線を引く。

 あなたは、その内側にいた。

 ——今日までは』

 録音は、そこで途切れていた。

 朝霧が、崩れるように膝をついた。

「……見せしめだ」

 彼女の呟きに、小坂は頷いた。

「そうだ。

 俺たち全員へのな」

 犯人は、明確に示した。

 告発すれば、血が流れる。

 隠せば、別の血が流れる。

 どちらを選んでも、無傷ではいられない。

 その夜。

 小坂の携帯に、最後のメッセージが届いた。

 ——線は、引き直された。

 ——次は、あなたが答える番だ。

 小坂は、画面を見つめながら、静かに呟いた。

「……望むところだ」

 警察という組織。

 正義という言葉。

 そして、自分自身。

 **すべてが、試される段階に入った。**

 朝霧は、立ち上がり、小坂を見た。

 涙は、もうなかった。

「先輩……

 それでも、捕まえますよね」

「ああ」

 小坂は、短く答えた。

「**今度は、俺たちが選ぶ番だ**」

 赤色灯が遠ざかり、夜が戻る。

 だが、東京はもう、事件前の東京ではない。

 越えてはならない線は、確かに越えられた。

 その代償は、これからすべて、回収されていく。

---

(第3章へ続く)

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冥界焔つむぎ

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