4節 法則の正体
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》
本文
## 【第4章 法則の正体】
### 【4節 法則の正体】
深夜零時過ぎ。
警視庁・捜査一課。
消灯されたフロアの一角だけが、
白く浮かび上がっていた。
小坂 凌は、
一人、ホワイトボードの前に立っている。
貼られた写真。
被害者一覧。
時系列。
——そして、
赤いペンで囲まれた共通点。
「……やっと、
見えてきた」
小坂は、
低く呟いた。
背後で、
ドアが静かに開く。
「先輩」
朝霧だった。
顔色は、
まだ万全ではないが、
目だけは冴えている。
「……無断侵入と、
単独行動」
小坂は、
苦笑いする。
「正式にやったら、
減給ですね」
「最悪、
配置転換だ」
「……それでも、
後悔は?」
朝霧は、
首を振った。
「ありません」
小坂は、
小さく頷く。
「……俺もだ」
二人は、
ホワイトボードに向き直った。
「被害者たちは、
無関係に見えた」
小坂が、
ペンで写真を指す。
「だが、
**一つだけ、
共通している**」
朝霧が、
息を呑む。
「……全員、
“何かを見た”人」
「正確には」
小坂は、
言い直す。
「**見て、
見なかったことにした**」
空気が、
一気に重くなる。
「事故。
不正。
暴力。
隠蔽」
小坂は、
一つずつ挙げる。
「彼らは、
加害者じゃない」
「……でも、
被害者でもない」
朝霧が、
噛みしめるように言う。
「ああ」
小坂は、
静かに肯定した。
「犯人の法則は——
**沈黙**だ」
——声を上げなかった者。
——逃げた者。
——見逃した者。
「……じゃあ」
朝霧が、
恐る恐る言う。
「私たちも……」
「対象になり得る」
小坂は、
即答した。
「だから、
あいつは“試験”をした」
——逃げるか。
——選ぶか。
「……先輩」
朝霧は、
拳を握る。
「だったら、
もう隠れません」
「俺もだ」
小坂は、
ペンを置いた。
「公式に戻る」
「戻れるんですか?」
「条件は、
一つ」
小坂は、
ボードの隅に、
ある名前を書いた。
——**御門 輝政**。
「彼を、
守り切る」
朝霧は、
理解した。
「……次は、
“沈黙の中心”ですね」
「そうだ」
小坂は、
ゆっくりと振り返る。
「犯人は、
自分が“正義”だと
信じている」
「だったら」
朝霧は、
はっきり言った。
「本物の正義を、
見せるしかない」
その瞬間。
——警視庁の内線が鳴った。
『小坂』
上司の声。
『正式に、
お前を
**本件の主任に復帰させる**』
小坂は、
一瞬だけ目を閉じた。
『ただし』
声が、
低くなる。
『御門が、
次のターゲットだ』
小坂は、
短く答えた。
「……承知しました」
電話が切れる。
朝霧が、
小さく息を吸う。
「……来ますね」
「ああ」
小坂は、
静かに言った。
「——今度は、
**正面からだ**」
ボードの中央。
赤い文字で、
書き足された一行。
**『沈黙を選ぶな』**
その言葉は、
犯人への宣戦布告だった。
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