※ 第17話 挫折と慰め

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/15 📚 シリーズ: VVB(Virtual・Venus・Baseball)、Vtuberと女子野球が=になった世界で 📝 2,268文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

VVB(Virtual・Venus・Baseball)、Vtuberと女子野球が=になった世界で - ※ 第17話 挫折と慰め

本文

「火夏!」

「ゆら先輩……」

「タクシーを待たせている。病院に行こう」

「はい……」

ゆら先輩は肩を押さえて顔を伏せる私を迷わず抱き締めてくれた。

それが嬉しくて、心強くて、気が緩んでしまった。

「ゆら……先輩」

「……なんだい?」

「ボク、悔しいです……っ」

ほろっと流れ落ちてしまった涙は誤魔化す事が出来なかった。

それでも人目につかない様にそっと抱き締めてくれて……

私が少し落ち着いた頃に、タクシーに乗せてもらった。

※※※※※

「肩健板断裂ですな。早い話が投げすぎて肩の健板が千切れた訳です」

「治るんですか……?」

「自然治癒はまず望めません。炎症が収まればリハビリで日常生活は送れるようになるかもしれませんが、野球をしたいとなると何らかの手を講じる必要がありますな」

「手術という事ですか?」

「そうなりますな。内容としては関節鏡と呼ばれる物になります。

簡単に言えば健板を骨に縫い付ける手術です。

この手術で満足に動けるようになるには半年から1年掛かります。

また、中には再び断裂したり術後に痛みが強くなった例も報告されています」

「そんな……っ」

プロ野球選手を夢見て、輝く将来の為に努力してきたのに……

それが全て崩れ去った気がした。

1年以上も禄に動けなくて、来年の夏大会にも間に合わなくて、チームに迷惑をかけるのが……惨めだった。

「あの、この手術をしたらもう野球は……」

「悪化するのはあくまで可能性の話です。長い歴史の中で、この怪我を克服した選手も大勢居ます。

ですが……夏大会で投げるのは厳しいでしょうな」

「そんなの、嫌です……っ! 折角華月学園にスカウトされて、特待生として良くしてくれて……っ

なのに腑甲斐無い投球をしてしまったばかりに負けてしまった。

今回だっていきなり降板して仲間に迷惑を掛けてる……

応援してくれるファンを裏切ったまま終わるなんて……っ」

「では、日向さん。再生治療を検討されては如何でしょうか?」

「再生、治療……ですか?」

「自分の身体から幹細胞を取り出して腱板に注入する治療法です。

注射のみで可能な為リスクも小さく、また腱板の再生も可能です。

手術よりも治りも経過も良いので、夏大会に間に合う可能性もあります」

「そんな夢みたいな治療法があるんですか!?」

「ただ保健が効かないので高いです」

「やります! やってください……!」

「落ち着くんだ火夏。未成年の君の一存で決めるのは難しい。まずは家でご両親に話してからだ」

「そうですな。親御さんとよく話し会われた方が宜しいかと。

取り敢えずは動かないように吊っておきましょう。

くれぐれも無理して動かさないように」

「……はい。ありがとうございました……」

お医者さんに右腕を三角巾で吊ってもらい診察室を出る。

受付を済ませて、ゆら先輩が呼んでくれたタクシーに乗り込んだ。

「あの……今日はありがとうございました。態々来て頂いて」

「気にしないでくれ。たまたま近くの観戦カフェで観ていたからね」

「それで、試合はどうなったか分かりますか?」

「……負けたよ。交代直後の立ち上がりを狙われて3失点。後続も打たれて4対0で敗北だ」

「やっぱり、ボクのせいで……!」

「火夏、それは華月が君のワンマンチームだと言っているような物だ。

エースの自覚を持つのは良い事だが、全てを自分の責任だと思い上がるのは感心しかねるな」

「はい、すみません……」

「まずは治療に専念する事だ。君の家族も仲間もファンも……そして私も、日向 火夏がまたマウンドに立つ姿を待っているんだから」

「はい、ありがとうございます……」

それから……両親と監督に説明して再生治療を敢行。

お金は掛かった筈だけど、両親は一も二もなく賛成してくれた。

配信でも怪我の経緯と治療法を発表した。

態々私の配信に来てくれる人達だから応援したり励ましてしてくれるけど、ひとたびネットの海に目を向ければ《期待外れ》だの《もう日向は終わり》だのと、言いたい放題に言われた。

そうして暫くは自宅療養。絶対安静ではあるけど、その分ビデオ研究に費やす。

最低限の運動はするけど、それでも日々汗を流してレベルアップしていく仲間に焦りや嫉妬が無いと言えば嘘になる。

だからかな……

「ん、ひぅ……あっ」

「気持ち良い? 由香は動かないでね」

「アヤ、ごめ……こんな、事…させて……っ!」

「謝らないで。私が勝手に襲ってるだけだから」

こんな風にアヤやゆら先輩、ネリアちゃんが日を改めながら代わる代わる慰めてくれる。

私の辛い気持ちを一時的にでも紛らわせる為に……

それに気持ち良くなって、ふわふわになった頭だと素直に弱音を吐く事が出来た。

胸に抱かれながら涙と一緒に不安と負の感情を吐き出す“儀式”に私は大分救われた。

治療を受けてリハビリを続けて2ヵ月。

新年を迎えて冷えた空気が澄み渡る中、私は走っていた。

投げる動作はまだ駄目だけど、走る事は許されたから。

だからひたすらに走り込み続けた。人生で一番走った期間だと断言出来る程に。

治療を初めて4ヶ月……卒業式を終えてゆら先輩がチームのホームである大阪に旅立った月。

遂に投球練習のお許しが出た。

と言ってもまだ万全じゃないから出来て軽いキャッチボールぐらい。

まだまだそれ以外の練習が中心な時期だ。

そして、6ヶ月目。

徐々に慣らしていったおかげで、ピッチングの格好は付くようになった。

まだまだ本来の出来とは程遠いけど、ここから徐々に取り戻し……そして以前よりもレベルアップさせなきゃいけない。

私ももう3年。最後の大会は夏に開催される。

時間は僅かしか残されていないけど、しっかりと万全を期す……!

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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