第9話 依存していたのは?
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第9話 依存していたのは?
本文
日曜を挟んだ月曜日。
金原との事があるので気は進まないが、だからといって休むのもな。
「委員長、おはよー」
「おはようございます」
「あら、天王寺さん。ご機嫌よう」
「おはよう愛花ちゃん」
「あ、はい。おはようございます」
今すれ違ったのは水城 海里と木ノ葉 芽衣。そして水城の取り巻き達だ。
恋達と同じ五行輪舞のメンバーだが、クラスが違うから私とはあまり絡みが無い。
木ノ葉は言わずもがな大人しい奴だが、水城も口調だけなら深窓のお嬢様なのにな……
内々で処理された、という噂なので詳しくは知らないが、先日も女ヤンキーをタイマンでしばいて舎弟にしたらしい。
「恐ろしいな……」
何でそんな奴と恋達は仲良く出来てるんだろうか。アレで身内には優しいのか?
「芽衣、私がいつ他人への挨拶を許可したのかしら?」
「あ、あ、ごめんね……!」
いや、そういう訳でもない、のか?
少なく木ノ葉に対しては威圧的というか高圧的ど。
「おはようございます」
「いいんちょ! おはよー!」
教室に入ると既に恋と金原は着席して何やら話をしていた。
……が、その恋はパッと顔を輝かせてブンブンと手振って挨拶。
過度に接するな……というのはもう諦めた方が良いのかもしれない。
いや、恋の性格というか素直さを考えるとプライベートでの私を黙ってくれているだけ上々と思った方が良いのかもな。
「……ふん」
対して金原は私に一瞥もしない。
ただ今日もピアスはバチバチなので、委員長としては言わない訳にもいかない。
「金原さん、ピアスは校則で禁止されています。そんなに沢山……」
「知らないわ。文句があるなら先生に言いなさい」
先生に言われても外さない癖に……
にしても相変わらずの冷めっぷりだ。
あの面の下に恋への激重感情を隠し持っているとは誰も思わないだろうな。
人の目(恋の目?)があるからか今は大人しくしている。
ずっとそうなら良いんだが……
「あいか! おはよっ!」
「おはようございます、土屋さん」
そして土屋も変わらずフレンドリーだ。
先生から雑用を任された際に積極的に手伝いを頼むようにしたら以前にも増して懐かれるようになった。
予想通り、仕事を頼まれるのは土屋にとって“大人っぽい”事みたいだな。
◇◇◇◇◇
「ちょっと良い?」
来た。
放課後、1人になった所に金原が声を掛けてきた。
ちょっと良い? なんて言っているが、絶対に逃がさないと言いたげな目だ。
「なんですか?」
「まずはその気持ち悪い猫被りを辞めなさい」
「この私も本当の私ですよ?」
「……ちっ、場所を変えるわよ」
金原は分かり易く苛立っているが、こうなる事は予想していたのか、予め人目に付かない場所を探しておいたらしい。
案内されて辿り付いたのは3階の空き教室。
なるほど、確かにここなら滅多に人は来ない。
「……で、話ってなんだよ?」
ここなら委員長モードじゃなくても平気だろう。
私としてはどっちでも良いけど、こっちの方が金原も多少は話しやすいだろうし。
「決まってるでしょう? 改めて言うわ。
これ以上恋に近付かないで。恋を穢さないで」
「それは恋が決める事だろ? って言うか、私は人に深い興味を持つ事を穢れてるとは思わない。
……確かに恋は危ういよ。あんな綺麗な顔してる癖にベタベタ触れてくるし無防備だ。
だから金原も今まで守ってきたんだろ?
でも、これからは守るんじゃなくて教えてやる時なんじゃないのか?」
「偉そうな口を……! アタシ達は生まれた時から一緒だったのよ! アタシがずっと恋を守ってきた!
馬鹿みたいに高い木の上に登った時も、知らないオッサンに着いていこうとした時も、猛犬注意の貼り紙を無視して犬に近付いた時も全部全部アタシが守ってきた!
それをただ一月も過ごしてないアンタにアタシ達の関係をとやかく言われる筋合いは無いわっ!」
金原はピアスを弄りながら、怒りを露にして私を睨み付ける。
「恋はそうやって金原から庇護される事に無意識にでも反発して……いや、違う……?」
途中まで言いかけて、だけど違和感に気付いた。
あの恋が分かり易く反発や反抗に走るだろうか?
そもそも出会った時、何で恋は1人で渋谷に行ったんだ?
「……五行輪舞」
「は? なに?」
「恋は……五行輪舞のリーダーとしての自覚が芽生えたから新規開拓の為に1人で動いていたんじゃないか?
だから金原の庇護を離れて独り立ちしようと……」
「そんな事……! 未だに寝坊して、課題を溜めて、人にベタベタ触れる恋が……っ!
恋はアタシが守るの! アタシが居ないと……!!」
金原は泣きそうな顔で左耳を握り締め、右手で私の胸ぐらを掴む。
「アンタさえ……アンタさえ居なければ!」
「涼音? 愛花……?」
「「……恋?」」
空き教室の出入口、開いたドアから現れたのは件の恋だった。
「むっ! 愛花を虐めないで!」
「わっ⁉︎」
「え……?」
金原の方が掴み掛かっていたからか、恋は私を庇うように抱き寄せる。
対し金原は信じられないものを見たような顔をしていた。
頭を抱えるように両耳を握り、ふらふらと私達の元に歩み寄る。
「れ、恋……なんでっ、なんでソイツなの⁉︎ なんでなんでなんで……っ」
「来ないでっ!」
恋は更に強く抱き締め、金原を睨む。
その目には明らかな拒絶の感情が宿っていた。
「こ、来ないでって……な、なんでよ? だってアタシ達は……」
「今の涼音は……嫌いっ!」
「……あ」
プツっと。
何かが切れたような、そんな音がした。
「あ」
目を見開いて。
「あぁ」
じわり、と目尻に涙を浮かべて。
「あ、あっ……ひぐっ……!」
よろめき、後ずさって。
「うっ、うぅ……! あ“ぁぁぁぁああっ!!」
そして、教室から走り去った。
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