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第16話 ロックじゃないか?

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/14 📚 シリーズ: 五色の音色に囚われて 📝 2,371文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

五色の音色に囚われて - 第16話 ロックじゃないか?

本文

「恋、私だ! 開けてくれ!」

走って走って、火口家に辿り着いて。

呼び鈴を鳴らしても、ドアをノックしても応答は無く、いよいよ不安になってきた所で大声で呼びかける。

「恋!」

けれどやっぱり反応が無い。

他の家族の人は居ないのか? だったら……

「使わせて貰うぞ!」

火口家の隣……金原家のドアに鍵を差し込む。

そしてそのままドアを押し開け、二階の涼音の部屋に駆け込んだ。

「開いてる……!」

涼音と、そして恋の部屋の窓が開いているのを確認して。

「れぇぇぇぇぇぇんっ!」

窓枠に足を掛けて、恋の部屋の窓に飛び込んだ。

幸い飛び込んだ先はベッドだったので怪我はしなかった。

「っ!? あ、愛花……?」

ただ、私と悲鳴とベッドに墜落したバフンッ! という音には流石に気付いたようだ。

こちらに背を向けて部屋の中央にヘタリ込んでいる恋が顔だけで振り向いた。

未だに涙は止まっていない。

「れ……」

それでも何か声を掛けようとして……恋の右手にT字カミソリが握られている事に気付いた。

「……⁉︎ なに、してんだっ!」

「!? いやっ……!」

「痛っ……」

「あ……っ」

思わずソレを掴んで。

恋が抵抗するように手を引いて……それで、切れた。

掌がパックリと開いて、血が流れ出す。

「あ、愛花……ごめ……っ」

「……馬鹿恋」

けれどそのおかげで頭が冷えた。

汚れてない左手で恋の涙を拭って、右手で恋の手からカミソリを取り上げる。

「っ、あ……っ」

「まったく……何してんだよ?」

「だ、だって……ボクが温室育ちの良い子ちゃんだからロックの魂が無いって……だから、もっと悪い子にならないとダメだって……」

「それにしたってな」

正直言ってその行動には呆れてるし怒ってもいる。

だけど、少しホッとしてるのも事実だ。

どれだけ悪い事をしようとしても、人に迷惑をかける方向に転ばなかった事。

自分で自分を傷付ける事をきちんと“悪い事”として認識している事に。

やっぱり恋には悪い事なんて似合わない。不真面目を勉強するぐらいで丁度良いんだ。

「ボク、もうどうすれば良いのか分かんないよぉ……っ

どうすればみんなの求めるロックを歌えるの?

どうすればみんなの抱える痛みを共有出来るの……っ」

「そんなの私にも分かんねーよ。でもな、自分で自分を傷付けてもソレは本物の痛みじゃない。

そんなもんで本当に痛い人の気持ちなんて分かんねーって」

「じゃあ、どうすれば……っ! それじゃあ人の心に響くロックを歌えないよ……」

「ロックって何なんだろうな」

「え……?」

「私は別に詳しくないし、あくまでニワカのイメージだけどさ。

ロックって反骨精神や現体制への反抗心を歌うって感じだろ?」

「うん……」

「でも今の恋は順序が逆になってる」

「逆……?」

「反抗心を表現したいからロックを歌うんじゃない。

ロックをやりたいから反抗しようとしてる」

「……うん」

「なんて言うんだろ……それは、ロックじゃない、と思う」

「でも……じゃあ、ボクはどうすれば……」

「今までと同じで良い。自分の想いを正直に表現すれば良い」

「それでロックになるの? 認めてもらえるの?」

「逆だよ。今の『世間への反抗を歌う事こそロック』って定説こそがもうテンプレ化した体制側なんだ。

それに真っ向から相反する事こそロックって言えるんじゃないか?」

「……あ」

「面白いじゃないか。恵まれたお嬢さん達が人の苦労も知らないで苦労人面してる大人達をぶっ倒すなんて最高にロックだと思うぞ」

「うん……っ」

「それにこれは個人的な意見だけど……恋の、五行輪舞の歌が好きだ。

良い子ちゃんで、非日時にワクワクして、ちょっと悪い事をした事への高揚感と罪悪感を表現するあの歌が。

それに、そう思ってるのは私だけじゃない。

あの日あの時、あの場に居た全員が【愛火】って曲に心を奪われた。

誰もが五行輪舞は最高のロックバンドだって思った」

「うん……うん……っ!」

「それでもまだ怖いとか不安だとか思うんなら……私の為に歌ってくれ。

世界中の人間が、ロックバンドの偉い奴が、例え神様が否定したとしても……私は味方だ。

たぶん、恋や五行輪舞の事世界で一番好きなのって私だからさ」

「愛花……愛花ぁぁぁぁぁっ……!」

「おっと……あぁ、一人でさめざめ泣くぐらいならこうやって思いっきり泣いた方が良い」

飛び掛かってきた恋を左腕で抱き留めて。

もう離さんとばかりに抱き付いてくるその背中をポンポンと叩く。

制服に色々付いたけど……まぁ些事だ。

「落ち着いたか?」

「うん……ありがとう」

「どういたしまして」

それから五分程して、ようやく恋が顔を上げた。

多少はスッキリしたようで私も一安心だ。

「あっ!?」

「!? な、なんだよ……!?」

「手……っ、ごめんね! 痛かったよね!?」

「ん? あぁ……」

そう言えば右手を切られてからそのままだったな。

今更になって痛みを自覚してきた。

「救急箱持ってくる!」

「え、大丈夫か?」

恋に適切な処置が出来るのかという不安もありつつ。

まぁ、仮に失敗しても死にはしないだろう。

「出来た!」

つ、疲れた……!

救急箱を持ってきた恋は、恐らく漫画等の知識なのか私の血を舐め取ろうとしてきた。

それを制止し、消毒液をつけさせ、軟膏を塗らせて。

そこからガーゼで傷を押さえ、包帯を巻き終えるまで結構な時間を要した。

「お疲れさん……」

「うん。ホントにごめんね……」

「良いって。不用意に掴んだ私が悪いんだ……ん?」

余裕が生まれて、涼音に事の顛末を報告しようとスマホを覗く。

そこには当の涼音からメッセージが届いていた。

「解決したら恋を海里の家に連れてこい……?」

「あ、もしかしてカイ暴れてるっぽい?」

「それっぽい事は言ってたな」

「じゃあ急がなきゃ! 愛花は……」

「一緒に行くよ。一応連れてこいってお達しだしな」

「分かった! ばっちりエスコートするよっ!」

また小っ恥ずかしい事をコイツは。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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