第18話 一夜明けて
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第18話 一夜明けて
本文
「おはよー委員長。昨日は大変だったねー?」
「おはようございます。おかげさまで回復しました」
翌朝の登校中。
土屋によって昨日の私は体調不良だったという事になった。
五行輪舞との関連を疑われているかは……分からない。
「恋、おはよ。大変だったねー」
「玲於奈ちゃんから連絡あったよ。ウチ等はちゃんと分かってるからね!」
そして恋の方も。
土屋は私の頼みを受けて、学校中に五行輪舞は清廉潔白である事を伝えてくれたらしい。
教室に入ると中の生徒が一斉に恋に殺到した。
「恋! 私は五行輪舞のロック最高だと思ってるよ!」
「土屋から電話来たよ。俺達ずっと応援してるからな!」
「わ、ありがとー!」
昨日吹っ切れた事もあって恋の表情も明るい。
……にしても不穏な空気が無さすぎないか?
多少なりとも疑いの視線は向けられると思ってたが……
「おはよ!」
土屋が教室に入ってきた。恋に勝るとも劣らない人数に話し掛けられている。
「昨日はありがとね。おかげでスッキリした」
「お姉ちゃんとこ行ったんだって? お疲れ様!」
……行った?
「あいかっ! おはよっ!」
「おはようございます、土屋さん。あの、少しお聞きしたい事が……」
「なに?」
「昨日どれだけの人に説明したんですか?」
「全員」
「……はい?」
「学校の人達全員。お昼休みに教室巡って一人一人に説明したし、放課後は残りの人に説明したわ!
部活とか間に合わなかった人には友達に電話番号を聞いて、それで連絡して回ったのよ!」
愛花からの頼みだもの! と小柄な身体を逸らしてフフーン! とドヤ顔。
そういう事か、と納得してしまった。
疑っていたり、疑問に思っていたとしても……ちっこい土屋がピョコピョコと歩きながら一人一人に説明して回ったのならコロリと落ちてしまうのも無理ない。
その上学校で会えなかった人には一人一人電話して回って……
「大丈夫でしたか? 色んな人に説明するの大変だったでしょう?」
「平気よ! 五行輪舞の為だもん!」
「……っ」
あぁ、なんて健気なんだろう。なんていじらしいんだろう。
眩しい程の笑顔で、苦労を苦労とも思わず……
「わっ、あいか?」
気付いたら、思わず土屋を抱き締めていた。
こんなの委員長な私らしくない。
でも、この衝動は抑えられなかった。
「ありがとう、土屋。土屋のおかげで助かった。土屋に頼んで良かった」
「ひゃう……っ!?」
人目のある所で素の口調で喋るのはリスクがあるけど。
それでも、素直に気持ちを伝えたかった。
……耳元で囁けば周りにバレないよな?
「あ、あいか……」
「ん?」
「れおな、頑張った? 大人っぽい?」
「あぁ、そんじょそこらの大人でも出来ない事をやってくれたよ」
「だったら……土屋じゃなくて玲於奈って呼んでほしい。ご褒美」
ご褒美を要求するのは子供っぽいと思うが……そもそも名前呼びがご褒美になるのか?
……まぁ、当人が望んでるのならいいか。
「分かったよ、玲於奈」
「!」
土屋……改め玲於奈を抱き締めながら耳元で囁いてやると、途端に身体がビクッと跳ねて固まった。
よく見れば顔も真っ赤だ。他の五行輪舞の連中じゃあ、こんなリアクションはしないだろうな。
「でも学校で委員長やってる時は土屋呼びで勘弁な?」
「え、えぇ! れおなはてぃーぴーおーを弁えているもの!」
良かった。後はこの状況をどう言い訳するかだけど……
「レオ〜!」
「ぷぎゅ!?」
「うわっ!?」
恋が、私と玲於奈を纏めて抱き締めてきた。
「なにするのよ!」
「ん〜、今日もレオは可愛いね〜!」
「子供扱いしないでってば!」
「だって可愛いんだも〜ん。委員長もそうでしょ?」
「えぇ、他の皆さんもよくハグをしているので思わず……」
これで誤魔化せた、か?
まぁ、女子に限っては玲於奈をハグするのは割と良くある行動だしな……
◇◇◇◇◇
『こんにちは。アマチュアバンドのライターをしているバン君です。
この度はファンの皆様、及び関係者各位にご迷惑を御掛けして誠に申し訳ございませんでした。
今回の動画にて事態の説明をさせて頂けたらと思います』
例の枕疑惑で絶賛炎上中のバン君。
五行輪舞も記事に取り上げた事から、恋達にも枕疑惑が上がって大層な面倒事を引き起こした……けど。
「バン君って女性だったのか……!?」
この動画で初めて素顔を晒し、性別が判明した。
バン君曰く、枕疑惑の上がった某バンドのヴォーカルとは女子校時代の同級生で“元カノ”であった事。
記事をキッカケに再び仲良くなったが、ソレをヴォーカルと“交際”しているベースが浮気と勘違いし、バン君を引き剝す為に枕営業の噂をでっち上げた……らしい。
一番の被害者であるバン君とヴォーカルはベースの行いを可愛い嫉妬と称して、決して怒っていない事。
ファンの人達にもどうか許してほしいと三人で頭を下げて動画は終了した。
そしてもう一つの元凶……五行輪舞のロックを否定して恋を追い詰めたSilver Kongのkoji。
こちらは他のメンバーにガチギレされ、ファンからも叩かれて大炎上。
Silver Kongのリーダーから直々に怒られて、バンドを追放された。
「これでもう大丈夫、なのかな?」
「あぁ。元々五行輪舞を知ってる奴はその凄さを知ってたんだからな」
「……うん」
これで恋の傷が少しでも癒えてくれれば良いんだが……
少なくとも、私の手を握る力は普段より少し控えめだった。
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