第19話 土屋 玲於奈
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第19話 土屋 玲於奈
本文
「愛花ー! 今日も眼鏡決まってるねー!」
「あいかっ! 数学教えてっ」
「今日のピアス、どう思う?」
「えっと……あはは」
笑うしかない。笑う事しか出来ない。
例の事件を通して、三人との距離が縮まった気がする。
有り体に行ってしまえば、好感度が上がった……みたいな?
恋は精神的に追い詰められてる所をどうにか落ち着かせて。
玲於奈は勢いのままハグして、そこから何故かご褒美として名前呼びにしてから分かり易く距離が近くなって。
涼音は……よく分からない。
元々は恋の恋敵(?)になる事で、恋の視線を自分に向けさせたいと。
だから恋が執着している私に気があるフリをして絡むのだと。
なのに以前より親しくなった感があるのは……その恋があの件から私により懐いたからソレに対抗して、なのか?
「委員長モテモテだねー」
「あはは……」
本当に笑うしかない。
クラスメイトとはいえ、真面目な委員長の私がキラキラしたロックバンドの恋達とこんなに仲良くしているのは……不思議な光景だと思う。
プライベートのチャラ女風の私がバレなければそれで良いんだけど、仲良くなった背景を探られるとちょっと面倒だな。
ただ、玲於奈とは以前から接点があったから誤魔化しきれる……か?
「あ、ねぇねぇあいか!」
「どうしましたか、土屋さん?」
「今日お家行って良い?」
「……え?」
何を言ってる?
流石に家に呼ぶのは相当仲良しってイメージなんだが……そこまで親密だと思われて周りから怪しまれないだろうか。
いやでも此処で突っ撥ねるのも委員長らしくない……んじゃないか?
そもそも、玲於奈が家に来る事自体は全く嫌じゃない。
何が目的かは分からないけど、勉強を教えてたと言えば周りも納得してくれるだろう。
「うーん……あんまり面白いものは無いですよ?」
「いいのっ」
「……分かりました。じゃあ放課後一緒に行きますか?」
「うんっ!」
さてどうなるか。
この無邪気で満面な笑みを向けられると警戒心なんて簡単に無くなってしまうのが逆に怖いな。
◇◇◇◇◇
「お邪魔しますっ!」
「あらあら、可愛いお友達ね」
母親からは好印象だ。
まぁ、私が友達を連れてくるなんて滅多に無いから嬉しいんだろう。
「……で、何がしたいんだ?」
「勉強……」
部屋に着いて、クッションに座らせて。
問い掛けたらおずおずとバッグから英語の教科書を取り出した。
「あぁ、それぐらいならお安い御用だ」
「やった!」
玲於奈はパッと弾けるように笑うと、クッションを動かして私に密着するように隣に座った。
「近いな」
「あ、やりにくい……?」
「いや、良いけどさ……」
玲於奈が動くとフワッと甘い匂いが漂う。
そして何だか温かい。
以前も思ったけど、子供体温って奴なのだろうか。
「どうかした?」
「いや……何処が分からないんだ?」
「ここ!」
玲於奈は教科書を開いて私の前に差し出した。
こうやって分からない事を分からないままにせずに学びに行こうとする姿勢には好感が持てる。
問題は、その示す範囲が丸々今日の授業でやった部分という事だな。
「授業は聞いてたんだよな?」
「だって先生はれおなが覚える前に先に進めちゃうし……すずね達は意地悪したり子供扱いするんだもの! あいかが一番分りやすいわ!」
「そうか」
「うんっ」
……まぁ、頼られるのに悪い気はしないな。
「出来たー!」
「お疲れさん」
勉強会から一時間。
範囲は今日の授業分だけなので割りと早く終わったな。
……他の分野は大丈夫なんだろうか?
「ね、ねぇあいかっ!」
「ん?」
何やら玲於奈が緊張した面持ちだ。
もしかしてこの後の話が本題だったのか?
授業内容が分からなかったのは事実だろうけど、それをダシにして1対1で話す機会を伺っていた?
玲於奈の癖に小癪な作戦を思い付いたもんだな。
「どうした?」
「……あ、あの」
玲於奈は言いづらそうにもじもじとしている。
そして、顔を赤く染めて……上目遣いで私を見て言った。
「れおなの事……嫌い……?」
「……へ?」
そういう、奴か……?
てっきり涼音や水城にテストで勝ってギャフンと言わせたいとか……その類の話かと思ってた。
「嫌いじゃない」
「じゃあ……好き?」
「好き……だな、うん」
「じゃあ……キス、出来る?」
「それは……」
確かに玲於奈は可愛いし、触れ合いたいって気持ちも無い訳じゃない。
でも、今の私がそれをしても単に欲望に任せた行動になってしまう。
「なんで出来ないの? れおなが子供っぽいから?」
「玲於奈……?」
不安からか玲於奈の瞳が揺れた。
珍しい……意地や見栄を張る時にテンパったりはするけど、こんな風に不安に駆られた表情をする事は無い。
……そもそも私の事をどう思っているのかも分からないし、諸々含めて話し合った方が良いな。
「なぁ、どうしたんだ? いきなりキスとか……何かあったのか?」
「だって……れんもすずねもあいかの事好きだもの。
れおなだと……あの二人には勝てないもん……っ!」
じわ、と玲於奈の目尻から涙が浮かんだ。
恋が私への好意を隠さなくなってきたのは自覚してる。
でも涼音は……どうなんだ? やっぱり恋の事が第一で、私の事はあくまで恋の視線誘導装置として使っている気がする。
取り敢えず玲於奈を落ち着かせようと、その小柄な身体を抱き締めて頭を撫でた。
「ふ、ぅ……っ」
「よしよし、大丈夫だからな」
「……あいかに嫌われたくない」
「玲於奈の事は好きだって言ったろ? キスは……好きだから真面目に向き合いたいんだ」
「ほんと……?」
私の胸に顔を埋めたまま、上目遣いに問い掛けてくる。
私だって我慢してるんだから心を掻き乱さないでくれよ……
「本当だ」
「……んん〜!」
頭をグリグリと押し付けてくる。
くそ、可愛いな……!
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