※ 第23話 破れかぶれ
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あらすじ
五色の音色に囚われて - ※ 第23話 破れかぶれ
本文
「っ、芽衣! 芽衣芽衣芽衣……!」
だけど水城はそう思わなかった……というより演技だと見抜けなかったらしい。
苛立たしげに髪を掻きむしり、その鬼気は一層強くなって行く。
「芽衣、嘘よね? それは出任せなのでしょう……?」
「……ごめんね」
「っ⁉︎ ああぁあぁああぁああぁ!」
「がふっ⁉︎」
「芽衣っ!」
木ノ葉が申し訳なさそうに謝ると水城の顔は見る見るうちに青褪めていき、叫び声を上げると同時にその足を木ノ葉の無防備な腹部に叩き込んだ。
「下僕の分際で……! また私を裏切るの!? また私を拒絶するのっ!?」
「う、げほっ……ごほ……!」
「止めろ! 芽衣には手を出すな!!」
「っ、お前……貴女に何が分かる!? 芽衣が、芽衣に何を吹き込んだ……!」
「お前には分からないさ。人を自分より下に置かないと安心出来ない。
芽衣でさえ下僕扱いする奴なんて見限られて当然だろ?」
「……っ!」
水城は怒りに満ちた目で私の胸ぐらを掴む。
怖い。めちゃくちゃ怖いし、殴られたらめちゃくちゃ痛いんだろうな。
睨み返したいけど、怯えが隠せていないのは自分でも分かる。
「……ぅ」
怖くて、喉が引き攣って、情けない声しか出なくて……
「ぐ、ううぅぅぅぅぅぅ……!」
でも、圧倒的優位な立場に居る水城の方がずっと苦しそうで。
「くっ……!」
水城は奥歯を噛み締めて私から手を離すと、壁際の棚からハサミを取り出して木ノ葉の元に向かった。
「おい、何するつもりだ!? やめろ……っ!」
「黙りなさい」
水城は木ノ葉の側にしゃがみ込み、ハサミを手首付近に近付けて……
ブツ、という音と共に木ノ葉の手首を縛る縄を切断した。
「後は自分でやりなさい。私に不満があるのならどうぞ、お好きな所へお行きなさいな」
そう言って乱暴にハサミを投げ捨てると、水城は私達に背を向けて部屋を出た。
……とても、哀しげな瞳で。
「んしょ、と……すぐに外すからね」
足の縄を切った木ノ葉が手慣れた様子で棚から鍵を取り出す。
その鍵を私を拘束する枷に差し込み、解錠した。
「変な事に巻き込んじゃってごめんね? 立てる?」
「え、うん……」
「良かった良かった。玄関まで送るね? この家広いから……よっと」
「うわっ!?」
手足の枷を外されて。
脇の下に手を差し込まれて、まるで幼い子供にするみたいにヒョイと持ち上げられて立たされた。
いくら体格差があるからってどんな馬鹿力だ。
「さ、行こ?」
「お、おう……」
そして差し出される手。
別に手なんて繋がなくたって……とも思ったけど、木ノ葉の何の疑いも無いぽやぽやした笑みに逆らうのは何となく気が引けた。
そっと手に触れると、私のより一回り大きい手の平が優しく包む。
……玲於奈がよく自分を子供扱いしてくると木ノ葉に御立腹だったが、その理由の一端が分かった気がした。
「改めてごめんね? 海里ちゃん、普段はあんな事しないんだけど……」
「どんな事?」
「誘拐して拘束して手籠めにしよう……って奴。
いつもはみんな同意の上でやってるからね?」
「あー、下僕だとか……そういう人達とは、その……してるんだ?」
「そうだねー。今回愛花ちゃんにあんな事するって知ってたら大人しく縛られたりはしなかったのにぃ……」
どよーんと分かり易く落ち込んでいる。木ノ葉も被害者側だと思うんだが……
「……分かってるよ。これでも学級委員長だから色々話は聞こえて来るんだ。
水城だって誰彼構わず喧嘩してる訳じゃない。
不良もそうだけど、格闘技経験者だって半分はヤンキーみたいな連中ばっかなんだろ?」
「それは……うん」
「やっぱり。まともな競技者はそもそもタイマンなんて受けないもんな。
それで、大人しい感じの子は水城に助けられた奴。
……誰にも慕われてない、なんて。そんな訳ないってのは私も分かってるんだ。
ただ、あの場を切り抜ける為にデタラメであっても水城のメンタルを攻撃するしかなくて……」
「うんうん、分かってるよ。今回のは100%海里ちゃんが悪いからねー」
「それに、水城の奴が五行輪舞の事を本気で大事に思ってる……って事も分かってる。
今回のだってソレ絡みなんだろうし」
「……なんで、そう思うの?」
「え、いや……言ってただろ? 私の事を五行輪舞のメンバーを三人も虜にしたとか何とか。
だから調査、というか私を管理下に置いて恋達を守ろうとしたんだ。
でも、他の奴等みたいにタイマンで倒して従わせる……って方法は取れなかった。
私が弱いから。水城にとって弱い奴は庇護対象で……決して傷付けられない存在だから。
だから、まぁ……えっちなアレコレで、うん。そういう事」
実際のところ、その試みは成功しかけていた。
あんなに顔が良くて、カリスマ性もあって……恋達と接して顔の良い女に慣れてなかったら陥落していたかもしれない。
「ふぅーん?」
「え、なんだよ?」
「いやぁ、愛花ちゃんてホントに良く見てるんだなって。
だから恋ちゃんや涼音ちゃんの心に寄り添う事が出来たのかな?」
「寄り添うとか大袈裟だな。私はただ……放っとけなかっただけだよ」
「ふふーん、そっかそっか」
「あぐあぐ」
頭を撫でられた。かなり強く撫でられた。
「……なぁ、木ノ葉」
「なぁに?」
「あの時、なんで私の言葉に乗ってくれたんだ?
助けて、なんて本当は微塵も思ってない癖に」
「愛花ちゃんと同じだよ。あの場で愛花ちゃんを助けるには海里ちゃんの心を乱すしかないって思ってたから」
「そのせいで思いっきり腹蹴られてたな……ごめん」
「腹筋に力入れてたから大丈夫っ!」
「でも海里を傷付けるのは本意じゃない筈だから……ごめん。私に償える事があれば言ってくれ」
「え、良いよ別にー」
「いや、流石に私を助ける為に傷付いた人に何もしないってのは……頼むよ、私に出来る事なら何でもするからさ」
「……なんでも?」
「……え」
「なんでもって、言ったよね?」
これは……提案する相手と内容を間違えたな?
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