第22話 水城 海里
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第22話 水城 海里
本文
「うふふふふふ……良い顔をなさいますわね。
希望がとっくに摘まれていた気分は如何かしら?」
「んん……っ」
水城が笑いながら縛られた木ノ葉を押し入れから引っ張り出す。
自分よりデカい奴を軽々と引き摺る辺り、やっぱりコイツのフィジカルは並大抵の物じゃない。
けど……それでも純粋な腕力なら木ノ葉の方が強い筈だ。
「なんで、木ノ葉がこんな簡単に捕まって……」
「別に不思議では無いでしょう? 芽衣とて数居る下僕の一人に過ぎない。
私が命令すれば喜んで両手を後ろに組んで大人しく縛られる……余程の事が無ければ私に服従する立場なのですよ」
「……この前の襲撃未遂は余程の事だったって事か」
「そうですわね。涼音を増援に呼んでまで止めに掛かるなんて……ま、過ぎた事はどうでも良いですわ。
今は、そう。貴女を如何に屈伏させるか……それが重要ですものね?」
「ひあぁ……っ!?」
今度は脚を……!?
腹部から胸よりは感覚的にはマシだけど、ストロークが長いし何より下腹部近くまで触られるのには本当に……っ!
「ふふ、可愛らしいですわね?」
「お、お前は取り巻き……下僕とやらともこんな事をしてるのか!?」
「えぇ、下僕とのスキンシップは欠かせませんもの。
大人しい子も、乱暴な子も、最後は私の手の内であられもなく……」
「こ、木ノ葉は……木ノ葉ともそういう事は……っ」
「……お生憎様。恥じらいも無ければ、敗北の末に屈伏した訳でも無し。
自らの意思で進んで服を脱ぎ、股を開く女は好みではありませんの」
……? なんだ、今の眼?
好みじゃないとは言っても、木ノ葉に対する悪意は見られない。
戸惑いとか、恐れとか……そんな感じだ。
「好みで言えば、そう。涼音ですわね。
あの冷めた目と態度。決して折れない恋への愛情。
ふふ、彼女を屈伏させられたら、さぞ気持ちが良いのでしょうね?
五行輪舞の仲間で無ければ手を出せたのに……」
そんな心理を悟らせない為か水城は再び蠱惑的な笑みを浮かべて手を伸ばし、私の顎をクイッと持ち上げた。
やり慣れた動作なんだろう。
それは余りにも様になっていて、それだけで私の心臓は早鐘を打ち出した。
「ふふ、だからこそ涼音すらをも虜にした天王寺さんに興味がありますの。
……いえ、此処に至っては名前でお呼びしましょうか。ねぇ、愛花?」
「ん……っ」
くそ、悔しいのに、屈辱なのに……悦んでしまっている自分が居る。
でも仕方ないだろ? 無自覚な恋や玲於奈と違って、水城は自分の顔の良さを理解していて、ソレを存分に使って墜としに掛かって来るんだから……っ!
「あ、はぁ……っ」
「もう諦めなさいな。最早愛花には逃げる術も抵抗する術も無し……今忠誠を誓えば、その身に飛びっ切りの快楽を刻み込んで差し上げますわ」
「……分かっ、た」
水城の言う通りだ。
もう他にやりようなんて、無い……
「えぅ……」
「まぁっ!」
犬の様に舌を垂らして、媚びる様に上目遣いで見上げる。
水城はそんな私の態度に可愛らしく驚いて……すぐにサディスティックな笑みに戻って私の舌を掴んだ。
「うぅ……」
「ふふ、上を向きなさい? ご褒美のキスをして差し上げますわ」
水城は私の舌から指を離すとまた顎を軽く持ち上げて、そのまま顔を近づけて来る。
今だ……!
タイミングを合わせて額を前に突き出す。所謂頭突きと言われる技。
「あら?」
「……っ!?」
けれど、私の額は水城の顔面には届かず……ぱちんと情けない音を立てて水城の手の平に阻まれた。
「なん、で……」
「ふふ、本当に屈伏した者はあんな目はしない物よ?
次は何をしてくれるのかしら? まだ悪足掻きを見せてくれるのかしら?」
「うぅ……っ」
本当に、万策尽きた。
手足を拘束され、唯一動かせる頭突きですら読まれていた。
「お、臆病者!」
「あら?」
だからもう、使える武器は口しかない。
それしか無い、正に悪足掻きだと分かってるから水城も余裕綽綽だ。
それでも……一矢報いる為にはデタラメでも何でも口を開き続けるしかない……!
「お前、友達居ないだろ! 独りで居るのは怖い癖に、対等の友達を作る勇気が無いんだ!
だから取り巻きを下僕と称して自分より下の立場に置いて管理したがってる!
そうすれば勝手に離れていかないから……信者じゃないと愛想を尽かされるって自分で分かってるんだろ!?」
「何を言い出すかと思えば……五行輪舞での活動を知らない訳では無いでしょうに」
「アイツ等は仲間だろ! しかも五行輪舞は木ノ葉に誘われて入った……仲間ですらも自分で得た物じゃない!
どうせ取り巻きの居る今の状況だって木ノ葉……いや、芽衣の助力あっての事だろ? お前は芽衣がいなきゃ独りぼっちなんだよ!」
「……黙りなさい。貴女に私と芽衣の何が分かると言うのかしら?」
水城は不快そうに眉を顰めて私の前髪を掴む。
正直怖いけど……この方向で間違ってないみたいだな。
「芽衣はお前より強いし優しいよな。お前と違って本当の意味で慕われてる。
このままじゃあ、芽衣もその内愛想を尽かすだろうな?」
「そんな訳無いでしょうっ! 芽衣、芽衣が私から離れる訳が……っ!」
水城は木ノ葉の元に歩み寄り咬ませていた猿轡を乱暴に外すと、その肩を掴んで前後に揺さぶった。
「芽衣! 貴女の主人は誰なのかハッキリ言ってやりなさい!」
「ぅ、こほこほ……はぁ……」
猿轡を外された木ノ葉は少し咳き込んで……私に潤んだ瞳を向ける。
「助けて、愛花ちゃん……っ」
「なっ……!?」
……え? なんで?
水城は驚愕の表情を浮かべているけど私だってビックリだ。
てっきり木ノ葉は望んでそういう関係に収まっていると思っていた。
あそこで水城を肯定してメンタル回復されたらどうしようかと思ってたけど……
いや、でも……あの「助けて」は演技だよな? 何となくだけどそう思う。
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