第8話 不運(?)な事故
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第8話 不運(?)な事故
本文
白音の配信者街道は“それなりに成功”と言えた。
成人でありながら135cmという個性。
そして体格相応に甘く、可愛らしい声。
マスクで顔は隠されているものの、素直で大きなリアクションで徐々に人気を博していった。
「ひぐっ……ユーネリちゃん死んじゃ嫌だよぉ……っ」
感情移入が激しく、壮大なストーリーのRPGや恋愛ゲームで感情そのままに喜び、時には号泣する姿が話題になった。
《シロちゃん、今日も可愛いね!》
「あ、ありがとうございます……っ」
そんな白音だが、やはりまだ緊張するらしい。
コメントに返事をして、少しすると深呼吸をしているのが見える。
ただ、このコメントとのやり取りもリハビリになっているようで、会話自体には前向きだ。
そんなある日。
この日はリスナーの要望でホラーゲームに挑戦した……が
「ぎゃぴぃぃぃぃ!? やだやだやだやだぁっ!?」
《凄い声w》
《可愛いね》
「ふえぇぇんっ!?」
ホラーに怯えて騒ぐ白音を、コメントが囃し立てる。
それでもコメントに励まされどうにかこうにか進んでいたが……
「……ぅ、ひぃ……っ!」
このゲーム最大の恐怖ポイント。
主人公の背後に立つ女幽霊が主人公の顔を覗き込んだ瞬間、遂に限界を越えてしまった。
「にゃぁぁぁぁっ!?」
《あ、シロちゃん!》
《落ちたw》
《草》
椅子から転げ落ち、コントローラーから手を離し主人公が女幽霊に殺される様をただ見ている事しか出来ず
「ふっ、ぐぅ……うえぇぇぇん……っ」
とうとう本格的に泣き出してしまった。
流石にマスクを脱いで涙を拭うような事はしなかったが……
「しーちゃんっ!」
別室で視聴していた黒羽が我慢出来ず、配信部屋に駆け込んだ。
「えっ? くーちゃん……?」
白音はまさかの黒羽乱入に涙を拭う事も忘れキョトンとしてしまう。
不運だったのは、この篠崎 黒羽という人物がかつて“大型美人投資家”としてインタビューを受けた経験があった事。
その際、美貌と実績、そして200cmという規格外の長身で話題になり多少なりとも知名度を持っていた事。
そして……部屋に飛び込んだ時に自作したしーちゃんグッズを身に付けていた事。
朝霧 白音の顔と名前がプリントされたTシャツ。
そして通常Ver.と過激Ver.がプリントされた等身大抱き枕を抱えていた。
「あ、あわわわわっ⁉︎」
「……あ」
パニックになりあわあわする白音。
対して黒羽は(元凶なのに)冷静に事態を把握して配信を閉じた。
「く、くーちゃん……」
「しーちゃん、ごめんなさい……泣いてるしーちゃんを見たら我慢出来なくて……」
「……うん、いいの。ありがとう。くーちゃんは何時もシロの事を助けてくれるもんね」
「しーちゃん……!」
「ぷぎゅっ⁉︎」
感極まった黒羽は白音は抱き上げる。
白音は完全に宙に浮いているが、その態勢はもはや慣れっこなのか特に気にする様子は見せず黒羽に問い掛けた。
「これからどうしよう……」
「様子を見るしかないわね。でもしーちゃんは可愛いからもっと人気が出るんじゃないかしら?」
「そうかなぁ……」
そんな出来事とやり取りから早三日。
件のアーカイブは非公開にしたが、やはりあの衝撃のシーンはネット上でかなりの話題になり、スクショや切り抜きが頻繁に投稿された。
《あのシャツや抱き枕の子がシロなんだよな?》
《素顔可愛くね?》
《マスクしない方が人気出るだろ》
《あの顔と声と身長で成人とか奇跡の存在》
白音に対する好意的な意見。
《出てきたデカいのって篠崎 黒羽だよな?》
《若くして投資で勝ちまくった成功者だ》
《あの身長ならスポーツやったらトップ立てるだろ》
《シロと同棲してんのかな?》
《身長差エグくない?》
黒羽に対する好意的な意見。
良くも悪くも知名度はそこそこ止まりだったので過剰なアンチは居らず、そこに対しては白音はホッとした。だが……
《あんなに可愛いんだからマスクしないで配信してほしいよな》
《つーか篠崎にも出てほしい。身長活かさないのは嘘だろ》
《シロは可愛い、篠崎は美人。つまり2人のコラボを希望》
《それな!》
「あわわ……」
どうやら素顔配信を期待しているファンが多いようで……しかも黒羽の出演を望む声も少なくない。
そんな声を目の当たりにし、白音は眉を下げる。
「……くーちゃん」
「なぁに?」
「どうしよう……」
そんな白音を黒羽は抱き寄せ、膝の上に乗せる。
「だから言ったでしょう? しーちゃんは世界で一番可愛いんだから顔出しでも大丈夫だって。
人気になり過ぎても嫌だけど」
「くーちゃんにも出てほしいって言われてるよ?」
「そうね……それも良いかもね」
「くーちゃんも配信するの?」
「他にする事も無いし……何よりしーちゃんが配信してる時、寂しかった。
私の存在も明るみになったし、ここで私からも発信してしーちゃんのパートナーは私だと釘を刺しておかないと」
「くーちゃん……」
その言葉に嬉しさを感じつつ、リスナーと喧嘩しやしないかとヒヤヒヤの白音だった。
◇◇◇◇◇
「皆さんこんばんは。シロチャンネルのシロです」
「パートナーのクロです。先日はお騒がせしてしまい申し訳ございませんでした」
「今日は今後についてお話させて頂きます。あ、悪い事では無いので安心してくださいっ」
「まず私達の関係ですが……幼馴染であり、今は愛し合うパートナーです」
「くーちゃん⁉︎ そこまで言うのは聞いてな……」
「だから、私のしーちゃんに不埒な目を送る輩には容赦しません」
「くーちゃん……」
いきなりの爆弾発言に白音は赤面しつつ慌ててつつ。
ただリスナーの方は先日の件で二人が親密な関係である事。
普段の白音の言動で、彼女一人では生きていけない=パートナーや保護者が居るというのは察していたので、そこまで荒れはしなかった。
流石に愛し合う関係、とまで明言された事には驚いていたが。
「あ、そ、それで! ご要望が多かったので、今後シロはマスク無しで配信を行いますっ!」
「私もチャンネルを立ち上げて配信者として活動を始めます。
しーちゃんと合同にしないのは、しーちゃんの顔が並ぶシロチャンネルに私という異物を極力混ぜたくないからです」
《強火過ぎる》
《シロガチ勢やん……》
《怖い》
その発言と圧にリスナーから大いに引かれながら……黒羽もまた配信者としての一歩を踏み出したのだった。
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