第11話 一歩前へ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第11話 一歩前へ
本文
「ん〜……」
白音は眠気眼を擦りながらスマホを手に取る。
「……え?」
なんの気なしに手に取ったスマホにお知らせの報告が届いていた。
『昨日はお疲れ様でした。またコラボ出来る日を楽しみにしています』
『お疲れ様です! 昨日めっちゃ楽しかったっす!
今後とも宜しくお願いします! いつかオフコラボとかしたいっすね!』
「わわわっ!? メッセージ来てる!? えっと……こちらこそ楽しかったです。
またコラボしたいですね……っと。えへへ……♪」
メッセージを返し終わった白音は興奮した様子でスマホを胸に抱く。
こうして家族以外の誰かとメッセージのやり取りをするのは初めてだった。
引き篭もりになってからは誰とも連絡は取っていなかった。
黒羽とすら心配を掛けたくないと連絡は取っていなかったのだから。
そして黒羽に再会し、同棲してからもスマホを使ったやり取りは殆どしていない。
何しろ一言名前を呼べば何処に居ようと飛んでくるのだ。
何かしらの盗聴器でも仕込んでいるのか、超人的な聴力をしているのか。
(くーちゃんならどっちも有り得るかなぁ……くーちゃんになら幾らでも聴かれても良いけど)
スマホを抱き締めながらベッドの上をゴロゴロと転がる白音。
「楽しかったなぁ……」
少し前までの自分なら想像すらしなかった。
自分からコラボがしたいと言い出すなど、以前の自分からしたら考えられない事だ。
しかし自分を好いてくれている黒羽やファンとの触れ合いで、多少は人に対して前向きになれた。
今は他人……あかみこや青藍に対して強い恐怖感は抱かない。
それどころか、昨夜のコラボは楽しかったしまたやりたいとも思っている。
「オフコラボ、かぁ……」
◇◇◇◇◇
「オフコラボ?」
「う、うん……」
その日の昼下がり。
黒羽の膝に座りながら、録画していた白音の大好きなエイモン(エイリアン・モンスター)のアニメを観終わった直後。
おずおずと切り出した白音に、黒羽は不思議そうに小首を傾げた。
「ちょっと前までだったら絶対にやらなかったんだけど……くーちゃんに再会してからはちょっとずつ変われて、その……」
「しーちゃん」
「う、うん……」
「私はしーちゃんがやりたい事なら応援するわ。
しーちゃんがしたい事、私に出来る事なら何でもする」
「くーちゃん……」
黒羽は白音を後ろから優しく抱き締めながら、その耳元で囁く。
「私はしーちゃんが大好き。しーちゃんの全てが好き。
だからしーちゃんのしたい事は全部させてあげたい」
「くー……んっ!?」
黒羽は白音の首すじに口付ける。
「ん、ちゅ……」
「ひゃぁぁ……くーちゃ……んんっ」
「でも、あかみこ達が良からぬ事を考えないように印は付けておかないとね?」
「別にこの後すぐって訳じゃないよぉ……」
「あら、そうなの? 話は何処まで進んでいるのかしら?」
「ま、まだ全然……あこみこさんがメッセージで『楽しかったね、オフコラボもやりたいねって』って言ってくれて、それで興味が湧いただけで……」
「具体的な事は何も決まっていない、と。そうねぇ……」
「しーちゃん?」
意識的か無意識か、黒羽は白音のお腹を優しく撫でながら考える。
「くーちゃん、くすぐったいよぉ……」
「ふむ……家でやる?」
「え? い、良いの……?」
このタワマンの最上階……ペントハウスというらしいこのフロアは黒羽が『しーちゃんとの愛の巣よ!』と大金をはたいて買った場所で、未だに人を呼んだ事はない。
黒羽の強い独占欲からするに、この家に他人を入れるのは嫌がると思っていた。
「スタジオを借りて撮影するのも有りだけど、しーちゃんを慣れない環境に長時間居させるのもね。
それに撮影が終わったらすぐに休めさせられるし。
昨夜のコラボも途中からお眠だったものね?」
「あぅ、ごめんなさい……」
「良いのよ。さっさと炎牙を出さなかったフレイムドラゴンが悪いんだもの」
「主張が強いよぉ……」
「ふふ、ともあれオフコラボしたいなら私の方で話を進めておくわ」
「ありがとう!」
自分から言い出した事ではあるが、こう言った相談事は黒羽の方が適任だろう、と白音は思った。
そもそも此処の家主ではあるし、一人で外に出られない白音と違い、僅かではあっても仕事で外出する事のある黒羽がスケジュールを組んだ方が絶対に良い。
「何か希望はある? やりたい企画とかゲームとか」
「え? うーん……4人で遊ぶゲームは他にもやりたいけど、企画は……分かんない」
「ふぅん……まぁ、そこは適当に考えておくわ。
しーちゃんの可愛さが伝わる企画を考えないと」
「贔屓は駄目だよ?」
「しーちゃんが世界で一番可愛いのは絶対的な真実だし、可愛さを伝えるのは義務だもの」
「うぅ……」
毎度の事ではあるが黒羽の無尽蔵な愛に、白音としては赤面するしかない。
幼少の頃からそれは変わらず、多少は慣れてきたが時折黒羽が危なっかしく感じる事がある。
自身の配信の時も決まって『しーちゃんの偉大さを讃えなさい』と言うし、リスナーがゲームの登場キャラを可愛いと言うと、『しーちゃんの方が可愛いわ』と反論する始末だ。
最近ではリスナーも学んで上手くコントロールしているが、黒羽のその狂愛がいつか暴走しやしないかと気が気じゃなかった。
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