第13話 羨望
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第13話 羨望
本文
「そろそろ夕ご飯! 今日のメニューはハンバーグっす! 見てください、プロ級っすよ!」
朱莉はカメラを調理中のクロに向ける。
許可は取っているが、邪魔はするなと言われているのでクロ本人に直接声はかけない。
「これはもうプロ越えてるかも! 食べちゃうのがもったいないくらいっすね!」
「出来たから運びなさい」
「はい」
青藍がハンバーグや付け合わせが乗ったプレートを運んでいく。
シロは(普段かららしいが)大人しく椅子に座って待っている。
「頂きます」
「「「頂きます!」」」
クロが手を合わせ、他の3人も追従。
「切るわね。ふー、ふー……はい、あーん」
「あーん」
クロがハンバーグを切り分け、冷ましてシロに食べさせている。
シロも何の疑いもなく受け入れている辺りこれが二人の日常なのだろう、と朱莉は思った。
(顔の良い女同士のカップルチャンネルも需要あるんかねぇ……別にこの二人はカップルチャンネルじゃねーけど)
◇◇◇◇◇
「ではでは! これからシロクロ邸のお風呂を体験しちゃいまーっす!」
水着に着替えた朱莉はカメラで自撮りしながらポーズを決める。
「BANされませんか?」
「これは自分のチャンネルで上げるんで被害受けるのはウチだけっすから」
「なら良いですけど……」
「んじゃ、お邪魔しまーす!」
ガラッと浴室の扉を開ける。
浴室だけで自分の部屋がスッポリ入るであろう広さ。
浴槽だって広く、階段と手摺りまで付いていてまるでプールだ。
「すっご……」
朱莉は呆気に取られて言葉を失い……しかしすぐに頭を振って正気を取り戻す。
「ではでは、身体洗ってからお風呂に入りまーす」
そこで一旦カメラの電源を切り洗髪・洗体。
それを終えると、再度カメラの電源を入れて浴槽に向かう。
「うひゃーすげー! じゃ、入っていきます!」
短い階段から浴槽に入ると、朱莉はバシャバシャとお湯を搔き回してからゆっくりと浸かる。
「あー……さいっこう」
自分が収まるようにカメラを置いて暫しその温かさと足を伸ばせる快適さに浸る。
「マジで、すげぇなぁ……」
何度感嘆しただろうか。
しかし、それが収まらない程に自分とシロクロコンビとは差があるのだ。
「良いなぁ、羨ましいなぁ……」
羨望が止まらない。
「なんで、ウチとこんなに差があるのかなぁ……」
朱莉は浴槽に頭を乗せて天井を眺めた。
この家はクロが投資で得た収入で買い取った物であり、ライバーとしての実力とは無関係である事は分かっている。
ただそれでも……ライバーとしても水を大きく開けられているのも事実だ。
「企画は絶対ウチの方が面白い。
トークスキルもウチの方がある。なのに、なんで……
顔か? 顔なのか? 超絶美女と超絶美少女(シロも成人してるけど)だからなのか?
いやでも、顔なら青藍も美形だしな……」
朱莉は昼間に行ったツイスターゲームでのハプニングが脳裏に過ぎった。
カメラの手前誤魔化したが、あの時確かにお互いの唇は触れ合った。
澄んだ瞳、長い睫毛、形の良い唇。
同性でも見惚れるような美貌とはこの事か。
「……いや。いやいやいやいや! 何考えてんだ!」
パシャッ、と顔を湯船に沈めて無理矢理冷静さを取り戻す。
「……ぷはっ! ふぅ……落ち着け私。
シロもクロも青藍もあくまで同業者で、同じパイを食い合うライバルだ。
利用して、踏み台にして、成り上がるんだ……!」
朱莉はふぅ〜〜〜……と一際長く息を吐き……
「愚痴とか諸々とか、カットだなこりゃ……」
自嘲気味に笑った。
◇◇◇◇◇
「お風呂頂きましたー」
「お帰りなさい。今しーちゃんの歯を磨いてるから青藍入ってちょうだい」
「ではお先に失礼します」
クロはシロを膝に載せながら、歯ブラシで優しくシロの歯を磨いていた。
「はい、あーん」
「あー……」
シロは言われるがまま口を開ける。
綺麗に整った歯並びと柔らかそうな舌が覗く。
「はい、ぐちゅぐちゅぺってして」
「ぺっ」
「上手よしーちゃん!」
やってんなぁ……というのが朱莉の感想だった。
幾ら何でも子供すぎやしないかとも思うが、恐らくシロも実際はそこまで子供ではないのだろう。
ただ、そう。クロが自分に依存するシロを求めていて、シロの方もまた依存出来る存在を求めていた。
だからこの二人は、これが正解なのだろうと思う。
「お風呂、頂きました」
「じゃあ、行きましょうか」
「うん!」
そして当然の様に二人して浴室に消えて行った。
◇◇◇◇◇
「飲酒お便りコーナー! いえーい!」
パチパチパチ、とクロ以外の三人で控えめな拍手。
あの後、トランプやパーティーゲームを経て飲酒質問コーナー。
シロだけはリンゴジュースだが他の三人は酒を片手に持っている。
飲酒である理由はその方がクロと青藍の口が軽くなると思ったから。
生配信ではなく動画なのはクロが何をしでかすか分からないから。
下手したら酔った勢いでシロを襲いかねない。
「まったく、本来ならしーちゃんムービーを見ながらワインを飲んでる時間なのだけれど」
「しーちゃんムービー、とは?」
「しーちゃんの可愛さを収めたムービー集よ。見たい?」
「動画に載せて大丈夫な奴っすか?」
「①と⑥なら平気よ」
「どんだけアカン姿撮ってるんすか」
「別に盗撮や隠し撮りはしてないわ」
「同意の上で……?」
「あぅ……」
朱莉がチラッと目を向けると、シロは顔を真っ赤にして俯いた。
(生配信じゃなくてマジで良かった……!)
人知れず胸を撫で下ろす朱莉だった。
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