第16話 クロス・カラーズ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第16話 クロス・カラーズ
本文
あのオフコラボから黒羽達を取り巻く環境は大きく変わった。
まずそもそもとして、あのオフコラボ動画がバズった。
人生の成功者としての黒羽。
白音を甘やかし、可愛がる姿。
そして特徴的な200cmの長身。
普段はゲーム配信で座っている姿勢で映る事が殆どだが、オフコラボで他者と並ぶとよりその大きさが際立った。
それにより少なかったあかみこと青藍の登録者数が伸び、一端と呼べるレベルにまで成長した。
また、黒羽と白音の心境や活動にも変化が起こった。
それまで二人きりの世界で完結していた両者だがクロス・カラーズのチーム名も決まり、あかみこと青藍にも関心を向ける様になった。
黒羽の中では白音が一番である事に変わりは無いが、それでも自分と家族の下に置くぐらいには買っている。
白音の方も、あの二人とは電話やメッセージでやり取りするぐらいには心を許していた。
「くーちゃん……」
「どうしたの、しーちゃん?」
白音がおずおずとスマホの画面を向けてくる。
それは青藍とのメッセージ。
内容は、是非ともシロさんの歌が聞きたいです。歌動画に挑戦してみませんか? という物。
白音の性格を考慮してか、怖いならクロさんやあかみこさんも呼んで四人で録りましょう、とも付け加えられている。
「やりたいの?」
「う、うん……」
「そう……」
黒羽は別に不思議には思わなかった。
世界一可愛いしーちゃんは当然声も世界一可愛いので歌もきっと世界一になるだろうから、歌は当然選択肢に入る……と、思っていたから。
そして、やりたい事があるのなら。
自分が付き添う事でそれに挑戦出来るのなら、黒羽にそれを断る理由は無かった。
「わかった。やりましょうか」
「くーちゃん……ありがとう!」
嬉しそうに笑う白音。
黒羽はそんな白音を膝の上に乗せ、優しく頭を撫でるのだった。
◇◇◇◇◇
「あーあーあーあーあー……はい」
「あーあーあーあーあー……」
「はい、バッチリです」
「ふへぇ……」
青藍からお墨付きを貰い、白音がホッと息を吐く。
企画が決まってから、白音は電話越しではあるが青藍からボイストレーニングを受けていた。
肺活量は少なく音域も狭いが、やはり甘く可愛らしい声は天性の物。
また歌詞を読み込み、ストーリーを理解し、感情を込める技術は他の三人よりも上だった。
自分の長所をベタ誉めされ、不安に感じる部分も練習しお墨付きを貰い自信を付け始めた白音は、遂に撮影当日を迎えた。
「では、私から撮りますね」
「は、はい……!」
黒羽も門外漢なので知らなかったが、複数人で歌動画を作る際はそれぞれ別撮りが基本らしい。
そして言い出しっぺという事で最初の一人は青藍が担当し、以降は青藍に合わせて歌っていく事になる。
「ふわぁ……青藍さん、かっこいい……」
(上手いわね……)
青藍の歌声は素人である黒羽の耳にさえとても美しく聞こえた。
「お疲れでした」
「ありがとうございました」
スタッフに労われながら青藍がレコーディングブースから出てきた。
白音と目が合った青藍は優しく微笑み、その背中に手を添えて促す。
「さぁ、次はシロさんの番ですよ」
「は、はいっ!」
白音は緊張した面持ちでブースに入る。
最初に歌うのは発案者かつ歌唱力の高い青藍である事は決まっていた。
問題は白音の順番。
何度か黒羽と青藍で話し合ったが、後になる程プレッシャーを感じるだろうという事で二番手。
一方、黒羽は緊張などしないと思われたのか最後になった。
「しーちゃん素敵……」
黒羽はうっとりした表情で聞き惚れる。
例え音声のみであっても、真剣に、そして一所懸命に歌うその姿がありありと浮かぶだろう。
歌に入り込みすぎたのか、後半では涙ぐんでいたが。
「うっ……ひぐっ……ごめ、なさ……っ!」
「謝らないで。とっても素敵な歌だったわ」
「でも最後鼻声になっちゃったぁ……っ」
「それだけ強い想いが込められていたのよ。素敵だったわ」
「その感情移入も込みでシロさんにお願いした訳ですから、オーダー通りですよ」
「くーちゃん、青藍さん……っ」
黒羽は涙ぐむ白音を優しく抱き上げて背中を摩り、青藍もまたその頭を優しく撫でる。
「……さってと、んじゃあお姉さんが一発かましてくるぜ!」
そんな空気を吹き飛ばすようにあかみこが立ち上がり、録音ブースへ入っていく。
以前使っていた『○○っすよ』という口調は彼女なりにへり下った結果だそうだが、関係性が深くなり気安くなった今では本来のフランクな口調に戻っている。
「あら、意外と上手いわね。しーちゃん程じゃないけど」
「カラオケで歌い慣れてるみたいですから」
「ありがとうございましたー!」
そう言ってあかみこがブースから出て来る。
彼女も多少は緊張していたようで、歌い切れば安堵や自信といった笑みで溢れていた。
そして……
「次は私の番ね」
「くーちゃん、頑張ってねっ」
「えぇ。しーちゃんに相応しい出来に仕上げてくるわ」
白音を椅子に降ろし、額にキスを落としてブースに入る。
「……えっ」
「凄ぇ……」
声量も、歌唱力も、そして表現力も。
全てが高水準で纏まったその歌声は青藍やあかみこ、スタッフの度肝を抜いた。
(しーちゃんへのラブソングを歌い続けた事がこんな所で役に立つなんてね……)
小学校卒業と同時に白音と別れ、再開するまでの10年間。
愛の行き場を発散させようと白音へのラブソングを歌い続けた。
バイトが出来るようになるとギターを買って作曲も始めた。
白音と再開してからは作り貯めていたラブソングを披露する事も多々あり……つまりは歌唱の経験値はべらぼうに高かったのだ。
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