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第19話 世界の壁

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/17 📚 シリーズ: 200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! 📝 2,519文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第19話 世界の壁

本文

黒羽は深く深呼吸した。

(威圧感が鎌瀬の比じゃないわね……)

対戦相手は後藤 尚隆……5年前にチャンピオンの座を掴み取ったキックボクサー。

体重は黒羽より10kg軽く、年齢的にも下降線だがネームバリューは抜群。

ライバーのクロの相手としてはこれ以上ないぐらい適任と言えた。

レフェリーが二人に反則事項を説明し、ファイティングポーズを取らせ……

「レディ、ファイッ!」

ゴングが鳴らされた。

「ふっ!」

先ずは鎌瀬の時と同じくカーフキックを放つが、これはカットされる。

(駄目ね……」

カーフキックは決まれば効果は高いが、的確にカットされてしまえば寧ろ蹴った側が大きなダメージを受ける。

そして、後藤はそれが出来る相手だった。

「シュッ!」

「……」

対する後藤もカーフキックを放つも黒羽もカット。

落ち着きなさい、と黒羽は自分を叱責する。

リーチでは勝っているのだから、距離を保ちアウトレンジから攻めるという鉄則を守ればいい。

ローキックやジャブで牽制しつつ、後藤の出方を伺うが……

「シッ!」

「っ!」

後藤はローキックをガードすると、そのまま前蹴りを繰り出してきた。

(この人……)

黒羽は腹部に鋭い一撃を受けながらも距離を取り、再びローキックとジャブで牽制する。

だが後藤もそれでは不利と思ったのか、被弾覚悟で接近しインファイトを仕掛けてきた。

「あ……っ」

黒羽の長い腕を掻い潜り、後藤は彼女の懐に潜り込む。

そして黒羽の腹部に右ボディストレートを叩き込んだ。

「が……はっ……!?」

痛みに表情を歪ませ、後退する黒羽。

後藤は更に追撃すべく距離を詰めていく。

黒羽は迎撃しようと右ストレートを放ち……

『ダウーーーン! 後藤、完璧なカウンターが決まりましたっ!

2メートルの長身が地に落ちたーーー!』

「……ぁ」

右ストレートを空振りした挙句、後藤の放った右フックが黒羽の顔面を捉えた。

黒羽は脳を揺さぶられた事で平衡感覚を失い、そのまま崩れ落ちる。

「1……2……」

「うぅ……」

立たなきゃ……と黒羽は立ち上がろうとするが上手く行かない。

レフェリーがカウントを取り始めた。

「3……4……」

「っ……」

悲鳴、歓声、野次、カウント……様々な雑音が頭に響き、黒羽の視界を歪ませる。

「くーちゃんっ!」

そんな音の氾濫に、その声だけはハッキリと聞こえた。

「……っ!」

『おぉっと立ち上がったぁっ! クロ選手、立ち上がったぞ!』

黒羽はレフェリーのカウントを遮るように立ち上がり、ファイティングポーズを取った。

レフェリーが試合再開を宣言し、会場は再度歓声に包まれる。

(私は何をしているのかしら……)

黒羽は情けない、と自分を叱咤する。

何故強くなろうとしたのか……始まりは単純に白音を守る為だ。

そして白音と接して、白音の可愛さを理解してからは……仮想敵は世界となった。

世界一可愛いしーちゃんはきっと世界中から狙われる。

だから自分も世界を相手に戦えるぐらい強くならねば、と。

少なくとも黒羽は本気でそう思ってきたし、その為の鍛錬も欠かした事は無かった。

『クロ、ローをまともに食らったぁ!』

「くーちゃんっ!」

(痛くないわ。しーちゃんが見てくれてるもの)

『今度はボディー! 強烈っ!』

「くーちゃん……っ」

(苦しくないわ。しーちゃんが応援してくれているもの)

「だから……!」

「ぐっ!?」

『あぁーっと、後藤のストレートに合わせてカウンターのテンカオが決まったぁ! 後藤、思わず顔を歪ませる!』

相手と組まずに繰り出す膝蹴り……ムエタイの技、テンカオ。

その鋭い膝が後藤の脇腹を襲い、彼は思わず目を見開いた。

不用意に踏み込めなくなった後藤は左右に動いて隙を伺う、が。

「ふっ……!」

「が……っ!?」

黒羽は後藤のステップに合わせてローキックを放つ。

黒羽の長い脚なら届く距離だ。

踏み込みも、左右の動きも封じ、チェスのように一手ずつ追い詰めていく。

「はっ!」

『おぉー! クロ選手のワン・ツーが決まる! 後藤が揺らいだぁ!!』

チャンス……! と黒羽は更に距離を詰める。

ストレートはガードで防がれるも、踏ん張りの効かなくなった後藤はロープまで押し飛ばされる。

(ここで決める……!)

ロープまで追い詰めて、ガードごと吹き飛ばせるハイキックを出そうとした。

しかし、本能が危険を察知した。

このハイキックは当たらない、と。

だから、黒羽の身体は理性で理解する前に動いた。

「ふっ……!」

軸足を鋭く回転させ、腰を大きく捻る。

蹴り足が弧を描くように鋭く振り抜かれ、黒羽の右脚が風を切り裂き、後藤の脇腹に突き刺さった。

『あぁーっと何とここで後ろ回し蹴りが炸裂ぅ! 後藤思わずダウン!!』

「ぐ……がぁ……」

カウントが進む中後藤は鬼の形相で立ち上がろうとするが……

『あぁーっとタオル! セコンドからタオルが投げ込まれましたぁ!

1ラウンド2分15秒、クロ選手のKO勝利!

まさかまさか! 女性ライバーが元世界チャンピオンに勝利しましたっ!』

「クロ!」

「クロさん!」

セコンドを務めたあかみこと青藍がリングに駆け上がり、黒羽を抱きしめた。

歓喜の、驚愕の、興奮の叫びが会場中に飛び交う。

共通しているのは一様に喜の感情を爆発させている事だ。

「くーちゃん……」

ただ一人、泣きそうな表情の白音を除いて。

「しーちゃん……」

黒羽は白音を抱き締め、ポンポンと背中を叩いて宥める。

「放送席放送席、勝利者インタビューです! クロ選手、おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

その最中に黒羽はマイクを向けられ、至って平静に答えた。

「今のお気持ちはどうでしょう?」

「……ずっと、皆さんに伝えたい事がありました」

黒羽は満足したように微笑みながら、抱き締めていた白音の両脇に手を通して高く掲げた。

「全国の節穴共! しーちゃんの可愛さを理解しなさい! 目に焼き付けなさい! 心に刻み付けなさい!!」

「……ほぇ?」

つまりは、こうだ。

世界で一番可愛いしーちゃんを全国ネットで自慢する。

要するに黒羽は白音が好き過ぎるあまり、全世界に自分の嫁を見せびらかしたかったのだ。

赤面し茹で蛸になる白音に気付かず、スタッフに引き摺られるまで延々と白音への愛を叫び続ける黒羽。

このシーンは『風神』始まって以来最大級の放送事故とネットで語り継がれる事となった。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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