第22話 過去の残滓
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
200cmのくーちゃんと135cmのしーちゃん、配信者デビュー! - 第22話 過去の残滓
本文
「しーちゃん!」
「シロさん……!?」
「どうしたっ!?」
錯乱したシロの元に青藍達が駆け寄る。
クロが抱き締めると、その小さな手で必死にクロの服を掴んだ。
「ハァッ、ハァッ……くーちゃん……っ!」
「大丈夫、私は此処に居るわ」
「何かありましたか?」
「あ、その……」
周囲が騒つき、スタッフが駆け寄ってきた。
青藍は受け答えこそしたが、突然の事に思考がフリーズしていた。
「取り敢えずクロはシロを医務室へ連れてってくれ。試合の事は気にすんな」
「分かったわ……ありがとう。さぁ、行きましょうしーちゃん」
クロがそのままシロを抱っこし、医務室へと向かった。
あかみこはスタッフと幾つか言葉を交わすと、今度は柵の向こう側で不安そうな来場者達に言葉をかける。
「ご来場の皆様、大変お騒がせ致しました!
シロの奴緊張しすぎたみたいで……そんな深刻なもんでも無いので安心してくださーい!」
あかみこの言葉に来場者は徐々に落ち着きを取り戻す。
未だに心配そうな人は居るが、今はあかみこの言葉を信じるしか無いのも事実だ。
「どうするんですか? 棄権します?」
「いや、やる。棄権なんてしたらシロが自分を責めるだろうし」
「二人だけでは大した結果は出せませんよ? 返ってあかみこさんの印象が悪くなるかも……」
「そん時はそん時だ。作戦会議するぞ」
「……はい」
◇◇◇◇◇
「ハッ、ハッ、ハッ……!」
青藍とあかみこは廊下を走る。
結果としては早期に敗退。
2対4の状況で撃ち勝ち(相手が初心者の芸人チームだったのが幸いした)見せ場は作ったが、その後にプロチームと接敵し敗北。
挨拶もそこそこにインタビューを切り上げ、医務室に急行した。
「シロッ!」
「シロさん!」
「静かにしなさい。しーちゃんがビックリしてしまったじゃない」
「ごべんなざいっ!」
「軽率でした……!」
勢い良く扉を開けて、それでクロに説教混じりに首を絞められつつ。
ベッドの上でジュースを飲んでいるシロにホッとした二人だった。
「それで、何があったんですか?」
「分からないの。落ち着いたのがついさっきだったから……しーちゃん、話せる?」
「う、うん……」
シロはジュースを机に置き、クロに手を握られながらポツポツと話し始めた。
「シロを、いじめてた人の声がしたの……」
「え……!?」
シロの過去は本人の配信でも度々触れられていたので、青藍とあかみこもある程度は把握していた。
クロが小学校卒業と同時に引っ越し……中学で守る者が居なくなった途端にいじめられる様になった、と。
再開の約束として贈りあったペンダントを壊されたのをキッカケに不登校・引き篭もりになったと。
「八木が? 奴は借金まみれでこんな所に来る余裕は無い筈だけど……」
「違う……聞こえたのは八木さんじゃなくてもう一人の方……」
「もう一人……? 他にもしーちゃんを虐めていた輩が居たの!?」
「……久留島さん」
「久留島? あの子が……?」
「クロさんはその久留島という人に虐めのイメージはないんですか?」
「えぇ……八木はしーちゃんの可愛さに嫉妬して虐めてたけど、久留島はそんな素振りは無かった。
文武両道で、人当たりも良かったわ」
「久留島さんは……くーちゃんに憧れてたの。
くーちゃんが居る間は良い子だったけど、居なくなったらシロに言ってきたの。
貴女に黒羽様の隣は相応しくない。弱く、愚かな貴女に黒羽様の御寵愛を賜る資格は無いって……
黒羽様に仕え、お支えするのは私にこそ相応しいって……っ!」
「ずっと、人格否定されてきたんだな……」
あかみこが悲痛な面持ちでシロの頭を撫でた。
そういえば、と青藍は思い出した。
あかみこも故郷では常に軽んじられ、存在を否定されていたと。
だからこそシロが受けた痛みに多少なりとも共感したのだろう。
「その、久留島が観客席に居た、と……」
「あ、何処から聞こえたかはハッキリしなくて……」
「こんなに心が乱されるなら何かしら対策を講じないと……」
「失礼します。スタッフの者です」
「あ、はーい!」
どうしたものかと思案していると、コンコンとノックが鳴らされる。
あかみこが返事をすると、スタッフの女性が入室してきた。
「お身体の具合は如何ですか?」
「あぁ、それならおかげ様で……」
「ひ……っ!?」
スタッフの女性が入室した瞬間、シロが怯え始めた。
青藍とあかみこは初対面だったが、シロの反応を見れば彼女の正体は察せられた。
「久留島……!」
それがクロなら尚の事だ。
「待っ……!?」
あかみこが気付いて静止に入るも、獣の如き瞬発力に追い着ける訳も無く……その拳が久留島の顔面を捉え、彼女は壁に叩きつけられた。
「馬鹿止めろ!」
「いけません……!」
もしこの暴力沙汰を告発されればクロはタダでは済まないし、そうなればシロも心に傷を負ってしまうだろう。
「ふふ、うふふふふふふふふ……っ♡」
しかし、当の久留島は自分を抱き締めながら身体をくねらせ、恍惚の表情を浮かべているではないか。
「久留島、さん……?」
「あぁ……っ♡ 黒羽様……っ! この様な下賤な女に愛を与えてくださるなんて……♡
ですが、えぇ、分かっております。それが怒りによる行為であると。
その怒りの原因は正しくこの私にあるのだと。
ですがどうか今は私の話を聞いて頂きたいのです。
私への処分は後ほど如何様にも受けますので……」
怖い……それがこの久留島という女性に抱いた青藍の印象だった。
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