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第百四十七話:開幕! 王立学園大運動会

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百四十七話:開幕! 王立学園大運動会

本文

「王立・竜の子学園、第一回防衛演習(大運動会)! これより開会を宣言しますッ!!」

 生徒会長シリウスの号令が、晴れ渡った青空に響き渡った。

 ファンファーレと共に、色とりどりの魔法花火が打ち上がる。

 学園の巨大な演習グラウンドには、生徒たちが紅白に分かれて整列していた。

 そして、それを取り囲む観客席には、国賓級のVIPたちが「保護者」として集結していた。

 そのVIPたちの席とは別に、生徒たちの近く、本部席の片隅で、一人の女性が目を細めて子供たちを見守っていた。王室メイド長、リリア・シャイニングだ。

 彼女の周囲には、お茶を運んだり、怪我の手当の準備をしたりと、忙しく立ち回る王室メイド隊の姿がある。

 だが、リリアだけは、まるで母親のような、あるいは乳母のような慈愛に満ちた瞳で、グラウンド全体を眺めていた。

「リリアさん! 今日のボク、どう?」

 開会式直前、セフィラの息子リオが、風に乗ってリリアの元へ飛んできた。

「リオ様、とても凛々しいですよ。でも、あまり飛び回ると、セフィラ様が興奮して結界を壊してしまいますから、ほどほどになさってくださいね」

 リリアが優しく諭すと、リオは「はーい!」と元気に返事をして列に戻っていった。

「リリア。……あの、僕のネクタイ、曲がってない?」

 次にやってきたのは、緊張で顔を強張らせたシリウスだ。

「大丈夫ですよ、シリウス様。完璧です。……深呼吸して。貴方は立派な生徒会長です」

 リリアがシリウスのネクタイを整え、背中をポンと叩く。シリウスの表情がふっと和らぐ。

「リリアー! 喉乾いたー!」

「はいはい、グラウンド様。特製ジュースを用意してありますよ」

 テラの息子グラウンドが駆け寄れば、リリアはさっと冷たい飲み物を差し出す。

 彼女は魔力を持たない人間だ。だが、この学園に通う「次世代」の子供たちにとって、リリアは特別な存在だった。ヒカルの最も古い理解者であり、母たち(竜姫)とは違う、静かで変わらない愛情を注いでくれる「もう一人の母」。

 いや、半分乳母のような、絶対的な安心感の象徴。それが、リリア・シャイニングだった。

「リリア殿は、本当に子供たちから慕われていますな」

 背後から、エルフの賢者イリスが声をかけた。

「恐縮です、イリス様。……ただ、可愛くて仕方がないのです。ヒカル様と、皆様の愛の結晶ですから」

 リリアは謙遜しながらも、嬉しそうに微笑んだ。

 そんな温かな光景をよそに、保護者席の熱気は既に臨界点に達しようとしていた。

「ライオスーーッ!! 母さんが見てるわよーーッ!! その炎でグラウンドごと焼き尽くしなさい!!」

 最前列で巨大な応援旗(燃えている)を振り回しているのは、紅蓮の激情竜姫レヴィアだ。

「シズク! マリン! 冷静な判断と効率的な魔力運用を! 勝利への最短ルートを計算しなさい!」

 蒼玉の理性竜姫アクアは、双眼鏡と計算機を片手に、既に戦術解析モードに入っている。

「ソイルちゃーん! グラウンドくーん! お弁当は特大サイズで作ってありますからねー!」

 磐石の守護龍テラは、観客席の一角を占拠して、炊き出しレベルの食事を並べている。

「リベル、リオ! 一番高いところまで飛んだら勝ちだよ! ルールなんて風に飛ばしちゃえ!」

 疾風の遊撃竜姫セフィラは、自身も空中に浮きながら声援を送っている。

「……ふん。クロノス、ミスティ。闇の眷属たるもの、影に紛れて勝利を掠め取れ」

 深淵の孤高竜姫ヴァルキリアは腕を組んで座っているが、その膝の上には「息子・娘専用応援うちわ」が隠されているのを、隣のシェイドは見逃さなかった。

「……相変わらず、保護者席の圧がすごいな」

 来賓席の中央、ヒカルは苦笑しながら額の汗を拭った。

 隣には、人類側摂政レオナルドと、辺境連合軍総帥リヒター、ドワーフ族長ジオ、そしてエルフの賢者イリスらが座っている。

「ははは! 元気があっていいではないか! 我が軍の演習よりも殺気立っているぞ!」

 リヒターが豪快に笑う。

「王よ。……観客席の結界強度は大丈夫なのですか? レヴィア様の応援だけで、障壁にヒビが入っていますが……」

 レオナルドが心配そうに天井を指差す。そこには、レヴィアの熱気で歪み始めた魔力障壁があった。

「……アウラ、結界出力最大で頼む。予算はギルティアに請求してくれ」

「了解です。……残業手当を申請します」

 放送席のアウラが淡々と操作パネルを叩くのだった。

 ◇◆◇◆◇

 競技が始まった。

 第一種目は『魔導障害物競走』。

 魔法を使って泥沼、炎の壁、飛行魔獣(召喚獣)などの障害を突破するレースだ。

「よーい、ドンッ!」

「行くぜぇぇッ! ジェット・バーン!」

 ライオスが足裏から炎を噴射し、ロケットのように加速する。

「甘いです、兄さん! ウォーター・スライダー!」

 シズクが水流のコースを作り出し、その上を滑るように追い抜く。

「風よ、運んで!」

 リオとリベルは、障害物を全て無視して空を飛んでいく。

「あわわ……! ま、待ってぇ!」

 ソイルは足元に土の橋を作りながら、懸命に走る。

 グラウンドは爆発と水しぶきと暴風が入り乱れるカオス状態だ。

「行け行けライオス! 邪魔な障害物は全部燃やせ!」

「シズク! そこで氷結魔法を使って足場を固定! 摩擦係数をゼロに!」

 親たちの応援(という名の指示)もヒートアップする。

「おのれアクア! 水を撒くな! ライオスの火が消えるじゃない!」

「レヴィアこそ! 熱波でシズクの集中力を乱さないでください!」

 バチバチバチッ!!

 観客席で、炎と水の魔力が衝突し、火花が散る。

「ひぃぃっ! 保護者同士が戦わないでください!」

 審判役の王室メイド隊が悲鳴を上げる。

 そんな喧騒の中、フィールドでは異変が起きていた。

「……ねえ、兄さん。なんか、空の色がおかしくない?」

 シズクが走るのを止め、空を見上げる。

 晴天だったはずの空に、赤黒いノイズのような亀裂が走っていた。

「ん? 母上の炎が映ってるんじゃないか?」

「違います。魔力波長が……『異質』です」

 シリウスもまた、生徒会長席から立ち上がり、その異変に気づいていた。

「……嫌な予感がする。ただの演出じゃない」

 シリウスがヒカルの方を振り返ろうとした、その時だった。

 ズガガガガガッ!!

 演習用魔獣の召喚ゲートが、不気味な音を立てて暴走を始めた。

 本来なら小型の使い魔が出るはずのゲートから、どす黒いヘドロのような瘴気が溢れ出す。

「グルルルルル……!!」

 這い出してきたのは、演習用の魔獣ではない。全身が幾何学的な紋様と金属質の骨格で構成された、異形の巨獣だった。

 BPI測定不能。かつてウィンドランナーが拾ってきた「残骸」と同じ気配を持つ、神の尖兵のなりそこない――『エラー・ビースト』だ。

「な、なんだアレ!?」

「きゃあああッ!」

 生徒たちがパニックに陥る。

「総員、退避! 子供たちを守れ!」

 ヒカルが叫び、席を蹴って飛び出そうとする。

 レヴィアやヴァルキリアたちも即座に戦闘態勢に入った。

 だが。

 ガキィィィィン!!

 グラウンド全体を覆うように、赤黒い結界が展開された。

 ヒカルたちの突入を、見えない壁が弾き返したのだ。

「なっ……!? 結界だと!? 我の炎が通じない!?」

 レヴィアが炎を叩きつけるが、結界は傷一つ付かない。

「解析不能……! この術式は、こちらの魔力干渉を『拒絶』しています!」

 アウラが叫ぶ。

「神の干渉か……! 大人は手出しさせないつもりか!」

 ヒカルが歯噛みする。

 結界の中に取り残されたのは、シリウスたち生徒のみ。

 目の前には、殺意を剥き出しにした異形の魔獣。

「……くっ、みんな! 下がるんだ!」

 シリウスが前に出るが、足が震える。

(勝てるのか? 僕たちだけで……。父上たちも入れないのに……)

 絶望感が子供たちを包み込もうとした時。

「逃げるなッ!!」

 ライオスの声が響いた。彼は震える手で拳を作り、魔獣を睨みつけていた。

「昨日のリリアさんの話、忘れたのかよ! 力は守るためにあるんだろ!?」

 ライオスの全身から、炎が立ち上る。

「父上たちが見てるんだ! ここで逃げたら、一生後悔する! ……僕たちがやるんだよ!!」

 その言葉が、シリウスの迷いを断ち切った。

「……ああ、そうだ。僕たちは『竜の子』だ!」

 シリウスは、生徒会長の腕章を握りしめ、叫んだ。

「総員、戦闘態勢! これより防衛演習を『実戦』に切り替える! 僕たちの力で、この学園を守り抜くぞ!!」

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ざつ

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