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第百四十八話:アクシデント発生(神の干渉)

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百四十八話:アクシデント発生(神の干渉)

本文

結界の内部は、異様な重圧に満たされていた。

『エラー・ビースト』が咆哮するたびに、空間にノイズが走り、物理的な衝撃波となって子供たちを襲う。

「グオオオオオッ!!」

「くっ! 防御! ソイル!」

「はいっ! 大地の壁アース・ウォール!」

 ソイルが地面に手を叩きつけ、巨大な土壁を隆起させる。

 魔獣の爪が土壁を粉砕するが、その一瞬の隙に子供たちは散開した。

 結界の中央には、ベビーチェアに乗せられたまま取り残されたルーナの娘、アルテミス(〇歳)がいた。

 その小さな背中を守るように、ともに取り残されてしまった王室メイド長リリア・シャイニングが立ちはだかっていた。

「リリアさん! 危ない!」

 ライオスが叫ぶ。

「大丈夫ですよ、ライオス様。……皆様の背中は、私がお守りします」

 リリアは短剣を抜き、震える手で魔獣を睨みつけた。

 母のような厳しさはなく、ただそこにある絶対的な安心感。

 それが、恐怖で強張っていた子供たちの心を解きほぐした。

「……うん! やるぞみんな!」

 シリウスが剣を抜き、叫んだ。

「みんな! 僕に合わせろ! 母上たちの『ユニゾン』じゃない! 僕たちだけの『最強の連携技コンボ』だ!」

 シリウスは理解していた。男である自分やライオス、クロノスには、女系王族特有の共鳴魔術である『ユニゾンブレス』は使えない。

 だが、だからこそ彼らは、遊びの中で独自の戦法を編み出していたのだ。

 男たちが「力」で土台を作り、女たちが「共鳴」で魔力を練り上げ、それをぶつける物理と魔法の融合技を。

「総員、配置につけ! 前衛、僕とライオス、クロノスで時間を稼ぐ!」

 シリウスが指示を飛ばす。

「おう! 燃え尽きろ!」

 ライオスが炎を噴射して加速し、魔獣の懐に飛び込む。

「……影縫い」

 クロノスが影から魔獣の足を拘束し、動きを鈍らせる。

「そこだッ!」

 シリウスが炎と水の螺旋剣で斬りつける。

 しかしながら、魔獣の装甲は硬い。三人の攻撃でも傷一つ付かない。

「硬ってぇ! 父上たちはこんなのと戦ってたのかよ!」

 ライオスが悪態をつく。

「でも、足止めはできている! 今だ、みんな!」

 シリウスの合図で、後方に控えた女子チームが動き出す。

「お兄ちゃんたちが作った隙、無駄にしないわ!」

 ノア(炎)が、ライオスが残した熱源を集め、巨大な火球を形成する。

「熱量を逃がしません。圧縮を!」

 シズク(水)とマリン(水)が、その火球の外側に冷却水の膜を作り、熱を内側に閉じ込めて圧力を高める。

「固めちゃう!」

 ソイル(土)が、圧縮されたエネルギー弾の周りに土の殻を作り、物理的な弾頭へと成形する。

「届けるよー!」

 リベル(風)が風の道を作り、ミスティ(闇)が幻影で弾道を隠蔽する。

 属性も、性別も、役割もバラバラ。

 本来の「ユニゾンブレス」のような美しい和音ではない。

 けれども、そこには親世代にはない「ごちゃ混ぜの爆発力」があった。

「な、なんですって……!?」

 結界の外で、レヴィアが目を見開く。

「あの子たち、属性反発を無視して魔力を練り上げている!? あんなの、私たちがやったら爆発するわよ!」

「論理的にありえません……! 異なる属性を物理的に圧縮して弾頭化するなんて……!」

 アクアも計算機を取り落とす。

「いっけええええッ!!」

 女子全員の魔力が込められた弾頭が、リオ(風)の突風によって撃ち出された。

 魔獣が反撃の咆哮を上げようとした、その時。さらに驚くべきことが起きた。

「あー、うー!」

 ベビーチェアのアルテミスが、キャッキャと笑いながら小さな手をかざす。

 キィィィィン……!

 純白の光が溢れ出し、子供たち全員を包み込むドーム状の障壁となった。

「なっ……!? あの光は……! 『光の揺り籠(イノセント・サンクチュアリ)』!?」

 魔獣の衝撃波は、その光に触れた瞬間に霧散した。

 ルーナが口元を押さえる。

「私の調律魔法よりも、遥かに純度が高い……。魔術というより、奇跡そのもの……」

 彼女は震える声で呟いた。

「これが……信仰の側妃シルヴィアが仰っていた、『人と竜が真に交わり、魂が溶け合った先に生まれる奇跡』……シルヴィアの予見した、次世代の光なのでしょうか……!?」

 光の加護を受けた弾頭は、魔獣の胸部コアに直撃した。

「今だ!! 喰らえぇぇぇッ!! 『ごちゃまぜバスター・キャノン』!!!」

 ドガァァァァァァンッ!!

 虹色に輝く物理と魔力の塊が、魔獣の装甲を貫通し、内部で炸裂した。

 熱と圧力、そして相反する魔力が内部で暴れまわり、回路を焼き切る。

「ギャァァァァァ……!!」

 魔獣は断末魔を上げ、光の粒子となって消滅した。

 同時に、グラウンドを覆っていた赤黒い結界がガラスのように砕け散った。

「やった……! やったぞー!!」

「勝った! 僕たちだけで勝った!」

 子供たちが抱き合って歓声を上げる。

 そして、真っ先に駆け寄ったのは、親たちの元ではなく、リリアの元だった。

「リリアさん! やったよ!」

「怖かったよぉ……!」

「よしよし、えらいですねぇ……」

 子供たちがリリアにしがみつく。リリアは彼らを抱きしめ、涙を流した。

 実の親の前では見せない甘えた顔を、彼らはリリアだけに見せていた。

 結界の外から駆けつけたヒカルたちは、その光景を見て足を止めた。

「……負けたわね」

 レヴィアが苦笑する。

「悔しいけど、認めざるを得ないわ。論理的に見て、リリア殿の精神的支柱としての役割は、私たち母親以上ですもの……」

 アクアも眼鏡を直しながら認める。

 ヒカルは、リリアと子供たちの輪を見つめ、胸を熱くした。

(リリア。……お前はやっぱり、俺たちの『家族』の要だ)

 その光景を見つめる空の彼方で、不気味な星が一つ、瞬いた気がした。

 神の干渉は、これで終わりではない。

 だが、この日、子供たちは証明した。

 次世代の希望は、どんな理不尽な運命にも抗える「強さ」と、それを支える「愛」を持っていると。

「さあ、帰ろう。……今日はご馳走だぞ!」

 ヒカルの言葉に、子供たちの歓声が再び上がった。

 リリアに手を引かれ、誇らしげに歩く子供たちの背中を、夕陽が優しく照らしていた。

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ざつ

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