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第百八十一話:天空の激戦とソルニアの術式

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百八十一話:天空の激戦とソルニアの術式

本文

『希望号』が強行着陸した場所は、神の居城『天上の御座セレスティアル・スローン』の広大なエントランス広場だった。

 そこは、床も壁も空も、すべてが冷たい純白の幾何学物質で構成された、無機質で静謐な世界だった。

 この空間は、自然界の色彩や音の反響、魔力の不規則な揺らぎを一切拒絶している。 地上の泥臭さ、炎の熱狂、水の豊かさ。ヒカルが愛した全てが「ノイズ」として弾かれる、純粋な「理(ことわり)」の実験場だった。

 ヒカルは『調律の剣レギュレート・ソード』を構え、周囲を警戒する。高密度の魔力が充満しているが、その魔力は生命の温もりを一切含まない。

 ヒカルの脳裏に、ノイズを伴いながら、澄んだ、しかし歪んだ声が響いた。

『フン。予想通り、無作法な侵入者どもだ。ヒカル。ここは貴様らが愛する「バグ」が通用する世界ではないぞ』

「カイン! 貴様、やはりここにいるか!」

 ヒカルは激しく剣を握りしめる。憎悪を乗り越えたはずの感情が、再びざわつく。

『私はデータ体だ。だが、私の知恵は地上と天上、二つの戦場を同時に支配している』

 カインの声は冷笑を帯び、ヒカルの心に究極の屈辱を突きつけた。

『レオーネ皇女(貴様の妻の一人)の部隊は、今、地上から支援砲撃の論理的最適解を待っている。その最適解を弾き出すのは、皮肉にも、貴様が裏切った私だ。泣き言を言っている暇があれば、手を動かせ』

「敵影、感知! 全方位から来ます!」

 艦橋に残った空虚の斥候王ゼファーが警告を発した。

 空間のあちこちに光の亀裂が走り、そこから無数の自動迎撃ユニット『神兵ディバイン・ポーン』が出現した。

 のっぺらぼうの顔に、光の翼を持つ人型兵器。その一挙手一投足は、無駄な動きが一切ない。

「排除。排除。異物ヲ、検知」

 無機質な機械音声と共に、神兵たちが一斉に光弾を放つ。

「させませんッ!!」

 その前に立ちはだかったのは、新たに『光の六天将』となったメイド、ソルニアだった。

 彼女は優雅なメイド服の上に、アウラから継承した魔導プロテクターを装着し、白い空間を切り取るように鮮やかな箒(高出力魔導杖)を掲げた。

「展開! 多重鏡面反射陣マルチ・ミラー・リフレクション!」

 ソルニアの周囲に、無数の光の鏡が出現する。

 神兵たちが放った数千の光弾は、鏡に反射し、屈折し、複雑な幾何学模様を描いて敵陣へと跳ね返った。

 ズガガガガガッ!!

 自らの放った光線によって、神兵たちが次々と爆散していく。

『ソルニアの術式は、アウラの緻密な論理を継承している。私の予測と一致した』

 カインは冷徹に評価する。

 ソルニアは、汗一つかかずに箒を振るう。

「師(アウラ)の残したデータは完璧です。私はそれを、王のために出力するだけ。……通りたければ、光の速度を超えてきなさい!」

 しかし、敵は光線だけではなかった。

 物理的な破壊力を持つ重装型の神兵が、鏡の隙間を縫って『希望号』の船体へと特攻を仕掛けてくる。

「船を傷つけさせるものですか!」

 続いて、甲板に仁王立ちしたのは、新たに『土の六天将』となったテラナだ。

 彼女は、主であるテラ譲りの怪力で巨大な戦槌(ウォーハンマー)を振り回した。

「大地粉砕撃アース・クラッシュッ!!」

 ドゴォォォン!!

 テラナの一撃が、空間そのものを揺るがし、重装神兵を瓦礫のように吹き飛ばす。

「ガイア様から受け継いだこの守護の鉄槌、甘く見ないでくださいまし!」

 新六天将の二人が作り出した鉄壁の防衛線。

 その隙を突き、影のように動く者がいた。

 闇のメイド、ルナリスだ。彼女はヴァルキリアとシェイドの命を受け、戦場の「影」に潜行していた。

『制御中枢はあのオベリスクだ。ルナリス、奴の防御アルゴリズムを解析し、最小限の魔力で機能を停止させろ。地上でのレオーネの支援砲撃が、今、完璧な弾道で向かっている。その弾道こそ、私との共闘の証だ。無駄にするな』

 カインの声が、ルナリスの行動を促す。

「……見つけました。迎撃システムの制御中枢」

 ルナリスは、広場の隅にあるオベリスクの影から実体化した。

「王の行手を阻む障害は、排除します」

 彼女が魔導書を開き、闇の呪言を囁くと、オベリスクが黒い茨に覆われ、機能停止に追い込まれた。

 増援の転送ゲートが強制的に閉じられる。

「道が開いたわ! 総員、進撃!」

 レヴィアが叫び、ヒカルたちが駆け出す。

 その最中、ルーナに抱きかかえられていたアルテミス(6歳)が、ふと足を止めた。

 彼女の白金の瞳が、居城の遥か奥、最上階を見つめている。

「……呼んでる」

「え? アルテミス、何が聞こえるの?」

 ルーナが問いかける。アルテミスは、小さな胸を押さえた。

「悲しい音……。ううん、怒ってる音? ……世界の真ん中で、誰かが泣いてる」

 それは、神のシステムの中枢、あるいは「神」そのものの感情なのだろうか。

「パパ。……あそこに行かなきゃ。あそこで、全部が終わるの」

 アルテミスが指差す先。

 そこには、四体の強大な気配――神の側近である四大熾天使(セラフィム)が待ち受ける「試練の回廊」が続いていた。

 ヒカルは娘の頭を撫で、剣を握り直した。

『フン。ヒカル、貴様の愛が試されるぞ。神の番人は、貴様が最も憎むべき「理(ことわり)」そのものだ』

 カインの皮肉が響く中、ヒカルは屈辱に耐え、娘に微笑みかけた。

「ああ。行こう。……神様のお説教を聞きにな」

「ううん、ちがうよ。パパ」

「?」

「アルテミスが、ね。めっ、しちゃうの!!」

 アルテミスの本気の顔に、一同から笑いがこぼれたのだった。

 最初の関門。

 燃え盛る紅蓮の翼を持つ、炎の熾天使『セラフィム・イグニスSeraphim Ignis』が、彼らの前に立ちはだかった。

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ざつ

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