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第ニ百話(最終話):黄昏の王と六つの愛、そして永遠の恩返し

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第ニ百話(最終話):黄昏の王と六つの愛、そして永遠の恩返し

本文

 リリアの死から、さらに数年の月日が流れた。

 季節は巡り、穏やかな秋の日のこと。

 ヒカルは、自らの身体に訪れている「終わりの予感」を静かに受け入れていた。

 かつて竜の力を宿し、酷使した代償か。老いの速度は緩やかだったが、ここに来て急激に生命の灯火が揺らぎ始めていたのだ。

「……さて。最後に、デートでもするか」

 ヒカルは杖をつき、愛しい妻たち一人ひとりと、思い出の場所を巡ることにした。

 まずは、王宮の庭園。

 テラが車椅子を押しながら、ゆっくりと散歩をする。

「ヒカル様。ここは、わらわたちが初めて家族としてピクニックをした場所ですね」

「ああ。あの時はソイルが泥団子を作って、俺に食べさせようとしたっけ」

「ふふ。……貴方の作ってくれた『居場所』は、こんなにも暖かくなりました」

 テラはヒカルの手を頬に当て、変わらぬ慈愛で包み込む。

 次は、風の吹き抜ける塔の上。

 セフィラが、老いたヒカルの肩を抱き寄せている。

「ねえヒカル。風の音、聞こえる?」

「ああ。……昔より、優しくなった気がするな」

「ヒカルが自由にしてくれたからだよ。……私の翼はなくなっちゃったけど、貴方と過ごした時間は、どんな空よりも広くて自由だった」

 セフィラは涙をこらえ、ヒカルの白髪を梳いた。

 書庫では、アクアが静かに本を読んで聞かせていた。

「……論理的に考えて、貴方との人生は『最高効率』でした」

「ははっ。アクアらしい褒め言葉だ」

「ええ。計算外のトラブルばかりでしたが……その全てが愛おしい変数(パラメーター)でした」

 アクアは眼鏡を外し、ヒカルの目尻の皺に口づけを落とす。

 礼拝堂には、ルーナの祈る姿があった。

「ヒカルさま。貴方の魂は、いつまでも私たちの光です」

「俺を買いかぶりすぎだ、ルーナ」

「いいえ。貴方がいたから、世界は調和を取り戻しました。……私を、絶望の淵から『幸せな妻』にしてくれて、ありがとうございました」

 そして、夜のバルコニー。

 ヴァルキリアが、ヒカルと並んで星空を見上げている。

「……フン。貴様にしては、よく生きた方だ」

「手厳しいな、ヴァルキリアは」

「……だが、悪くない人生だったろう。貴様の背中を守る役目、この私が全うしてやったぞ。……私も幸せだったわ」

 彼女は照れ隠しに顔を背けるが、繋いだ手は痛いほど強く握りしめられていた。

 最後に、暖炉の前。

 レヴィアが、ヒカルの膝に頭を預けて座っていた。

 出会った頃のように、情熱的な瞳で見つめ合う。

「ねえ、ヒカル。覚えてる? 私が貴方を拾った日のこと」

「忘れるもんか。……あの時、お前が俺を見つけてくれなかったら、俺の人生はとっくに終わってた」

「ううん。貴方が私に『恩返し』をしてくれたから、私の運命は動き出したの」

 レヴィアはヒカルの手に自分の手を重ねる。

 そこには、シワシワになった人間の手と、若々しいままの竜の手がある。

 種族の違い、寿命の違い。

 けれど、流れる想いの熱量だけは、今も変わらず等しい。

「愛してるわ、ヒカル。……何百年経っても、貴方は私の最初で最後の王様よ」

「ああ……。俺もだ、レヴィア」

 六つの愛を再確認し、ヒカルは深く、満足した息を吐いた。

 その夜、ヒカルは深い眠りについた。

 夢の中に、懐かしい影が現れる。

『――よお、凡人。随分と長生きしたな』

 若き日の姿のまま、カインがチェス盤の前で待っていた。

 ヒカルもまた、全盛期の姿に戻って向かい合う。

「……カイン。まだいたのか」

『はん。ただの残滓だ。貴様の脳裏に焼き付いた記憶のな』

 カインはチェスの駒を進める。

『お前の作った世界を見ていたぞ。……非効率で、無駄が多くて、感情的で……』

「……最悪か?」

『いや。……悪くはない』

 カインはフッと笑い、自分のキングを倒した。

『俺の負けだ、ヒカル。愛だの絆だの……計算できない要素をここまで積み上げるとはな』

 彼は満足げに立ち上がり、ヒカルの背中を押した。

『行け。皆が待っている。……これが本当の別れだ。あばよ、最高の宿敵(とも)よ』

 光の中で目を開けると、そこは温かな寝室だった。

 視界が少し霞む。

 けれど、周りに誰がいるのかはすぐに分かった。

 右手にレヴィア、左手にアクア。そして、周りにテラ、セフィラ、ルーナ、ヴァルキリア。

 愛する妻たちが、微笑んで覗き込んでいる。

 そして、その周りには、立派に成長した子供たちが勢揃いしていた。

 立派な髭を蓄えた国王ライオスと、その妻シズク。

 軍服姿のシリウスとのノア。

 知的な眼鏡をかけた宰相ユリウスとソイル。

 自由人のリオとフウガ、クロノスとリベル。

 そして、美しく成長したアルテミス。

 さらに、部屋の隅には賑やかな顔ぶれがいる。

「父上! 起きましたか!?」

大柄な体躯に似合わず泣きそうな顔をしているのは、テラの息子グラウンドだ。

彼は今や世界中を飛び回る高名な地質学者として活躍している。ついでに各地の旨いもの巡りをしているらしい。研究一筋で未だ独身だが、その逞しい身体つきは頼もしい大人の男のものだ。

「もう、グラウンドったら泣かないの! 父上が心配するでしょ!」

 彼の背中を叩いているのは、アクアの次女マリン。その隣には、彼女を射止めたレオン皇子の姿もある。

「……父上、お加減はいかがですか?」

 眼鏡を光らせて冷静を装っているが、手が震えているのはミスティだ。

 彼女もまた、母譲りの力を活かして希代の占い師として名を馳せている。ミステリアスな魅力で多くの信奉者を持つが、彼女もまた独身を貫く自立した女性として、父の前に立っていた。

 彼らの足元には、さらに小さな子供たち――ヒカルにとっての孫やひ孫たちが、心配そうに、けれど好奇心旺盛な瞳で見つめている。

(ああ……なんて、賑やかなんだ)

 部屋中が、家族の愛で満ち溢れていた。

 かつて孤独に震え、処刑台に立たされた少年の最期とは、とても思えない。

「……みんな」

 ヒカルの声に、全員が息を呑んで耳を傾ける。

「……愛している。……ありがとう」

 ありふれた言葉。

 けれど、これ以上の言葉はなかった。

 ヒカルがゆっくりと瞼を閉じる。

 握りしめていた妻たちの手の温もりが、魂の奥まで染み渡っていく。

 呼吸が、静かになる。

 心臓の鼓動が、ゆっくりと、やがて止まる。

 ヒカル・クレイヴ。享年、百と二歳。

 激動の時代を駆け抜け、種族を繋ぎ、世界を調律した王は、愛する者たちに見守られ、穏やかにその生涯を閉じた。

 妻たちは、泣き崩れなかった。

 彼女たちは涙を流しながらも、凛として微笑み、王の旅立ちを見送った。

「おやすみなさい、私たちの最愛の王」

「また会いましょう、あなた」

 その愛は、死をも超えて繋がっていることを、彼女たちは知っていたから。

  ◇◆◇◆◇

 ――そして、数百年後。

 世界はさらに様変わりしていた。

 空には反重力シップが飛び交い、人々は高度な科学文明の中で暮らしている。

 「竜」や「魔法」は、完全におとぎ話の中の存在となっていた。

 ある晴れた日の午後。

 近代的な学校の校舎裏で、一人の少年が本を読んでいた。

 黒髪に黒目の、少し気弱そうな少年だ。

 そこへ、一人の少女が走ってくる。

 燃えるような赤い髪、勝気な瞳。

「あ! いた! ねえ君、これ落としたでしょ?」

 少女が差し出したのは、古びたしおりだった。

 少年は驚いて顔を上げる。

「あ、ありがとう……。探してたんだ」

「ふふ、どういたしまして。……ねえ、私、レヴィっていうの。君は?」

 少年は少し迷って、はにかみながら答えた。

「……ヒカル。僕は、ヒカルっていうんだ」

 少女の目が輝く。

「へぇ! 教科書に出てくる伝説の王様と同じ名前ね! かっこいい!」

「そ、そうかな……」

 風が吹き抜ける。

 二人の出会いを祝福するかのように、校庭の桜が舞い散る。

 学校の広場には、古びた銅像が立っていた。

 優しげな青年の周りを、六人の美しい女性と、多くの仲間たちが囲んでいる像だ。

 台座には、古代文字でこう刻まれている。

『優しさは、いつか必ず最強の力になる』

 かつて世界を救った「竜の恩返し」の物語は、形を変え、時代を超えて、新たな命へと受け継がれていく。

 二人が笑い合う声が、青空に吸い込まれていった。

【――Fin.】

(あとがき)

このあとがきまでお付き合いいただきありがとうございました。

昨年の9月に思い付きから始めたこの「竜の姫と絆のユニゾン」ですが、自分で思っていた以上に壮大な物語となりました。

おそらく多くの読者の方は、このあとがきまでたどり着いていないかと思います。このあとがきを読まれているだけで、めちゃくちゃ熱心に支えていただいたファンだと思っています。

ヒカルとレヴィアの物語は、これにて終了です。

たくさんの登場人物がいますので、スピンオフ作品とかも作れそうですが、このままにしておくのが一番いいのではないか、と思います。

改めて、12月からの長期連載にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

あ、もし、このあとがきを偶然最初に読んだ、という方は、ぜひ壮大な物語を追体験していただければ、と思います。

趣味での創作活動ですが、今回は、文章と音楽を掛け合わせた相乗効果、というチャレンジもありました。

なかなかプラットフォームの制約もあって十分にできたかというと、まだまだのところもありますが、生成AIをフル活用することで、こんな世界が発信できるというのは、なんとも幸せな時代になったと思います。

引き続き別の作品を発表できたら、と思います。

また全然違う切り口で、私の紡ぎだす世界を楽しんでいただければ、幸いです!

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作者について

ざつ

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ファンタジーxSFxラブコメ 生成AIゴリゴリ使いますが、丸投げじゃないですよ。まずはフォローいただける嬉しいです。

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