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第4話 いざ、エステル邸へ

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あらすじ

ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第4話 いざ、エステル邸へ

本文

「ここが我が屋敷じゃ!」

馬車に乗り辿り付いたのは一軒の屋敷。

少し古く感じるが手入れは行き届いており、小綺麗な外観だ。

「さっきのお城じゃないんですね?」

「うむ! 妾は父上より屋敷を与えられておるのじゃ」

(隔離かな……?)

伊織はそう思わずにはいられなかった。

そして、あの扱いからしてそれが的外れとも思わなかった。

『伊織よ……』

「うひゃっ!? 神様?」

『自分の居場所を見つけたのですね。最早私の手助けなど不要でしょう。

ここから先は貴女の思うように生きるのです。

今後分からない事があればエステル達に聞くのが良いでしょう。

私は天より貴女の活躍を見守っていますよ』

「はぁ……大してお世話になった記憶も無いですけど」

『死ぬ運命にあった貴女を転移させただけでもお釣りは来るでしょう?

では、私は推し活があるのでこれで。

どうしても聞きたい事があれば呼んでください。答えられる事なら答えます。では』

「はぁ……」

伊織は神様の声が聞こえなくなり。

特に感情が動く程の付き合いでも無いしなぁ……というような事をぼんやりと思った。

「何じゃ? 神と話しておったのか?」

「はい。後はもう好きにして、分からない事があればエステル様に聞くように、と言われました」

「ふむ? 大抵の神は担当する勇者がこの世界に慣れるまでは助言するものと聞いておったが……ものぐさな神も居たものじゃな。

まぁ、良い。その神の言う通り、イオリの今後は妾がキッチリ面倒を見てやるぞ! さぁ、入るのじゃ」

「お邪魔します」

メイドのミレーヌが鍵を開け、エステルに促されるままに屋敷に入ると、ガランとした空間が広がっていた。

インテリアは相応の豪華さだが、人が居ないのだ。

「……あれ、他にメイドさんとか居ないんですか?」

「この屋敷には妾とミレーヌとザフィアしか居らぬ。今日からはイオリも加わるがの」

「え、掃除は」

「私が1人で行っております」

「はぇー……」

「ミレーヌよ、幾つか空いている部屋があったな?

イオリを案内してやるのじゃ。妾は自室で休んでおる」

「かしこまりました姫様。イオリ様、こちらです」

「あ、はいっ」

ミレーヌに案内された部屋は日当たりの良い2階の部屋だった。

ベッドと机、クローゼットが備え付けられている。

日本に居た時よりも断然広い。

「ここがイオリ様の自室になります。お食事は特定の時間にお作り致しますが、小腹が空いた時などは何時でもお申し付けください。お風呂もご用意出来ます」

「ありがとうございます……なんか、分不相応な待遇になっちゃいましたね」

「そんな事はありません。寧ろ不足かと。

……この世界において姫様の味方はあまりにも少ない。

姫様の支えになってくださる方というのは、それこそお金に変えられない存在なのです」

「そう、なんですか?」

「そうですとも。さて、手荷物もその棍棒だけのようですし、姫様のお部屋に向かいましょう」

「えっ?」

「今後の事を相談するならば私達と相談する方が宜しいかと。

服もこの世界の物にした方が宜しいですし……私の服をお貸しします。

持っていくので先に姫様のお部屋に向かってください。

2階の中央……派手な扉なのですぐに分かるかと」

「はぁ……」

派手な扉と言われても……と困惑しながら部屋を出て言われた通り中央に向かって進む。

「うわぁ」

あった。

確かに、派手な扉だった。

しかし想像と違い、赤と金の絵の具が塗りたくられていて屋敷の雰囲気を完璧なまでにぶち壊している。

上の壁にエステルの肖像画が掛けられているので彼女の部屋で間違い無いだろう。

「失礼します」

「うむ? イオ……」

伊織は普段の癖でコンコン、とノックして返事を待たずに扉を開けた。

半裸のエステルが、そこに居た。

「……え」

ごめんなさい、とか。

見た目と性格の割に過激な下着だな、とか。

色々と言うべき事と思うべき事があった。

しかし、伊織の目に焼き付いたのは小さく痩せた身体に刻まれた幾重もの傷痕。

「あ、その……」

「すまぬ、見苦しい物を見せたな」

「いや……!」

自身の裸を見られたエステルの方が申し訳なさそうに服を着る。

伊織はそれを見て二の句が告げなくなった。

「あら、もうお着替えになられたのですか?」

そんな空気を壊すようにミレーヌがやって来た。

その手には畳まれたメイドが抱えられている。

「それではイオリ様と一緒にお着替えして仲良くなろう作戦が台無しではないですかっ」

「え、あ……だから急かしてエステル様の部屋に行かせたんですね……!」

「えぇ。じゃなければイオリ様はご自身の部屋で着替えれば済む話ですから。

まったく、身の回りのお世話をするのが私の仕事ですのに……」

「ミレーヌがこんな下着を着せるからじゃろう!

今朝は寝ぼけていたので把握しとらんかったが、よりによってこんな下着を選ぶとは……!」

「嫌なら捨てるなり隠すなりすれば宜しいのに」

「これでも贈り物じゃ。無碍には出来ぬ」

「そうですか。まぁ、目的の一つは達成出来ましたし良しとしましょう。……イオリ様」

「は、はい……!?」

「姫様の身体を見て、どう思いましたか?」

「身体、を……」

優しい言葉をかけるべきだろうか?

慰めの言葉をかけるべきだろうか?

そんな考えが伊織の頭を巡り、しかし結局は己の感情に従う事にした。

「怒りの気持ちが湧きました。許せないと思いました。

エステル様を傷付けた名前も顔も知らない相手に、どうしようも憎しみを抱きました」

「なるほど。逃げたり怖がったりしない時点で50点でしたが……今の答えも合わせて90点をあげましょう。合格です」

「ミレーヌに人事権は無いぞ?」

「人事権など無くてもいびって退職させる事は可能なのですよ?」

「凄く怖い事言われた……」

恐らく、どうにかしてエステルの傷を見せる事で伊織の反応が見たかったのだろう。

ともあれミレーヌのお眼鏡には叶ったようで伊織はホッと安堵した。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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