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第13話 王族の責務

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あらすじ

ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第13話 王族の責務

本文

「本当に大丈夫なのか……?」

「姫様の魔法見ただろ? 空を飛んでゴブリンやオークを一方的に撃退したんだぞ?」

「でも負け戦が多いんだよな……ゴブリンなら何とかなっても、レオマーリ軍相手となると……」

「しかもツスの丘って先に着いた方が有利なんだろ?

今から行っても間に合わないんじゃ……」

「なんで姫様はこんな無謀な出陣を……」

「混ざり者じゃあやっぱり……」

「……」

野営地を歩く伊織は兵士達のぼやきに耳を傾ける。

エステルへの風評に怒りがこみ上げるが、今感情的になってはいけないと深呼吸して心を落ち着かせる。

さっきの戦闘では真っ先に先陣を切ったのに。

今回の出陣は国王による八つ当たりで行かされただけなのに。

混ざり者と呼ばれるハーフであるというだけで求心力は著しく下がり、能力や人格を疑われるのだ。

「失礼します、食事を持ってきました」

「うむ」

伊織が指揮官用の天幕に入ると、小柄な裸体が目に入った。

「あ、失礼しました……!」

「イオリなら構わぬ。故に入室を許可したのじゃ」

「お拭きしますね」

「うむ。しかしこのような事に水を使うのは気が引けるのぅ」

「身嗜みを整えるのも指揮官の務めですよ」

「むぅ……」

エステルはミレーヌに身体を拭かれながら、むずがるように身体をよじる。

それだけ見れば本当に子供の様だ、と思う。

だからこそ、体中に刻まれた傷跡がとてつもなく悲しい。

「イオリよ、兵の士気はどうじゃった?」

「それ、は……」

「いや、酷な事を聞いたの……すまぬ。

妾に命を預けて士気が上がろう筈も無いか」

「そんな事は……」

「良いのじゃ。お主達がこうして付いてきてくれるだけで重畳という物じゃ」

エステルが沈んだ声の伊織に振り向き。

その拍子にコツンと音が鳴り、球状の何かがコロコロと伊織の足元に転がってきた。

「……?」

これは? と伊織はその物体を拾い上げ……

「……目っ!? めめめめめめ……!?」

「それは妾のじゃ。すまぬが渡してくれるか?」

「は、はい……」

伊織は震える手で硬質な眼球をエステルに手渡す。

エステルは右眼を開き、空洞になったそこに碧眼を讃えた眼球を嵌め込んだ。

「ふぅ、やはり視界がハッキリするのぅ。驚かせてすまんかったの」

「いえ……義眼、ですか?」

「うむ。キチンと視界が見える優れ者じゃぞ!」

エステルはえっへん、と裸のままで胸を張り。

しかしミレーヌに動かないでくださいと怒られて大人しくなった。

「エステル様がオッドアイだったのは……」

「まぁ、そういう訳じゃな。素材の関係で碧くなってしもうたがの」

「その目も拷問で?」

「うむ」

あまりにも軽く返されて伊織は言葉を失う。

自分が何か言えた立場では無い事は百も承知だが、それでも痛々しいと思ってしまう。

「……何故、王の命令に従うんですか?」

「うむ? 王の命令だから、ではいかんのか?」

ミレーヌに服を着させられながら小首を傾げたエステルが伊織に問い返す。

「私はエステル様の意見が正しいと思います。

少なくとも、当て付けで不利な戦場に人を送り込む事が正しいとは思いません。

エステル様が捕らわれ、拷問を受けたのもそうやって無茶な戦いを強いられたからじゃ……」

「それに関しては否定はせぬ。妾も自身の意見が正しいと思うから父上に意見するのじゃからな。

しかし、出来るのは意見までなのじゃ。

度が過ぎれば反乱の火種を生み、国を乱す原因になる。

妾に慕う者は居らずとも、担ぎ上げて王位を簒奪したがる者は居る。

それはあってはならない事じゃ」

「ですが……っ」

「イオリよ、妾はヴァルドハイムの王女じゃ。

国に尽くすのは妾の義務じゃ。

故に妾は戦い、他種族と折衝し、有能な人材をヴァルドハイムにスカウトするのじゃ」

「スカウト……だからスターシュに?」

「うむ。転移したての勇者はスカウトするに打って付けじゃからな!

何度目かも分からぬ程訪れ、そしてやっとイオリと出会えた。

確かにイオリから見れば不条理な命令だと思うじゃろう。

じゃが、必要な事なのじゃ。分かってくれとは言わぬ。

ただ……イオリには妾の行いを許してほしいのじゃ」

「許すとか……いえ、はい。エステル様のお気持ちは分かりました。

納得はしていませんが、全力でエステル様をお守りする事で納得させます」

「くふふ、それで良い。妾は良い忠臣に巡り会えたのぅ」

エステルがくふふふふふふふ、と普段より多く笑った瞬間。

天幕の外から聞きなれた精悍な声が響いた。

「姫様、今後のルートについて相談が」

「ザフィアか。入って良いぞ」

「失礼します。おや、お食事はまだしておられないので?」

「うむ、少し話し込んでおっての。食事をしながらで良いかの?」

「構いません。こちらをご覧下さい」

ザフィアは左手だけで器用に地図を広げ、一点を指差す。

「ここがツスの丘。到着するまで凡そ一週間掛かります」

「間に合わぬか?」

「確実に。急かしているので多少は早く進軍出来ていますが、ネックなのはやはり此処ですね」

「うむ、そこなら妾も分かるぞ! ルルケヤン山じゃ!」

「正しく。この山は広くはありませんが、道は整備不足。

超えるには狭い道を何度も折り返しながら数日掛けて上り下りするしかありません」

「かと言って焦って進めては悪戯に兵や物資を失ってしまう。一列になってゆっくり進むしかありません」

「あの……」

「む? どうしたのじゃイオリ」

「此処の鼠返しみたいな崖を降りられたらショートカット出来ませんか?」

「それは確かにそうだが……無理だろう」

「エステル様は空を飛べますよね?」

「飛ぶには飛べるがイオリやザフィアが精々じゃの。

革製とはいえ鎧を着込んだ兵士を載せて飛ぶのは無理じゃ。

グラスホーンや物資など以ての外じゃぞ」

「……つまり、私だけなら下に降ろせるんですね?」

「む? それはそうじゃが……」

「私に考えがあります」

伊織は不安げな、しかし覚悟を秘めた顔でエステルの瞳を真正面から見つめた。

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生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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