第18話 勝利の後
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あらすじ
ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第18話 勝利の後
本文
「んん……」
「エステル様っ!」
「動いてはなりません!」
ツスの丘での防衛戦を制したエステル隊。
ミレサリスの街へと向かう馬車の中でミレーヌに膝枕されているエステルが目を覚ました。
「んむ……ここは? 妾は矢に射られて……」
「エステル様っ! 良かった……」
「イオリ……? 妾はどうなったのじゃ?」
「姫様はファイヤーボールの直撃を受けたのです。
治療は施しましたがお身体の具合は如何ですか?」
「うむ、問題な……うぅ……」
「エステル様!」
「ご無理をなさらぬよう。あのレベルの火傷を負ったのです。まだ万全からは程遠いでしょう」
「……あれは夢では無かったのじゃな?」
「あれ、とは?」
「妾が不様に喚き散らした事じゃ! うぅ……」
「不様じゃないですっ!」
「ひょわ!? い、イオリ……?」
「痛くて泣いたり叫んだりするのは当たり前の事で……それを不様だなんて思ったりしません!」
「妾はイオリの顔に傷を付けてしまった……」
「こんな物、傷の内に入りません! ミレーヌさんが治療してくれましたし、痕も残らないそうです」
「妾の情けない姿を見せてしまっては士気も下がってしまったじゃろう……」
「姫様の奮戦により兵士達の士気は益々高まりました。
その甲斐あって我々はツスの丘にて勝利し、レオマーリ軍の侵入を防いだのです」
「なに? 妾達は勝った、のか?」
「はい。敵が姫様を狙っていた事もあり、死者も少なく済みました。
生き残った者は皆姫様に感謝しておられます」
「そう、か……」
イオリとミレーヌの両名から報告と説得を受けたエステルは、事の転末を理解し、平静を取り戻す。
そして兵士達の犠牲が少なかった事に安堵した。
「今は王都に向かっておるのか?」
「ミレサリスでございます。姫様には休養が必要という事で、暫くミレサリスに逗留する事になりました。
こんな状態でルルケヤン山を越えるのは無理ですので」
「む、しかしそれでは兵の帰還が遅れてしまう。
若い兵ばかりで、皆今回が初の遠征と戦闘じゃ。
気疲れもあるじゃろうし、早く帰って家族に会いたいじゃろう」
「それに関しては問題ありません。先にミレサリスに逗留していたジェラルド様からの申し出で、副官のホーデル様が部隊を指揮して王都まで送り届けて下さるとの事です。
ジェラルド様麾下の精鋭も加わる混成部隊となりますので、道中の危険も少ないかと」
「おぉ、ホーデルか! 奴は中々出来た男じゃ!
妾に良くお土産をくれたり、妾の好きな食べ物を良く知っておったりと中々気が利くのじゃ!」
伊織はホーデルという男について予め聞かされていた。
何でも王家そのものに忠誠を誓うタイプで、エステルが混ざり者だと理解した上でそれでも王族として接しているとか。
ただ、王族に対して甘やかしすぎる所があり、既に大人びてしまったジェラルドやエメルダがお土産に喜ばなくなった一方で、エステルは未だに大はしゃぎするのでプレゼント攻勢が彼女に集中しているらしい。
エステルがお菓子を貰って喜ぶ様は容易に想像出来るし、甘くなるのも仕方ない。
それよりも、エステルを好いてくれている人が他にも居た事の方が伊織には嬉しかった。
◇◇◇◇◇
「お疲れ様です、姉さん」
「うむ! ジェラルドも後詰ご苦労!」
「聞きましたよ。ルルケヤン山で僕達を追い抜いてレオマーリよりも先にツスの丘で布陣したと。流石姉さんですね」
「そうじゃろうそうじゃろう! 妾は凄いのじゃ!」
むん! と自分より遥かに背が高い弟に胸を張るエステル。
ジェラルドは苦笑しながらもそれを微笑ましく見ている事は伊織にも伝わった。
「しかし、今回の行軍速度に関してはイオリの力故じゃ。
褒めるならばあやつを褒めてやって欲しい」
「そのイオリさんを見出したのは姉さんでしょう? 父ですら彼女の力を見抜く事は出来なかったのですから」
「そ、そうかの?」
「そうですよ! 王様に否定されたのに、私を従者にしてくれたのはエステル様なんですから!」
「ふ、ふむ……!」
伊織とジェラルドの褒め殺しに益々顔を緩ませるエステル。
身体の痛みや気分の沈みが、少しでも晴れてくれれば……という意図だったが予想以上に効いたらしい。
エステル様が調子に乗りやすい性格で良かった、と伊織は内心胸を撫で下ろした。
「姫様」
「む、ホーデルか。息災か?」
「おかげ様で。こちら、カステラになります。
療養中にお召し上がりください」
「おぉ!」
カステラに目を輝かせたエステルが満面の笑顔で箱を受け取り、胸に抱いて小躍りした。
「では私は部隊を再編し王都に向かいます。
彼等を必ず無事に王都まで送ります」
「うむ、頼んだぞホーデル!」
「はっ!」
ホーデルはビシッと敬礼し、踵を返して去っていく。
エステルはカステラの箱をミレーヌに渡しながらジェラルドに問い掛ける。
「ジェラルドはどうするのじゃ?」
「僕がミレサリスに居る理由も無くなりましたからね。
姉さんの傷が癒えたら一緒に帰るつもりです」
「うむ、それが良い! 姉弟揃っての凱旋じゃな!」
「姉さんの部屋は既に用意しています。帰還を焦らず、きちんと養生してください」
「言われずとも分かっておる! 子供扱いするでない!」
エステルはぷりぷりと怒りながら用意された宿に向かう。
部屋に入ったらカステラを食べようとウキウキしていたが、おやつの時間は過ぎているので駄目ですとミレーヌに嗜められていた。
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