第22話 姉妹愛
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第22話 姉妹愛
本文
「あら、今日はあの性悪メイドではありませんのね?」
「うむ、今日はイオリが付き添いじゃ」
「そう……まぁ、どうでも良いですわ。
イオリとやら、誰も部屋に入らないようにしっかり見張っておきなさい。
イオリも決してこの部屋には入らないように」
「はい、かしこまりました」
「では、お姉様はこちらへ」
「うむ」
エステルはエメルダに導かれて部屋に入る。
バタン、と扉が閉められた。
「……エステル様」
この場に至っても伊織はミレーヌの言葉が信じられなかった。
エメルダの自分に対する態度こそ素っ気なかったが、エステルに向ける視線は優しく、部屋に招き入れる仕草もまるで芸術品に触れるかの様に優しかった。
「いったいこの部屋の中で何が……」
「……んん」
「……うん?」
扉の向こうから僅かに聞こえるのはエステルの声。
普段の子供っぽい快活さはなく、弱々しく戸惑いのある声だった。
「エステル様……!?」
「んふぃひょほほほほほほほ!」
「な、何っ!? これ絶対ヤバい奴だ……!」
次に聞こえてきたのはエメルダの奇声。
「エステル様……っ!」
もはや命令だとか立場だとか、そんな事を言っている場合ではなかった。
伊織はエステルを助ける為に扉を開け放つ。
豪奢で巨大なベッドの上で、一糸纏わぬ姿のエステルに同じく一糸纏わぬエメルダが覆い被さっていた。
ベッドの下の脱ぎ散らかされた衣服の中に似たデザインの布地が見える。
サイズが違うので分かり難いが、同じデザインの下着を着用していたらしい。
「何してるんですかっ!?」
「あ、貴女! 命令に背いて何を……」
「罰は後で如何様にも受けます! それよりもこの状況はなんですか!?」
「ど、どうしたのじゃイオリ? 何をそんなに怒っているのじゃ?」
「何をって……エステル様が何をされていたか自覚はありますか?」
「う、む? 姉妹なら普通の事なのであろう?」
「そ、そうですわ! 貴女の世界ではどうか知りませんけれど、我がヴァルドハイムにおいての姉妹のスキンシップは一般的な事ですのよ!」
「うぐ……!?」
そう言われると伊織は弱い。
日本から転移してきてまだ一月も経っておらず、この世界の事を知り尽くしているとはとても言えない。
実際にハーフに対する差別意識が桁違いで酷いのもあり、もしかしたら……という思いが頭を過る。
「……ん?」
そんな時、ふと昼間ミレーヌに言われた言葉と手紙を思い出した。
エメルダに惑わされた時に手紙を見て欲しい、と。
「……!」
伊織は懐から手紙を取り出し、広げる。
「姉妹同士で裸で抱き合うのは一般的ではありません。 by ミレーヌ・アゼレーレ。
違うじゃないですか! 姉妹同士でこんな事するの普通じゃないって書いてありますよ!?」
「ぐぬぬぬぬぬぬぅ……! あの女狐余計な事を……! はっ!? もしかして……!?」
ぐぬぬ、と地団駄を踏むエメルダは突如冷静になり、ふぅ……と深く息を吐いた。
「漂う風の精霊よ、どうか貴方達の通り道を教えて下さいな……サーチ!」
エメルダがそう言って手をかざすと、部屋の中を心地よい微風が吹き抜ける。
「……そこ!」
「くっ!?」
エメルダが暴風の塊を放つ。
ベッドを俯瞰する箇所が揺らいだかと思うと、そこから天井から吊るしたロープにしがみついているミレーヌが姿を現した。
「やっぱり女狐でしたのね!? 道理でお姉様の付き添いに来なかった筈ですわ!
予め忍び込んで隠蔽魔法で身を隠す為だったのですわね!?」
「バレてしまっては仕方がありません。ですが、目的の物は得ました……!」
「まさか……っ」
「エメルダ様のご想像の通りかと。あられもない姿でベッドに横たわるエステル様の写真です……!」
「ずるいですわ! 私にも寄越しなさいな!」
「何を言いますか! 姫様にお揃いの破廉恥下着を贈ったばかりか、こんな破廉恥スキンシップまでしておいて……!」
「そちらは毎日一緒にお風呂に入ったり添い寝したりているでしょうに……!」
ギャーギャーと言い合うミレーヌとエメルダ。
事態が飲み込めずキョトンとしているエステル。
「エメルダ、魔法を使いましたか!?」
そして、駆け込んできたジェラルド。
部屋の狂騒を目の当たりにした彼は頭を抱えて重い溜め息を吐き出した。
「イオリさん、説明をお願い出来ますか?」
◇◇◇◇◇
「なるほど、エメルダと姉さんがそんな事をしていたとは……」
取り敢えず落ち着かせ、エステルとエメルダに服を着せて。
伊織から説明を受けたジェラルドは再び深い溜め息を吐き出した。
「エメルダやミレーヌさんが姉さんの事を好いてくれているのは嬉しいですが……やりすぎはいけませんよ」
「はい……」
「申し訳ございません……」
正座で反省の意志を示すエメルダとミレーヌ。
ベッドに座った伊織に抱えられているエステルは相変わらず良く分かってなさそうだ。
「実際のところエステル様と何処までやってたんです?」
「キス以上の事はしてませんわ! それ以上となるとお姉様には早すぎますもの」
「む、妾を子供扱いするでないっ!」
「落ち着いてくださいエステル様……」
膝の上でぷんすかと怒るエステルを宥めつつ。
伊織はあの行為を一般的な姉妹のスキンシップだと言われてあっさり信じる無垢さを愛おしいとも恐ろしいとも思った。
「仕方ないですね……イオリさん」
「は、はい!」
「部外者、どころか異世界出身の方に頼むのもどうかと自分でも思うのですが……姉さんの教育をお願い出来ませんか?」
「……はい?」
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