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※第61話 最強の剣と盾

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あらすじ

ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - ※第61話 最強の剣と盾

本文

「しっかり捕まっておるんじゃぞ!」

「はい!」

「ほらほら、もっとくっつかないと!」

石鹸の香りを漂わせながら腰に抱き着いてくるナオを鬱陶しいと思いつつ。

しかしバランスを崩したり落ちたりすれば大惨事なのでおとなしく受け入れる。

エステルの鉄箒の出力を高め、伊織とナオを無理矢理運搬する。

その為の発射台と魔法陣、魔力提供の協力者の選定も終えていよいよ飛び立とうという時だ。

「良いか、この作戦はタイミングが重要だ。

こちらも攻めるが、イオリ達の掌握が遅れてしまえばこちらか磨り潰される。

こちらの対応が遅れれば、イオリ達は孤立してしまう。

早期に敵の総司令官……マガーガル。あのヒゲ面を仕留め、通話石でその事を知らしめろ。

その後は深入りし過ぎない程度に後方から噛み付いてくれ。通話石の使い方は覚えたな?」

「はい。そんな便利な物があるんですね……エステル様は鳥で手紙のやり取りをしていたのに」

「あの男が姫様にそんな高価な物を渡す筈が無いでしょう。まったく腹立たしい。

イオリ様、ナオ。どうか己の生存を最優先になさってください」

「はい」

「努力しまーす」

作戦の最終確認を行うザフィアと、エステルの待遇にぷりぷりと怒るミレーヌ。

それに対し伊織とナオは返事を返し、一つ深呼吸。

「確認は済んだかの? そろそろ行くぞ! 『バン・ト!』」

エステルが魔法を発動させると、地面に描いた魔法陣が淡い光を放つ。

そしてそこから伸ばした線の先……他の魔法使いから送られてくる魔力がエステルの中に流れ込む。

「『バン・ト!』『バン・ト!』『バン・トッ!!』」

『バン・ト』を重ねがけし、爆発力を溜め込む。

溜めて、溜めて、溜めて。

「行くぞ! 『フライ!』」

三人を乗せた鉄箒が飛び出した。

今まで経験した事の無い加速。

バタバタと髪が暴れ、服がはためき、強風が身体を叩き付ける。

「すぐに目標地点に着くぞ! 3、2、1、離せ!」

エステルの合図と共に伊織とナオは鉄箒から手を離す。

慣性に従い、猛スピードで落下していく。

「バントォ!」

そして司令部の屋上に墜落する直前。

伊織は手を繋いで共に落ちるナオにバントを発動。

ナオの身体とそれに連なる自分の身体が慣性を失ってふわりと浮き上がり、

それぞれ両の足で屋上に着地した。

エステルは本陣まで帰投し、総大将の役割を真っ当する。

間もなくザフィア達が進軍する筈だ。それまでに仕事を済ませなければ、と伊織はふっと息を吐いて気合いを入れた。

「て、敵襲! イオリとナオが司令部にぃっ!?」

「うるさーい」

真っ先に声を上げた弓兵はナオの放った剣によって脳天を貫かれた。

屋上に居た敵兵全ての視線が突き刺さる。

「じゃ、やろっか」

「無駄な殺生は避ける約束だった筈だけど?」

「何度も言うけど、敵を殺すのは無駄じゃないよ。

どーしても納得いかないって言うなら後で幾らでもお仕置きしてくれて良いから、ね!」

ナオが両手を動かす度に無数の刀剣が宙を舞い、敵を切り刻む。

ナオが屋上の敵を鏖殺するのに然程時間は掛からなかった。

「あ」

カンカンカン、と非常事態を告げる警鐘が鳴り響く。

「流石にコッソリとは行かないかー。ま、カンケー無いけどね。行こ、伊織ちゃん」

「ナオ、さっきは攻撃に振りすぎ。前戦った時はもっと剣を近くに寄せて防御に回してたのに」

「今は伊織ちゃんが守ってくれるし?」

「気が進まないなぁ……」

「それでもやってくれるのが伊織ちゃんだよねー。

もー、伊織ちゃんってば本当に頼りになるなぁ」

「くっつかないで」

「いけずぅ! もー、司令官とやらを殺ったらまたご褒美貰うからね!」

「約束はしないよ」

二人は屋上の扉を開いてる司令部に侵入する。

警鐘により何かが起きた事は理解しているが、正確に何が起こったのかまでは伝わりきっておらず……ナオが近くにいた兵士を数人斬殺した所で司令部は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなる。

「ナオとイオリだ! 総員、奴等を打ち取れ! 撃ぇ!!」

「バント!」

「えい」

伊織が敵の攻撃を防ぎ、ナオが剣を振るい敵を討つ。

そもそもが屋内で一度に大人数が集まれない事もあり、この部屋はあっという間に血の海へと変わり果てた。

「終わりっと! ボスの部屋は何処かなー?」

「バント!」

「わ」

隠れ潜んでいた敵兵が矢を放ち。

しかしその矢は伊織に弾かれ、ナオは驚きつつも剣を放って返り討ちにした。

「……わぁ」

「なに?」

「アタシの事守ってくれたんだよね? うわうわうわヤバ……! 結構キちゃった……っ♡」

「くねくねしてないで早く行くよ」

「はぁい」

返り血を浴びた姿に似つかわしくない、とろんとした笑みを浮かべるナオを急かして伊織は先に進む。

幾重もの敵を切り伏せながら進むと、重厚なを扉が現れた。

「おっじゃましまーす!」

「く、遂に此処まで来たか……!」

「将軍! お下がりを……ぐぁ!?」

護衛の兵士をあっさりと斬り伏せて、ナオは部屋の奥にいた男……マガーガルへと歩み寄る。

「降伏して投降呼び掛けて?」

「断る! 私は誇り高きヴァルドハイム軍人であり……」

「あっそ」

「ぎっ」

「ナオ! 先ずは交渉して降伏勧告するって……」

「したじゃん? 断られたじゃん? じゃあ時間掛けるだけ無駄だよねーっと」

伊織の叱責を聞き流し、ナオは通話石に目を向ける。

「どれが現場指揮官でどれが城門だろ……ま、全部に言えば良っか。

えー、テステステス……こちら反乱軍のナオと伊織ちゃんだよー。

司令官のマルーガルは殺りましたー。

死にたくなければ武器を捨てて投降する様に。

城門はすぐに開ける様に。これから下に降りていくから、まだ抵抗する奴は殺す。

城門が開いてなかったら担当を殺す。

アタシ達が通る時に壁を向いて手を付いてない奴も殺す。

じゃ、そーゆー訳だから」

「ナオ、そんな言い方したら混乱が……」

「いーじゃん別に。ほら、行こ行こ! 早く終わらせればそれだけエステルちゃんも安全になるんだからさー」

「もう……」

勝手な言い分ではあるが、やってしまったからにはこちらも動くしかない。

ナオを止められなかった落ち度の叱責は後で受けるとして、まずは双方の被害を抑えるべく司令室を飛び出した。

◇◇◇◇◇

結果として……被害が抑えらたかどうかは分からないがビセット攻防戦は想定よりも早く決着が付いた。

二人が現場まで向かい城門を開けさせた事。

そこから二人が王国軍の背後に陣取り、挟み撃ちの状況を作り出した事。

複数の部隊が突破を試みて、伊織に弾かれナオに壊滅させられた事実を認識し。

司令官を失い、背後をナオという殺人鬼に取られた王国軍はパニックによりその大多数が麻痺し……現場指揮官の降伏宣言により、この戦いは終結した。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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