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第65話 決着

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あらすじ

ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第65話 決着

本文

「あ、え……?」

「なんじゃあの大きさは!? あれではネサラ平原をまるごと飲み込みかねんぞ!?」

エステルの予想が正しいのか、現時点では分からない。

しかしこの場の大多数は同じ想像を浮かべ、絶望した。

「政府は本気で俺達ごと反乱軍を殺すつもりだ!」

「王国の奴等、イカれてやがる……!」

「何でも良い! とにかく少しでもここから離れるんだ!!」

『総員、聞いてください! 王国軍も反乱軍もです!!』

両軍がパニックに陥り、麻痺しかけた瞬間。

ジェラルドがその両軍に向かって声を掛けた。

『僕達はあんな下らない物で死ぬ為に此処に来た訳じゃない!

両軍共に戦闘行為を停止し、生き残りを優先するべきだ!

両軍は王都に向かって全即前身! 流石に王都まで巻き込む規模では無い筈です!

間に合わない、などという弱音は禁止だ! さぁ、走って!!』

「う」

「うぉ……」

「「「うおおおおおおおおおおおッ!?」」」

ジェラルドの激で両軍はお互いに反発し合う事もなく一目散に王都を目指す。

『倒れた者は反乱軍であっても手を取って! 一人でも多く生き残る事こそが僕達を裏切り、切り捨てた者への報復となります!!』

「イオリ、妾達も……」

「間に合いますか? 助かりますか?」

「それ、は……」

「空を飛んでいる私達なら兎も角、下の人達では流石にアレが着弾する前に王都に入るのは不可能です。

……エステル様、私を信じてくれますか?」

「……何か手があるのじゃな?」

「人生で一度も成功した事はありません。

仮に成功したとしても、望む結果になるかは分かりません」

「構わぬ! 今この場では妾が死のうと被害に差は無い。ならば挑戦するのも一興じゃ」

「ありがとうございます」

「妾は何をすれば良い?」

「真っ直ぐ進んで、さっきよりも思いっ切り回転してください」

「任せよ! 『バン・ト!』」

エステルは鉄箒の出力を更に上げて黒球体に真っ直ぐ、何の躊躇いも無く突っ込む。

「行くぞ!」

「はいっ!」

伊織は十数年の野球人生で"ソレ"を打った事が無かった。

惜しかった時や挑戦した事はあったが、ついぞ打てた事は無い。

故に伊織はソレを諦め、何時しか割り切って打席に立っていた。

(けれど、それでも……!)

伊織はバットを握り締める手に力を込める。

(もう打てなくても良い。これが最初で最後で良いから。

野球の神様っていうのが本当に居るなら……今だけ、打たせてください!)

エステルは黒球体に肉薄し、一回転して遠心力を乗せ。

伊織はそれに完璧に合わせ、バットを振った。

「ホーム……ランッ!!」

バットに打たれた黒球体は速い速度を維持しながら高く高く打ち上がり……

「爆ぜた……」

空高く飛んでいた鳥やワイバーンが絶命し、地に落ちた。

しかし……

「生きてる……」

生きていた。

空中に居る伊織とエステルも。

当然地上の者達も。

「助かった、のか?」

「あぁ! エステル様とイオリさんがやってくれたんだよ!」

「い、生きてた……」

「私、私達……生きてる!」

地上の誰もが生存を喜び合い、抱き締め合い、やがてそれは大きな歓声となってネサラ平原を包み込んだ。

「ミレーヌ、拡声魔法を!」

「はっ!」

地上に降りたエステルはミレーヌに拡声魔法を頼んだ。

ミレーヌはそれに従い拡声魔法を行使し、エステルは両軍の者達に向けて語り掛ける。

『反乱軍よ! 我々の敵は王国軍にあらず悪政王アーヴァインである!

そして王国軍よ! 愛する家族と王の為に立ち上がった戦士達よ!

王はお主達に何をした? お主達を巻き込む事を承知で呪いの黒玉を撃ってきたのじゃ!!』

エステルの演説に両軍の者達は耳を傾ける。

『王国軍は、お主達は! このまま我等と戦うか!? 我等は未だに敵同士なのか!?

否! 否じゃ!! 我等が剣の切っ先を向ける相手はただ一人!

お主達を排斥し、或いは裏切った卑劣なる悪王、アーヴァイン・ゴル・ヴァルドハイムただ一人であるっ!!』

「「「おおおおおおおおおおっ!」」」

『我等が向かうは前方の王都、アゼルロート!

一丸となって進み、アーヴァインを打倒するのじゃ! 全軍、進めー!!』

「「うおおおおっ!!」」

エステルの号令により、反乱軍と王国軍は肩を並べて王都を目指して歩出した。

◇◇◇◇◇

ジェラルドが先鋒を務める連合軍に、残った王都に残った守備兵が対抗出来る筈もなく。

然程時間も掛からず城門が開かれ、エステル、伊織、ジェラルドを始めとした主要人物が王城に立ち入った。

「……む?」

王城のエントランス。

その中央に鎮座する三つの人影。

その内両端は手足を縛られ正座する王妃とエメルダ。

その間には同じく縛られてはいるが、どうにか抜け出そうとしている国王アーヴァイン。

「これは……どういう事じゃ?」

「お父様は疎かにも禁術を用い、お兄様ごと反乱軍を始末しようとしました。

この戦いに勝利したお兄様が発言力を強め、クーデターを起こしやしないかと疑っていたのです」

「それは……確かに愚かと言う他無いな」

「そんなお父様を止められなかった……これは城に残っていた王族の責任ですわ。

故に私達はこうして自らを縛め、身を差し出ているのです。

此度の勝者はお姉様です。どうか、煮るなり焼くなり好きにしてくださいませ」

「まったく……ミレーヌ、母上とエメルダの縄を解いてやってくれ。

父上は……誰か牢に連れていくのじゃ」

「待て、私は王だぞ! 貴様の父親だぞ!

そんな私を牢に入れると言うのか!?」

「……連れていけ」

「貴様等はこの様な混ざり者に従うと言うのか!

離さんか! この……エステル、この恩知らずめが!」

「早く連れて行け! 妾はお主に恩など欠片も感じてはおらぬ!」

「エステル! エステルゥゥゥゥ!」

「……ふぅ」

最後まで無様に足掻くアーヴァインが地下牢へ引っ立てられていき。

その姿と声が知覚出来なくなった事を確認し……エステルは伊織に凭れかかった。

「疲れた……」

ただ一言……そう呟いて。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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