第8話 先生が来た

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/6 📚 シリーズ: まるふく日和 📝 2,243文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

まるふく日和 - 第8話 先生が来た

本文

「こんばんは」

「いらっしゃい。あ、久しぶりじゃん鈴華」

「忙しくてね……茂さんと徳さんもこんばんは」

「おー、疲れてんなぁ」

「やっぱ教師は忙しいか?」

「まぁ……ですが好きで始めた事ですし。

千紘、月見うどんをお願い出来る?」

「はいよ」

そう言って一ノ瀬 鈴華(いちのせ すずか)は笑いながら席に着く。

鈴華は私の中学高校の同級生。小さい頃からの夢を叶えて教師になった。

「ねぇ、噂の柚葉ちゃんは今日はお休み?」

「あぁ、柚葉なら……」

「ただいまー!」

事情を説明しようとするタイミングで件の柚葉が元気いっぱいに引き戸をガラッ!と開け入って来た。

「お帰り柚葉。ほら、お客さんだよ」

「あっ⁉︎ いらっしゃいませっ!」

「えぇ、こんばんは。お使い行ってきたの?」

「はいっ!」

「柚葉ー、手ぇ洗って買った物冷蔵庫に入れといて」

「分かったっ!」

柚葉は茂さんのお使いの失敗を経て……そこから立ち上がり、何度かお使いを成功させて自信を付けた。

それからはちょくちょくお使いをさせている。

今回は天ぷらに使うエビとかき揚げ用の野菜を買って来てもらった。

「柚葉、月見うどん。トッピングしてあげて」

「はーい!」

冷蔵庫に仕舞い終えた柚葉に場所を譲る。

当初はおっかなびっくりだった手付きも今では随分と様になったものだ。

卵に関してはまだ覚束ないけど……あ。

「あわわわわわわわ崩れちゃった……」

「あぁ、大丈夫ですよ」

「ごめんなさい……おまちどーさまでしたっ」

「悪いね」

「良いわよ。最初に玉子を解くのも美味しいから」

鈴華はチャカチャカと玉子を掻き混ぜ、うどんを絡ませて一啜り。

相変わらず所作の一つ一つが上品だ。

「椎名 柚葉ですっ!」

「え、あ、一ノ瀬 鈴華です」

「いやー……ごめんね?」

『まるふく』に来た初対面の相手に自己紹介する……が染み付いたのか、唐突に名乗り出した。

鈴華は流石教師。即座に反応してくれた。

「鈴華は教師なんだよ。学校の先生」

「先生……! 雲母やこーすけの先生なの?」

「雲母は高校。こーすけは小学校ね。鈴華は高校教師。

鈴華と雲母は学校違うけどね」

「へぇ〜?」

「良く分かってないでしょ? まぁ、学校にも色々あるって事」

「……椎名さん。椎名さんは学校に行きたいと思いますか? 学校や勉強に興味とかは?」

「え、う……えっと……」

「正直な気持ちを言えば良いよ」

「その……知らない人がいっぱい居るのは、怖い……」

「そうですか……すみません、椎名さんを無理矢理学校に行かせたい訳では無いんです。

ただ、機会を求めているのならそのお手伝いをしたいと……」

「分かってるよ。ありがとうね、鈴華。

でも今の柚葉はまだ勉学よりも先に学ばないといけないの事も多いから」

「そう、ね……少しテストしても良い?」

「どうぞ」

「ありがとう」

バッグからペンと手帳を取り出してサラサラと問題文を作る鈴華。

随分スムーズだけど、食べながら作業する事に慣れてるのかな。

慣れてるんだろうなぁ……いつも忙しそうにしてるし。

「この問題を解いてくれますか?」

「うん!」

出されたのは算数の問題。

学年は分からないけど、柚葉は式を駆使しうんうんと唸りながら問題を解いていく。

「出来た!」

「見せてください……はい、全問正解です。素晴らしいですね」

「……!」

分かり易く柚葉の顔が綻ぶ。

かなり簡単だったけど……柚葉に最低限の計算能力があるか見てみたかったのかな。

「柚葉は駄菓子屋から始めて、今はもうお使いも出来るからね。

町の人達も事情を知ってるから、柚葉が計算し終わるまで待ってくれてる。

それでも詰まる時は解き方を教えてくれたりね。

おかげでドンドン計算が上手くなってるよ」

「みたいですね。椎名さんも茂さんや徳さんのお使いを?」

「そーそー。寧ろソレがキッカケ」

「ふふ、二人共変わりませんね」

「そりゃ若者の面倒を見るのが生き甲斐だからな!」

「柚葉の知ってる範囲だと、最初のお使いをちゃんとにやれたのはすず子だけやったなぁ」

「そうなの?」

「あぁ。かー坊は何を買えば良いのか忘れて待ち惚け。

けん坊はそのままネコババしてプラモを買いやがった」

「ひろ子はわざと一番安い羊羹を買って釣り銭ちょろまかしたりな」

「もう、勘弁してよ。反省してるんだからさ」

「がっはっは! そんなガキ共が今や立派に大人やってて、お使いやらした甲斐があるってもんよ」

「すず子はちゃんとにお使いやって、キッチリ学校通って教師になったんやからな。立派なもんやで」

「うん。ほんと凄いよ鈴華は」

「やめてください……! ねぇ、椎名さん。椎名さんは将来の夢とかありますか? やりたい事とか」

「千紘と一緒に居たい!」

照れくさいのか急に話題を変えてきた。

振られた柚葉は即答。でもそれは答えになってないよ。

「そうじゃなくてさ。お使いで色々なお店行ったでしょ?

何かこの仕事やりたいなーって思わなかった?」

「千紘と『まるふく』やる! うどん作れるようになるっ!」

「そっかぁ……」

鈴華は複雑そうに笑う。私も似た様なものだろう。

精算度外視。あくまで交流の場として開けている『まるふく』。

仮に後を継いだとしても『まるふく』だけでは生きていけないんだから。

「他に無いの?」

「ほか? うーん……」

柚葉は腕を組んで眉根を寄せて考え込む。

鈴華が食べ終わった月見うどんの丼を下げて洗う間もうんうんと唸っている。

やがてテレビの野球中継が9回を迎えようと言う瞬間。ようやく柚葉が口を開いた。

「ベーゴマの……プロ」

「ベーゴマかぁ」

ベーゴマのプロって居るのかな。

居たとして、それで食べていけるのかなぁ……

ジャンル・タグ

, , , , , , ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 0 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

👥 フォロワー: 8人

作者ページを見る