第18話 『まるふく』大繁盛
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あらすじ
まるふく日和 - 第18話 『まるふく』大繁盛
本文
「きつねうどんとたぬきうどん!」
「はいよ! 肉うどんトッピングお願い!」
「分かった! んしょ……どうぞ! 熱いので気を付けてくださいっ!
あ、いらっしゃいませっ! そこの席に座ってください!」
「可愛い〜!」
「写真良いですか?」
「ん? ピース!」
「店内での撮影はご遠慮ください」
「⁉︎ 千紘がダメってゆってるからダメ!」
「そっかー……」
案の定テレビ効果で『まるふく』は大繁盛(単価が安いから利益が大きく伸びたりはしないけど)。
私はうどん、柚葉は接客やトッピング、会計担当。
当然だけど今まで体験した事が無い忙しさ。
前原さんの言う通り臨時休業の選択肢も考えなくもなかったけど、やっぱり『まるふく』の理念としては出来る限り休みたくない。
それにこんなに大勢のお客さんを捌くのは柚葉にとっても良い経験になる筈。
「写真撮って良いですか?」
「ダメ!」
「はぁーい」
来ている人の大半はテレビに映った柚葉や私、そしてただ“話題のうどん屋”に来るのが目的。
男性客は大っぴらに柚葉が目的とは口に出し難いけど、女性客は堂々と柚葉を愛でる。
柚葉が褒められるのは嬉しいけど、流石に無防備に写真を撮らせるのは危ないので店内撮影は禁止した。
茂さん徳さんには今日は席が無いと謝ったけど、これまで見た事がない行列に寧ろ楽しそうにニヤニヤしていた。
「柚葉、月見うどん!」
「ん……! お待ちどーさまでした! 熱いです!」
余りの忙しさに言葉も省略し出した。まぁ、これも可愛らしいとお客さんは大喜びだから今は言うまい。
「柚葉、きつねうどんと天ぷらセット」
「はい! どうぞ! あつあつサクサクです!」
うーん、可愛い。
◇◇◇◇◇
「ぷひゅぅ……」
「お疲れ様。遊んできて良いよ」
「ん……! がんばる!」
「そう?」
『まるふく』は14:00になり昼休憩……と言いつつ、天ぷらとおにぎりは提供している。
予め用意していた物を温めるだけだから、普段なら柚葉は駄菓子屋に向かって子供達とベーゴマで激戦を繰り広げているところだけど……今日はお客さんが多いから店に留まって手伝うつもりらしい。
「外の人に言ってくるね!」
柚葉は張り切った顔で出入り口に向かって引き戸を開ける。
そのまま外に出たかと思うと「17時までうどんは出ないよ! おにぎりと天ぷらは有るよー!」と並んでるお客さんに呼び掛けた。
どんどん頼もしくなっちゃって。
◇◇◇◇◇
「はい、たぬきうどんにおにぎりセットですね」
「50円のお返しです。ありがとうございました」
日曜日。予想通り客足は鈍ってきた。
『まるふく』は地元の人が通う交流場。
安さが売りだけど、地元じゃない人からしたら交通費を合わせれば割高。
狭いから一度に数人しか入れず、炎天下の中並ばされるけど……そこまでして食べたい物じゃない(うどん熱いしね)。
更にはNSN映えしない。そもそも店内撮影禁止にしてるし。
人気が人気を呼んでた初日とは逆。人が少なくなって話題が盛り下がれば、その分人が減るのも早くなる。
ただ日曜と言う事で多少また人が増えて……『まるふく』の従業員も増員した。
……というより、常連さんが面白がって手伝いを買って出た。
まぁ、大変そうな私や柚葉を助けたいっていうのが本音だろう。
お礼は終業後のうどんで良いと押し切られてしまった。
私はうどん、柚葉はトッピング。
雲母は接客と注文。
かー兄は会計(規約的にレジ操作は柚葉がやらなきゃだから、あくまで計算だけ。それでも柚葉が一人でやるよりはずっと早い)。
けん兄はデカくて店が狭くなるので買い出し担当。
この二人が居るからか、撮影交渉をしようとする配信者はグッと減った。かー兄もけん兄もコワモテだからね。
ちなみに茂さん徳さんは何処かからビールを買ってきて繁盛する『まるふく』を眺めていた。呑気な事で。
そんなこんなで、みんなのおかげで順調に回ってリズムも掴み始めた。
昼休憩まで後一時間。そうしたら順次昼食を食べてもらって……
「横入りすんなよ!」
「うるせぇ! こっちはうどんを食いに来た訳じゃねぇんだよ!」
「うん?」
トラブルか、と思い外の様子を見ようと一歩踏み出した瞬間。
ガラッと乱暴に引き戸が開けられて……
「柚葉ー! こんなところに居たのかー⁉︎」
「心配したんだから!」
柚葉の名前を叫びながら中年の男女が慌ただしく入ってきた。
「ぬぁーーー!!」
「どうどう」
その二人を視界に収めた柚葉は烈火の如く怒り、小さい拳を振り上げて殴り掛かろう……としてけん兄に片手でぷらんぷらんと持ち上げられていた。
それで、分かった。
柚葉がこんなにも嫌う人間なんてアレしか思い浮かばない。
「どなたですか? ウチの柚葉に何か御用でも?」
「御用だと⁉︎ あるに決まってんだろ!」
「アタシ達はあの子の親なんだからね!」
やっぱり。
柚葉を産み……それなのに禄な世話も教育もせずに放ったらかし、生きる術を何も教えずに18歳になった途端に家から追い出して柚葉の人生を踏み躙った“元凶”だ
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