第9話:再現される妄想と、開かれたボタン
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第9話:再現される妄想と、開かれたボタン
本文
「……ふぅ、やっぱり暑いです」
リリは上気した頬(演技半分、興奮半分)を手で仰ぎながら、ゆっくりと立ち上がった。
狙うは、さっき見た『眼鏡の奥の淫らな素顔』のクライマックスシーン――「暑さに耐えかねて、委員長が自ら制服を乱す」場面の再現だ。
(さあ、見てて。貴方の好きな『地味子が乱れる姿』を見せてあげる……!)
彼女は、ケンジに買ってもらった「鉄壁のパーカー(裏起毛)」の裾を掴んだ。
よいしょ、と腕を上げる。
スポンッ。
厚手の布が取り払われると、そこにはあの純白のブラウスが現れた。
「っ……!」
ケンジの喉が鳴る音が、静かな部屋に響いた。
彼の視線は、リリの上半身に釘付けだ。
パーカーの下で蒸されたせいで、ほんのりと汗ばんだブラウスが肌に張り付いている。
その向こうに透ける、黒いレースの下着のライン。
それは、昨晩彼が穴が開くほど見つめた「二次元の彼女」と、残酷なほどに重なっていた。
(や、やばい……デジャヴだ……! 昨日の漫画と構図が同じだ……!)
ケンジは必死に理性を総動員して、視線を逸らそうとした。
だが、リリの追撃は止まらない。
「まだ……暑いかも」
リリは艶っぽい吐息を漏らすと、ブラウスの第1ボタンに手を掛けた。
震える指先。
恥じらうような表情(※「早く襲って」と念じている顔)。
プチッ。
小さな音と共に、一番上のボタンが外れる。
白い襟元が緩み、華奢な鎖骨が露わになる。
(ま、まさか……まだ開ける気か!?)
ケンジの予感は的中した。
リリの指は、そのまま第2、第3ボタンへと進んでいく。
プチッ。
……プチッ。
胸元の合わせ目が、V字に大きく開いていく。
そして、ついに。
清楚な白生地の奥から、豊満な胸の谷間と、それを包む淫靡な黒レースが「こんにちは」した。
「あ……」
リリはわざとらしく声を漏らし、自分の胸元を隠すふりをして、逆に強調するように腕を寄せた。
ギュッと寄せられた胸肉が、存在感を主張する。
(どう!? これが見たかったんでしょ!? さあ、我慢しないで飛びかかってきて!)
リリは期待に胸を膨らませ(物理的にも)、潤んだ瞳でケンジを見つめた。
部屋には、濃厚な甘い香り――彼女から発せられるフェロモンが充満し始めていた。
一方、ケンジの脳内サーバーはダウン寸前だった。
(あわわわわわ! 見えてる! 谷間が! 黒レースが! 現実のリリさんが、俺の妄想以上にエロいことになってる!!)
昨日の妄想が現実に侵食してくる。
このままでは、俺の中の獣が鎖を引きちぎって暴走してしまう。
いや、それ以前に、こんな無防備な姿をさせておくわけにはいかない!
「リ、リリさん!!」
ケンジは悲鳴のような声を上げて、立ち上がった。
襲いかかる勢いではない。
溺れる人を助けるような必死の形相だ。
「だ、だだだ、大胆すぎるよ! エアコン! エアコン強にするから! だからボタン閉めてぇぇぇっ!!」
彼はリモコンを掴んで連打し、同時にリリに背を向けた。
直視できない。
これ以上見たら、俺は人間をやめてしまう!
(えぇっ!? なんで!?)
リリは呆然とした。
完璧な再現だったはずだ。
なぜ彼は襲ってこない? なぜ背を向ける?
もしかして――『まだ足りない』のか?
(そうか……本の中の委員長は、もっと『隙』を見せていたわ。ただ見せるだけじゃダメ。もっと決定的なアクシデントが必要なんだわ!)
リリの瞳に、危険な光が宿る。
混乱するケンジの背中を見つめながら、彼女は次なる一手――「強制接触事故」の準備を始めた。
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