第11話:絶望からの帰還と、鉄の誓い
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第11話:絶望からの帰還と、鉄の誓い
本文
バタンッ!!
玄関のドアが乱暴に閉まる音が、俺のワンルームに虚しく響いた。
「…………終わった」
俺、佐藤ケンジは、リリさんが座っていたベッドの縁に崩れ落ちた。
最悪だ。人生で一番最悪の結末だ。
あんなに清楚で、男性慣れしていない純朴な女の子に、俺はあろうことか――勃起したモノを押し付けてしまったのだ。
「『立派すぎて』……って、震えてたな……」
彼女の最後の言葉が脳裏をよぎる。
あれは褒め言葉じゃない。「ドン引き」の婉曲表現だ。
獣を見るような目。怯えきった顔。
完全にトラウマを与えてしまった。
「通報されなかっただけマシか……。ごめん、リリさん。俺みたいなケダモノは、一生孤独に死ぬよ」
俺はスマホを握りしめ、ブロックされるのを覚悟で画面を見つめていた。
一時間。二時間。
通知は来ない。
当然だ。あんな変態、即ブロック&削除が妥当だ。
諦めて、アプリのアンインストール画面を開こうとした、その時だった。
ポロン。
通知が来た。
『リリ』。
心臓が止まるかと思った。恐る恐るメッセージを開く。
『今日はすみません。急用を思い出して、勝手に帰ってしまって……。また、お会いできますか?』
「……は?」
俺は三回読み直した。
怒ってない? 通報もしない? また会える?
……天使か? この子は天使の生まれ変わりなのか?
いや、違う。これは「ラストチャンス」だ。
首の皮一枚、蜘蛛の糸一本で繋がっただけの、ギリギリの慈悲だ。
もし次、また俺が「男」の部分を見せたら、今度こそこの細い糸は切れるだろう。
「……誓うよ」
俺はスマホに向かって、独り言を呟いた。
かつてないほど真剣な顔で。
「俺はもう、二度と欲情しない。リリさんの前では、俺は去勢された僧侶になる。指一本……いや、空気ですら彼女を汚さない!」
俺は己に「鉄壁のガード」を課した。
童貞卒業? 知ったことか。
俺の使命は、この天使のような女の子を、俺自身の汚らわしい性欲から守り抜くことだ!
***
一方、その頃。
リリは自室の布団の中で、頭を抱えてのたうち回っていた。
「うあぁぁぁ……逃げちゃったぁぁぁ……!!」
情けない。サキュバス失格だ。
獲物のイチモツを見てビビって逃走なんて、魔界の教科書にも載っていない失態だ。
でも、怖かったのだ。あんな規格外のサイズ、私の許容量(キャパ)を超えている。
「でも……でもぉ……」
リリは自分の指先を見つめた。
さっき、彼に触れられた時に流れ込んできた、あの一瞬の精気の味。
濃厚で、甘くて、痺れるような極上の味。
「あんなご馳走、二度と味わえないかも……」
恐怖と食欲(性欲)の板挟み。
お腹は減った。でも怖い。でも食べたい。
「……連絡、しちゃった」
震える手で送った『また会えますか』のメッセージ。
既読がついた。返信が来る。
『もちろんです。僕の方こそ、不快な思いをさせてすみませんでした。次は、もっと健全で楽しいデートをしましょう!』
ケンジさんからの返信は、どこか悲壮な決意に満ちていた。
リリはそれを読んで、少しだけホッとした。
(よかった……嫌われてない。むしろ、反省してるみたい)
リリは拳を握りしめた。
チャンスはまだある。
あの「凶器」さえどうにかできれば、彼は最高のご飯なのだ。
「次は負けない。あの武器を使わせないように、うまくコントロールして……ソフトなプレイで美味しくいただくのよ、リリム!」
彼女は新たな作戦を練り始めた。
相手が「鉄壁の守り」を固めたとも知らずに、無謀な再挑戦が始まろうとしていた。
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