第12話:最適解のファッションと、聖域化する恋
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第12話:最適解のファッションと、聖域化する恋
本文
デート当日。鏡の前で、私は「ふふん」と鼻を鳴らした。
今回の私は、一味違う。
過去の失敗データを分析し、ついに「黄金の解」にたどり着いたのだ。
(スウェットは、色気がなさすぎて萎えられた。露出過多は、刺激が強すぎて彼が保護者モードになっちゃった)
つまり、正解はその中間。
「清楚で可愛らしいけど、ほんのり女の子らしさを感じる、普通のデート服」だ。
これなら、彼は警戒心を解きつつ、男としての本能をくすぐられるはず。
私は、通販で取り寄せた「小花柄のフレアスカート」と「パステルカラーのニット」に着替えた。
髪はいつもの三つ編み、顔には瓶底メガネ。
鏡に映っているのは、どこにでもいそうな、でもちょっと守りたくなるような「普通の女の子」。
「完璧。これなら、ケンジさんの『地味子好き』のツボを押さえつつ、自然な流れで『食事』に持ち込めるはず!」
私は意気揚々と家を出た。
この服が、彼にとっての「聖女の法衣」になってしまうとは露知らず。
***
待ち合わせ場所の水族館前。
ケンジさんは既に到着していた。
私が近づくと、彼はパッと顔を上げ――そして、固まった。
「お待たせしました、ケンジさん」
「……っ!」
ケンジさんの顔が、みるみるうちに茹でダコのように真っ赤になっていく。
口元を手で覆い、視線を泳がせている。
(キタ! 反応アリ!)
私は心の中でガッツポーズをした。
露出なんてしてないのに、この反応。
やっぱり、彼はこういう「普通の子」が好きなのだ。
私は畳み掛けるように、その場でくるりと一回転してみせた。
「今日の服、どうですか……? 変じゃないですか?」
「へ、変なわけないよ!!」
ケンジさんが食い気味に叫んだ。
「す、すごく可愛い……! その、リリさんの雰囲気にぴったりで、まるで……て、天使みたいだ」
「えっ、天使……?」
「あ、いや! そのくらい似合ってるってこと! すごくいいよ、本当に!」
彼は感動したように、何度も頷いている。
その瞳は、まるで尊い芸術品を見るかのようにキラキラしていた。
(やった……! 「いける」わ!)
リリは確信した。
こんなに褒めてくれるなんて、彼のハートは鷲掴みだ。
このまま水族館の暗がりに入れば、彼の方から手を繋いだり、キスしてきたりするに違いない。
そうすれば、少しずつ精気を吸って……うまくいけば、あの「凶器」も手なずけられるかも。
リリは余裕の笑みで、彼に並んだ。
「行きましょうか、ケンジさん」
「うん、行こう!」
しかし、彼女は気づいていなかった。
隣を歩くケンジが、鋼鉄の誓いを新たにしていたことに。
(可愛い……可愛すぎる!!)
ケンジの脳内は、リリへの賛美で埋め尽くされていた。
露出なんて必要ない。この普通の服こそが、彼女の清らかさを引き立てる最高の装いだ。
スウェットの時の生活感も良かったが、今日の彼女はまさに「理想の彼女」。
(こんなに清純で可愛い子が、俺のためにオシャレして来てくれたんだ。……俺は、なんて汚れたことを考えていたんだ!)
彼は拳を固く握りしめた。
(絶対に手出しなんてできない。こんな「天使」に、俺の欲望をぶつけるなんて言語道断だ! 今日は指一本触れないぞ。ただひたすら、彼女の笑顔を守るナイトになるんだ!)
リリの作戦は成功しすぎたのだ。
彼女の完璧な擬態は、ケンジの性欲を刺激するどころか、それを完全に封印する「尊さ」へと昇華させてしまっていた。
水族館の入り口ゲートをくぐる二人。
「隙あらば吸いたいサキュバス」と、「神聖にして不可侵を誓う童貞」。
暗闇の水槽エリアで、新たなすれ違いが幕を開ける。
作品統計
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