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第14話:おねだりのダブルミーニングと、密着の満員電車

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第14話:おねだりのダブルミーニングと、密着の満員電車

本文

水族館を出ると、辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。

 私の手には、まだケンジさんの手の温もりが残っている。

 チュッパチャプス一本分くらいの精気は補給できたけれど……これじゃあ、夜までは持たない。

 サキュバスの体は、もっと濃厚で、ガッツリとした「メインディッシュ」を求めている。

(……誘わなきゃ。今度こそ、決定的な場所に!)

 私は上目遣いで、隣を歩くケンジさんを見上げた。

「あの、ケンジさん」

「ん? どうしたの?」

「その……私、お腹が空いちゃって。……よかったら、この後『お食事』していきませんか?」

 私は精一杯の意味深な視線を送った。

 さあ、気づいて。この「食事」が、ハンバーグやパスタのことじゃないってことに!

「あ、そうだね! もうこんな時間だし」

 ケンジさんは爽やかに時計を見た。

「実は、二つ隣の駅に評判のいいイタリアンがあるんだ。そこに行こうか」

「あ、はい……(やっぱり伝わってないぃぃぃ!)」

 まあいい。移動して、お酒でも入ればチャンスはあるはずだ。

 私たちは駅へと向かった。

 しかし。

 改札を抜けた私たちの前に広がっていたのは、地獄絵図のような光景だった。

 帰宅ラッシュと、近くのスタジアムでのイベント終了が重なったのか、ホームは黒山の人だかり。

「うわ、すごい人……」

「だ、大丈夫? はぐれないようにね」

 ケンジさんが再び私の手を握ってくれる。

 電車が滑り込んでくる。車内は既に寿司詰め状態だ。

 でも、これに乗らないとレストラン(次の戦場)には行けない。

「乗ろう、リリさん!」

「は、はいっ!」

 私たちは人の波に押されるようにして、車内へと雪崩れ込んだ。

 ドア付近のスペースに押し込まれる。

 プシューッ。

 背後でドアが閉まる。

 その瞬間、さらに奥から人が押し寄せ、私の体はドアのガラス面にへばりつく形になった。

 そして、私の目の前には――。

 ドンッ。

 私の体を押し潰さないように、両手をドアに突いて空間を作ってくれるケンジさんの姿があった。

 いわゆる「壁ドン(満員電車ver)」の状態だ。

「くっ……! 大丈夫、リリさん!? 苦しくない!?」

「わ、私は平気ですけど……ケンジさんが……」

 ケンジさんの顔が、すぐ目の前にある。

 近い。あまりにも近い。

 彼の吐息が私の額にかかる距離だ。

 彼は周囲の圧力から私を守るため、必死に踏ん張ってくれている。

 そのおかげで、私の周りだけ奇跡的にスペースが……いや、ない!

 ググッ!

 電車が揺れ、さらに人が倒れ込んでくる。

 ケンジさんの腕がプルプルと震え、彼の体が私に押し付けられた。

「うぐっ……! ご、ごめんっ!!」

 謝られても、どうしようもない。

 私の柔らかい胸と、彼のたくましい胸板が、完全に密着して潰れ合っている。

 太ももと太ももが絡み合う。

 そして何より――。

(あたる……当たってるぅ……!)

 彼の下腹部の「アレ」が、私の下腹部にゴリゴリと押し付けられている。

 水族館での「手繋ぎ」なんて比じゃない。

 全身の接触面から、彼の昂ぶった精気が、濁流のように流れ込んでくる!

「んぅっ……♡」

 私は思わず声を漏らした。

 すごい。何これ。

 ビュッフェだ。精気の食べ放題だ。

 彼が「耐えなきゃ」と思えば思うほど、その我慢がスパイスになって、精気の味が濃厚になっていく。

(あぁ、幸せ……。もうレストランなんて行かなくていいかも……)

 私はトロンとした目で、目の前で脂汗を流して苦悶するケンジさんを見つめた。

 彼は今、聖人君子としての理性と、男としての本能の狭間で、孤独な戦いを強いられていた。

(た、耐えろ俺ぇぇぇ!! こんな満員電車で、あんな反応しちゃダメだ! リリさんに「痴漢」だと思われたら人生終了だ! でも……柔らかい! いい匂いがする! 無理ぃぃぃ!)

 電車の揺れに合わせて、二人の体が擦れ合う。

 それは、サキュバスにとっては天国への階段であり、童貞にとっては地獄への滑り台だった。

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りくりな

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