第23話:偽りのハイスペックと、修羅場のダブルデート
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第23話:偽りのハイスペックと、修羅場のダブルデート
本文
日曜日の遊園地。
ダブルデートは、予想通りの最悪な雰囲気でスタートした。
「見てよリリム。アランったら、昨日は高級フレンチを奢ってくれたのよ? それに比べて、あんたたちは……」
メリザは隣のアランの腕にベタベタと張り付きながら、勝ち誇った顔で私を見下ろした。
アランと呼ばれた男は、確かにモデルのように整った顔立ちで、ブランド物の服を着こなしている。
ただ、さっきからスマホばかりいじっていて、メリザの方を見ようともしないのが気になったが。
「ケ、ケンジさんだって素敵だもん……」
「はっ、どこが? そのユニクロコーデが?」
メリザが鼻で笑う。
けれど、ケンジさんは動じなかった。彼は私の歩調に合わせて歩き、人混みから私を庇うようにポジションを取っている。
「リリさん、足痛くない? 喉乾いてない?」
「あ、うん。大丈夫。ありがとう」
「無理しないでね。あ、そこのベンチ空いたから、少し座ろうか」
ケンジさんはハンカチを取り出し、ベンチをサッと拭いてから私を座らせてくれた。
アランはというと、自分だけ先にスタスタと歩いていき、「おいメリー、遅いぞ」と不機嫌そうに振り返るだけ。
(……勝ってる)
私は確信した。
顔や服の値段は負けてるかもしれないけど、彼氏としての「格」は、ケンジさんの圧勝だ。
焦ったのはメリザだった。
アランの塩対応と、ケンジのスパダリぶりの対比が、周囲の目にも明らかだったからだ。
「ちょっとアラン! もっとイチャイチャしてよ! 私たちがラブラブだってところ見せつけてやるんだから!」
「あー? めんどくせーな。あとでホテル行くんだから、今はいいだろ」
「ここでやることに意味があるのよ!」
メリザは無理やりアランの首に腕を回し、濃厚なキスを見せつけようとした。
その時だ。
「――ちょっと!! アラン!?」
鋭い女性の叫び声が、遊園地の喧騒を切り裂いた。
ビクッとして全員が振り返る。
そこには、鬼のような形相をした、ブランド物で全身を固めた美女が立っていた。
「げっ……ミカ……!?」
アランの顔が真っ青になる。
メリザがきょとんとして尋ねた。
「え、誰この女?」
「誰って……アランの本命彼女ですけどぉ!?」
美女(ミカ)がツカツカと歩み寄り、メリザを睨みつけた。
「あんた誰よ! なんで私の彼氏と遊園地なんて来てんの!?」
「はぁ!? 彼氏!? アランは私の彼氏よ! ねえ、そうよねアラン!?」
メリザがアランに詰め寄る。
しかし、アランは冷や汗ダラダラで視線を泳がせ、そして――非情な決断を下した。
「い、いや……そいつは、ただのセフレだ!」
「はぁぁぁぁ!!??」
メリザの絶叫が響いた。
「お前が『遊園地のチケット余ったから行こう』ってしつこいから、暇つぶしに来てやっただけだろ! 俺の本命はミカだけだよ!」
アランは必死にミカのご機嫌を取り始めた。
メリザは呆然と立ち尽くしている。
「ハイスペ彼氏」だと思っていた男は、ただの「ヤリモクのクズ」で、自分は「都合のいい女」だったのだ。
「ふざけんじゃないわよ! 私を誰だと思ってんの! サキュバスのメリザよ!?」
「知らねーよそんな痛い設定! コスプレ女が!」
修羅場だ。完全に修羅場だ。
周囲の客たちが遠巻きにヒソヒソと噂している。
私は、隣のケンジさんを見上げた。
彼はその惨状を見て、軽蔑するでもなく、ただ哀れむように静かに言った。
「……行こう、リリさん」
「えっ?」
「ここは僕たちがいるべき場所じゃない。……愛のない関係がどうなるか、よく分かったよ」
ケンジさんは私の手を引き、背を向けた。
その背中は、どんなブランド服を着たモデルよりも、大きく、頼もしく見えた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよリリム! 勝ち逃げすんじゃないわよぉぉぉ!!」
背後で、本命彼女にバッグで殴打されるアランと、髪を振り乱して叫ぶメリザの声が遠ざかっていく。
ダブルデートは、メリザの自滅によって幕を閉じた。
私はケンジさんの手を握り返し、心の中でガッツポーズをした。
(見たかメリザ! これが私の選んだ『本物』よ!)
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